閑話 M4K1ハウィック バカンス
お米や小麦粉やそば粉など穀物類とお茶葉やコーヒー豆などが出来上がったため、俺はいろいろと役に立つ麻袋をいくつも取り出して聖獣に差し出すと、ふわふわと浮かび上がり、ひとりでに口が開きました。
そして収穫物がきれいに分けられて麻袋の中に吸い込まれていき、満杯になったものはツルが伸び、ひとりでに麻袋が閉じられた。
たくさん渡したはずの麻袋がすべてなくなった時に丁度全部収穫物も収納が終わりました。
『ほら。これお礼だ。なくなったらまたここに来るといい精霊獣たちの成長を見られて我等もうれしいからな』
と言って笑う?姿は田舎のお爺さんみたいです。
歌君はそれを受け取りしばらく何かを考えたような表情をして俺のほうを向いていろいろ聞いてきました。
「勇さん。今から行く場所には竈とかオーブンってありますか?」
「えっと多分あると思うよ。それに後はバーベキューセットにケバブを作る装置とか、ナンを焼く釜とかなんかそんな変なものがたくさんある島だよ。確か聞いた話だとその島にいた転移者が全員何処か専門の料理人とか職人とかが多かったとか聞いたよ」
「何そのテーマパーク!楽しみ!♪」
「じゃあ二人も待ってるだろうしそろそろ行こうか」
「おう!わかった」
といって軽く挨拶をしてから俺たちは一度本社に戻り、月姫ちゃんたちが移動した扉に向かい、入る。
先に登録していたから俺たちはすんなりと入れましたが、普通はそんなに入ることはできません。
〈M4K1ハウィック〉
ここハウィックは世界中が地球のリゾートみたいな世界で、魔物は武器や、防具のような素材には向いていないですが食材に適しています。ということでこの世界はリゾートとしてぴったりな世界です。しかもここの世界の時間は地球とほとんど一緒です。
「お待たせしましたーすみませんね」
といって俺たちが入っていくと既に伊澄先輩と月姫ちゃんがすでに水着に着替えて遊んでいました。
「遅かったですね。どうしたんですか?」
「えっとですね。精霊たちに歌君を紹介していたんですよ」
「あ、そうなんですか。そういえば歌海さん?でしたっけ確かあなたって動物を飼っているんでしたっけ?」
「ああ、そうでした。精霊獣たちも一緒に遊ばせたいんで出しますね」
といって歌君はバングルを外し、魔力を流して置くと、そこからどんどん精霊獣たちが出てきました。
一緒に来ていたカスミは歌君から出て来た精霊獣たちを見て興味津々で見ていました。どうやら遊びたいように大興奮で飛び出しそうになっていました。もはや犬です。
「あら?可愛いですわね。歌海綺星さんでしたっけ?撫でてもいいかしら?」
「はい!どうぞ!」
というなり伊澄先輩はおずおずと精霊獣たちににじり寄ってきました。
精霊獣たちは一瞬伊澄さんを見て後ずさりしましたが、その後、悪い人じゃないと思ったのか、首をかしげていました。
「あぁーーはぅーーーモフモフ、フフフっフフフ。モフモフ天国だぁ」
こんな先輩は見たくなかった。破顔してますやん。いや確かにこの子たちはモフモフだけどさぁ。
出遅れた月姫ちゃんは、先輩を見て羨ましそうにしていた。いいなぁいいなぁとでも言いたそうです。
俺はそんな三人を尻目に島の中にあるコテージの中に入って空き部屋に移動してから自分の荷物を置く。
再び一回に戻って海岸を見ると、今度はカスミと月姫ちゃんも加わっていた。
伊澄先輩はさっきと変わらず破顔していますが、むしろさっきより酷くなってないか?それであとから参加したであろう月姫ちゃんは悔しそうな表情が少し見れますが、精霊獣たちの毛並みにはあらがえないでいる。
一通り分析を終えた俺は近くのパラソルに座っている歌君に近寄って状況を聞くと、
「えっと伊澄さん?の幸せそうな表情を見て我慢できなくなった藤井さんが、精霊獣の塊に飛び込んで、幸せそうな表情をしていた月姫さんに嫉妬したカスミ?だっけあの大きな狐が飛び込んだっていう状況かな?」
なるほどそういう事か俺の想像したとおりかな。
「ところであれってどう収拾付ける?」
「んー放置で!よし!勇さん!探検しよう」
といってから歌君は立ち上がり、コテージの中に走って入っていき、すぐに着替えて出てきました。
「じゃあ行こうか!」
といって俺たちはぐるっと島を一周して探索を開始する。
さっきまで俺たちがいた場所は遠浅で、裏に続くにつれてどんどんと沖が近くなっていったこの島の形は卵型というやつだ。中心にはちょっとした小高い丘に森があった。
森の中は適度に日光が入っていて涼しく、特にめぼしい生物は全くいませんでした。どうやらこの島は森の中だけど魔物が全くでないようになっているらしい。
森の中を見回ってからまたさっきの海岸に戻るとまだ精霊獣の塊がいた。そして伊澄先輩と月姫ちゃんはもはや誰かわからないくらいに顔が崩れていた。
「すげえな。でもそろそろ解放させないとかわいそうじゃないか?精霊獣たち」
「うん。そうだなじゃあ久しぶりにあれでもしようかな」
というなり歌君は着々と準備を始めた。歌君が出した荷物はさっき貰ったばかりのリンゴだった。
「どうするの?それ」
「この人たちに効果があるかわからないけど、焼きリンゴでも作るつもり」
といっていたから、俺はすぐに焚火の準備を始める。
近くの薪を拾ってきて薪を組んで、薪の一つに火をつけて焚火の準備を終える。歌君のほうはリンゴを取り出し芯をくり抜いてバターを取り出す。あれ?そのバターってどこかで見たことがあるような。
「あれ?歌君そのバターって地球産じゃないよね?どうしたの」
「ああ、歓迎会でいたおばちゃんに貰った。製菓に一番向いているバターらしい滅茶苦茶いっぱい貰ったからまだまだあるよ」
といって歌君は再びバターをくり抜いたところに入れ、アルミホイルで包んでから焚火の中に入れて、じっと見つめる。
他に歌君は次々にサツマイモや、マシュマロを焼きだした。初めて見たかも焼きマシュマロ。
歌君は一通り準備を終えてから、おもむろにうちわを取り出した。うちわには香と書かれていた。歌君は焚火を挟んで向かいに精霊獣の塊。どうするかはもうお分かりです。
歌君は思いっきり団扇を扇ぎ始めた。煙は一切揺れていなかった。どうやらその団扇は香りだけを流す特殊な団扇だと思う。
香りが精霊獣に届いたのか、精霊獣たちは一斉に顔をこっちに向けてフラフラと近づいてきた。
伊澄先輩と月姫ちゃんはあ、あ、あと名残惜しそうに手を伸ばして残念そうに名残惜しそうにしていました。
項垂れている二人は俺の視線にすぐに気が付いたらしくわざと咳をして、すくっと立ち上がった。
俺は初めて二人の水着姿を見ることができ、きれいだと思って見とれていたところ、伊澄先輩が自身の体を隠すように腕を伸ばし、
「聖勇者さん。恥ずかしいので見ないでください。これ以上見るならぶっ飛ばします」
「す、すみません!お二人があまりにも魅力的だったので」
ジト目でこっちを見つめる二人、そんな空気に気づかないで、精霊獣たちと戯れる歌君。なんだか温度差があるな。と思っていたらその静寂を歌君が破ってくれた。
「お二人さんリンゴが焼き上がりましたよ。あとその姿はちょっと目に毒なのでこれをどうぞ」
といって歌君は無地のパーカーを取り出して二人に渡す。わぁイケメン。
二人は顔を見合わせてパーカーを受け取って焼きリンゴを食べ始めて目を見開く。俺もその様子を見て焼きリンゴにフォークを入れて食べる。めっちゃ甘い!
「これは、、、」「とっても」「「甘い!おいしいです!」」
といってバッと顔を上げて歌君のほうを見ると、歌君は本当に感動したような顔で今にも泣きそうな顔になっていた。
そんな顔をしていたので、事情を知っている俺はともかくとして、二人特に伊澄先輩が物凄い慌てていた。
「え?え?どうしたんでしょうか?歌海君?!わたくしたち何か致しましたか?」
「いえ、、違います(´Д⊂グスン。俺今まで女の人に普通にお菓子を食べてもらったことがないので(´Д⊂グスン」
「( ,,`・ω・´)ンンン?どういうことかしら?」
と聞き返すと歌君は感動で喋れなくなっていたようなので、
「代わりに俺が説明しますよ。実は歌君のお菓子って普通の人だと匂いだけでわらわらと寄ってきて、お菓子を食べるともっともっとと群がられるんでこんな風に女性に楽しんで食べて貰えることがうれしいんですって」
「んーあ!もしかして歌海綺星って、あの人ですか?」
と突然月姫ちゃんが大きな声を上げた。
「知ってるんですか?」
「ええ、多分彼って〇〇高校の生徒ですよね。〇〇区の」
「(´Д⊂グスンはい。そうですよ」
「だとしたら、もしかしてハーメルンの菓子焼き男?」
「何それだっさww」
「それ俺も思ってるんでいわないでくださいよ~勇さん」
「まあまあ大丈夫ですよ。私なんて食毒の錬金術師とか言われていますから」
「かっこいいじゃないですかぁ~俺なんて菓子焼き男ですよ菓子焼き男~」
「まあまあ、それでどうして彼はそういうあだ名で呼ばれているのかしら?」
「確か私もうわさ程度でしか知りませんが、彼がお菓子を焼いたり自分で焼いたお菓子を持っていると町中の女性が彼の周囲に集まり、列をなすとか?そんな眉唾な噂というか都市伝説があるんです」
「それ本当ですよ。そんなことが数回あって苦情がすごかったから俺の家には俺専用の地下キッチンができたんだよ」
といって自嘲気味に笑っていた。
俺たちはそれに対しなにもフォローできなかった。精霊獣たちは主の消沈を感じ取ったのか焼き芋を食べている口を止めてすぐさま近寄ってきて慰め始めた。しばらくそのままにしておこう。
実は僕、焼きリンゴあんまり好きじゃない。何でかタルトとかは普通に食べられますけどねなんででしょう




