ボアも不浄だって!
今日も今日とて街のメインストリートに屋台を出す。お客様は男の人とオーク。
「テイムモンスターだ」
「関係ない客は客」
「テイムモンスターはお断りって店もあるんで言ってるんだよ」
黙って頷く。テイムモンスターお断り・・・まぁ、有り得ない話ではない。
「注文は?」
「芋天うどんという奴を2杯」
「あいよ」
うどんを湯がき紅芋天を乗せて出す。
「旨い!噂通りだ」
うどんなのか芋天なのかはたまた両方なのか?男は感嘆の声を上げる。
そしてそれはオークも同じだ。
ふがふがと美味しそうに食べている。
で、このオークには森の紅芋のありかを知られるかもしれない。
まぁ、いいか・・・
「しかし、住みにくくなったよ」
男はぼやく。何事?
「オークは不浄な生物だって」
あぁ宗教上の教えで神聖だったり不浄だったりする奴ね。しかし連れているオークは不浄と罵られるような身なりではない。
「言ってる奴らがおかしいんでしょう」
「だよな。いや、気が晴れたよ」
男は料金を払ってオークと共に去っていった。
「オークが不浄ね・・・」
なぜか髭面の男が脳裏に浮かんだ。
「ボア肉は不浄です!」
なんかボア肉の角煮に文句を付ける輩が現れた。思った通り髭面の男だ。
「お前が食べなきゃいいだろ?」
「なにを言ってる!お前のために言ってる!」
髭面の男が叫ぶ。
「はあ?私のためだ?食べ物売ってなにが悪い!」
「お、女が男に向かってなんて口の聞き方を!」
お?この喧嘩買ってやるよ!髭面の男の足もとに空気の塊をおく。
ガン
髭面の男は空気の塊にけつまづく。
「どうした」
髭面の男の後頭部に空気の塊を降らす。
「ぐぺ!」
ひしゃげた蛙のような悲鳴があがる。
「どうした?いきなり」
私は腕を組んだまま嗤う。空気系の魔法は不可視なのが利点だ。
「なにをきさま!」
「勝手に蹴躓いて蛙のように這いつくばった状態で凄まれてもね?」
相手が自爆したように見せる。これ大事。
「おとといきやがれ!」
倒れた髭面の男を蹴飛ばす。
うぉ~って歓声があがった。
「お、覚えてろ!」
陳腐な捨て台詞を残して髭面の男は去っていった。
多分お礼参りあるだろうな・・・
まぁ、商業ギルドに報告はしておこう。営業妨害を受けました!ってね。
数日後、冒険者みたいな人が警護についたよ。まぁ、本格的なものではなく気にしておくという程度だろうけど、心強い。
多分、相手は狂信者だ。地球でも狂信者は己の信仰に絶対の信頼を寄せ他者にそれを強いて支配したがる。実に厄介だ。
「さて・・・狩りにいくか」
ウルフの氷華が足にじゃれつく。体高がもうすぐ腰の高さになる。まだ1ヶ月経っていないのに、体がすくすく育っている。恐らくレベルアップと同時に体も大きくなる。間違いない。
「大きくなったね?」
「わふ」
氷華が尻尾を振る。
ゆっくりと森に入る。うん。誰かがつけてるね。
今のところ、敵か味方か判断出来ないけど。
少し奥に進む。
「鑑定。敵対者」
ぼそりと呟く。
【モハメッド・アント】
【アーラブ人。34歳。強姦(隠蔽)。殺人(隠蔽)】
隠蔽?何だその便利そうな能力?いや、アイテムか?
「氷華・・・背後から襲って・・・任せた」
「オン」
氷華が藪の中を進む。最近【陰形術】なるスキルを覚えて迷彩柄のマントを被らなくても藪に隠れられるようになったのだ。
「ふふん」
草むらにしゃがみこんで草を採集するふりをする。
「わふ!」
「ギャッ!」
後方から声があがる。
かかった!
慌てて振り返る。
カーキ色の服にターバン。髭面。手にククリナイフ。店で難癖をつけた男だ。
「これぞ襲撃者って感じよね?」
「くそっ」
「犯罪歴があるのに水晶に反応しないの・・・興味あるな」
そう言うとぎょっとした顔をする。
「私、そこまで見えるんだ」
がしっと、持っているククリナイフを蹴っ飛ばす。
「た、助けて」
「殺人鬼が面白いこと言う・・・」
髭面の男の顔色が変わる。殺人鬼というのを言い当てたからだろう。
「ま、死んどけ・・・エアカッター」
手から空気の刃を放ち首を落とす。
「何を剥ぎ取ったら隠蔽が消えるかな?」
うん。腕輪だ。
【隠蔽の腕輪】
【全ての罪は隠蔽される。】
まんまなアイテム来た!
これも合わせて提出だな。
「【ピット】」
髭面の男の地面まわりが落ち込む。
「【ファイア】」
髭面の男の体を青白い炎が包む。こんがり焼けました!
「【ストーン・ウォール】」
髭面の男の体の上を石で覆う。
「さて・・・」
髭面の男の首を布で包みその場を立ち去る。
「森で殺人の前科者に襲われた。返り討ちにしたがどうすればいい?」
門兵に伝える。
「あと、こいつが持っていた腕輪。装備すると犯罪歴が隠蔽出来るらしい」
そう報告すると一騒動あった。まぁ、水晶の判定をくぐり抜ける道具は普通に厄介だ。




