第67話 カイエンギルド長アハと出会う
「アハ?…と言うとアハ・イシュケーンの事か?会う?とはどう言う事だ?」
「え!?ご存知ありませんか!?てっきりその件で来城されたと思ったのですが?」
何を言っているのだ、こ奴は?会う?
伝説の剣豪で500年前に死んだ英雄に?
もしかしてやっぱり昼間から酔ってるのか?
王宮の衛兵ともあろう者が?
「そう言えばカイエン様、馬で走っている途中にやたら街の住人が騒がしかったですな」
ゼルフィンが不思議そうにそう言った。
「そうじゃのう、いつもより楽しそうと言うかこんなに明るくなってる王都の住民を見るのは祭り以来な気がしますな」
マーリンもうなずく。
確かにいつもより騒がしかった様な気もするが一体何事だ?
「何だ?衛兵よアハ様の誕生日でも分かる文献でも見つかったとでも言うのか?それで今日が誕生祭になった…とか言う事か?」
俺は衛兵にそう尋ねた。
「いえアハ様が復活し只今国王様自ら歓迎会を開かれておられる所ですよ!本日は、その2日目です!明日には街の住人にお披露目があるとの事で我らも一目見たいとワクワクしておるのですよ!!」
「…はあ?アハ様が復活された…だと?お前本格的に酔っ払ってるんじゃないのだろうな?」
「そんな訳ありませんよ!我らは厳しい試験を受けて配置された王宮の衛兵ですよ?まあ信じられないのも無理はありません。我らも国王様からの通達が無ければ信じられなかったのも事実ですから!では直にお会いされれば納得されるでしょう!おい!カイエン様達を歓待の間にご案内しろ!!」
「そ、それはもしかして我らもアハ様を見られると言う事っすね!お、俺が案内します!!」
「いや俺が行くぞ!!」
「馬鹿な!ここは年功序列だろ!!わしが行くぞ!!」
「ず、ずるいですよ!兵長!我らだってアハ様が見たいんですよ!!」
と、誰が俺達を歓待の間まで案内するかで衛兵達が揉めだした。
何か大きな祝い事があれば確かにあの大部屋で宴を開くのが王城の習わしでもある。
それに冷静で無ければ、なれないはずの王宮の衛兵でこの始末だ。
アハ・イシュケーンが復活しただと?
しかし、これは何の冗談だ?
「良い城は俺にとって庭みたいな物だ。案内などいらん行くぞ皆よ」
俺が案内を断ると衛兵全員が明らかに気落ちした表情を見せる。
「はあ…分かった、それじゃ誰か一人案内をしてくれ。それで良いんだろう?」
「は、はい!では、私、エンセ兵長がカイエン様御一行を歓待の間まで、ご案内いたしますぞ!」
残された衛兵からのブーイングを無視して兵長が俺達の前を歩き出した。
「ど、どう言う事ですかな?ア、アハ・イシュケーンが復活などと…もしや集団で幻術にでも、かけられたんじゃないんですか?」
セリュードが疑心暗鬼に、そう俺に聞いて来た。
が、それにはマーリンが答えた。
「いんにゃ、そんな大規模な範囲で幻術の魔法がこの王城で発動しておれば、すぐに我ら魔法師団の貼っている結界に反応がある。反応が無いとこ見ると、それはあり得んのう。しかしアハ・イシュケーンが復活など一体何があったんじゃ?兵長?」
俺達は歓待の間まで歩きながら兵長に疑問をぶつけた。
「そうだ、どうして急にアハ・イシュケーンが王城に来たのだ?そんな都合の良い話があると言うのか?」
ゼルフィンも信じられないと言う解釈だ。
「全くだ。偽物が金欲しさに、たかりに来たのではあるまいか?」
エニグマも信じてない様だ。
「私は残念ながら昨日は他の場所の配置でしたのでアハ様のお姿を拝見しておりませぬが、お連れしたのはカイル王子と近衛騎士団です。信頼して大丈夫かと。何でも宝剣インフィニティを奪還した時に悪のネクロマンサーに操られカイル王子と戦わされたと言う話ですぞ?そして術者を倒しアハ様も復活されたと言うお話です!さすがは王子です!!いや誇りある我が騎士団も素晴らしい功績ですよ!インフィニティ奪還だけで無く伝説の剣豪アハ様まで、お連れ出来たのです!!こんな嬉しい事案がありましょうか!!」
顔を上気させ兵長は歩きながら熱く語った。
「何!?カイルがアハ・イシュケーンを救ったと言うのか!?」
俺は兵長に詰め寄った。
「い、いえ詳しくは、まだ発表が公式にされておりませんので分かりませんが当日、当番だった者に聞いた話ですと、その様な感じかと思われます」
宝剣インフィニティは確かに守護する強力な戦士が居ると伝承に記載されている。
そして、その強さにことごとくあまたの強者が倒されたと言う。
ネクロマンサーに魂を操られアハ様が戦わされていたと言うなら誰も勝てるはずは無くそれもうなずけるがアハ様をカイルが倒しただと?
あり得ん確かにカイルは強いが、まだ俺にも勝てぬ実力だ。
勿論、俺のパーティメンバーに比べても少し腕は落ちるだろう。
そのカイルが倒せたなど、それはアハ様である訳が無い。
アハ・イシュケーンは、このデュラリオン王国の歴代の戦士の中で最強のはずだ。
少なくても伝承が正しければ俺よりも強いはずだ。
「カイル王子は、お強いが王子に負けたとなると…それは別人である可能性が高いのではないですか?」
ゼルフィンが俺と同じ意見の様だ。
「そうじゃのう仮にネクロマンサーに操られていたとはいえアハ・イシュケーンは肉体が無いはずじゃ。あったとしても、その肉体は朽ち果て死霊のたぐいだったはず、それを元に戻せる様な僧侶は、この国にはおらん。あの天才児エリスでも無理な話じゃ。そんな事が出来るのは魔導王国の高司祭かハイエルフ位な物じゃて。つまり眉唾すぎるのぉ。別人の可能性が高いの。残念ながら」
マーリンが長い髭をいじりながら、そう述べた。
マーリンの言う事も最もだ。
アンデッドの状態から蘇生出来る司祭など聞いた事が無い。
それこそ伝説のハイエルフぐらいしか出来ぬ奇跡であるが…
「待てよ確か炎壊のパーティにエルフのシルファとか言う奴が居たはずだが…もしやそ奴が蘇生したのではないのか?」
「あ!そう言えば居ましたね!気になって居たんですよ、あの炎壊のパーティメンバーになる程のエルフです。も…もしかしてシルファって人ハイエルフ何じゃありませんか!?」
トゥーリィが興奮してそう言った。
「馬鹿な!わし、120年生きてるけどエルフにだって10人位しか会った事など無いぞ!?ましてやハイエルフなど伝説では、すでに滅んだ種族のはずじゃ!おったとしても、おいそれと我らに協力する様な種族では無いじゃろ!?伝承によると彼らは気高く他種族を嫌っており特に人間族とは仲が悪いと聞いておる!そんな存在が何故アハ・イシュケーンを蘇生させるんじゃ!?」
マーリンが憤慨してそう言った。
「いや、マーリン炎壊はエルフだ。炎壊の命令ならば聞くのではないか?それがたとえ嫌っている人族の蘇生であろうともな」
エニグマがマーリンに、そう尋ねた。
「確かにリーダーの言う事なら聞くかも知れんな。まあアハ・イシュケーンと言っている者には今、会えるんだ。会うだけでも、その者の魔力で大体の実力は測れるはずだ。まあすぐに分かるだろ…良し着いたな案内ご苦労だったな兵長」
「いえ!では扉を開けて王の元へ、ご案内いたしますぞ!!」
普段は部屋の扉までしか案内しないのに余程アハ・イシュケーンに会いたいと見える。俺は呆れて
「ああ、では頼むよ」
と、言って案内を任せた。
「カイエン様ご到着です!皆様方道を、お開けして下されい!」
兵長が仰々しく、そう言って俺達の前を歩き出した。
「おお!カイエン!良く来た!!遠征ご苦労であったな!」
すると、この広い広間で一番人だかりのあった集団から聞き慣れた声が届く。
「王よ!今戻ったぞ!それより聞きたい事が…う!?」
すると王の隣に居る若者に目がいった俺はその膨大な魔力を感じ身構えてしまう。
俺達のパーティメンバー全員が国王よりもその隣に居る若者に注目していた。
「ほう?これは凄いな。カイル王子よりも、こ奴らは強いな。かなりの達人と見えるが?」
静かに、その若者は俺達を見ると、そう値踏みした。
「ア、アハ・イシュケーン!?」
それは、子供の頃から何度も読んだ剣豪アハ・イシュケーンに、瓜二つの男だった
次回は10月27日(火曜日)の更新です!(^^)




