第65話 驚愕の報告
「ギルド長、上級ギルド職員全員揃いましたので入ります。よろしいですか?」
リットの声がする。
カイエンは少々興奮気味の自分を抑えて
「ああ、入ってくれ」
と、優しく答えた。
「失礼します…英雄のパーティメンバー全員お揃いとは…これは壮観ですね」
「フ、久しいなリット。俺とは10年振りか?まぁエルフのお主からしたら昨日の様な物かな」
「フフ、そんな事ありませんよゼルフィン様」
「私とも久しいなリット。私が銀級に昇格した授与式以来だから5年ぶりだな。あ、リット、トューリィとは初めてじゃないのか?」
「あ、初めまして!王宮魔術師のトューリィです!若輩ではありますが今回の遠征に特別に選ばれて参加しております!よ、よろしくお願いしますリット様!お噂は、かねがね聞いておりますよ!」
「いえいえ、トューリィ様も、そのお年で数々の武勇伝を耳にしますよ。その様な英雄に名前を覚えて貰えていて光栄ですよ」
「そろそろ挨拶は、その程度にして本題に入ろう。リットさっそく悪魔王の依頼報告書を見せてくれんか?」
「はい、ギルドマスター。では、お渡しして」
「ちょ、ちょっと待って下さい!依頼達成書は部外秘の機密書類ですよ!?マスターはともかく、いくらマスターのパーティメンバーと言っても、お見せしてはならんのでは、ありませんか!?」
「フ、良いんだよ俺のパーティメンバーは皆、国の重要な役職を兼任している者ばかりだ。ギルドの重要書類ぐらい開示して閲覧出来る権利は持っておる。何かあれば俺が責任を取る。見せてやってくれんか?」
「は はぁ…マスターが、そうおっしゃいますなら了解です」
「ごめんなさいカイエン。この子は幹部になったばかりだから慣れてないのよ、ちゃんと教えてなかった私が悪かったわ」
「いや、良いよリット。ギルド職員として規律を守ろうとする姿勢は正しい。基本はギルドの機密事項は部外者に見せてはならん事になっておるのだからな、その態度は職員として合格だろ」
「分かったわ、あなたがそう言うなら良いけどね。スミカも、もう少し頭を柔らかくしないとね」
リットにそう言われてスミカと言う職員は自分の失敗にバツが悪そうな表情をして
「も、申し訳ございません副マスター…」
と、謝った。
「では、依頼書を見せてもらおうか」
カイエンは、そう言って悪魔王討伐記録を詳しく閲覧する。
「な、何だと!?デュランダル!?こ、こ奴が本来は悪魔王を倒したと言うのか!?そ、それにシグレアキラと言う奴は、この短期間にリッチの討伐、宝剣インフィニティの探索に助力!?じゅ…14才の人間族の少年がか!?ウリシュクのサポートがあったとしても、こいつは大した使い手じゃないか!しかしシルファと言うエルフ族と人間種の18才のまだ青年とも呼べぬ若者が主に悪魔王と戦って肉体を滅ぼしただと!?後は、このミリスと言う…14才かよ!?エルフ以外は若すぎるだろ!?ミリスは武道家か、ん?ゴーレムの研究家?14才で、その様な肩書があるのか?妙だな」
「いえいえ、ギルドマスターよミリスちゃんはウリシュク殿がGETした巨石のゴーレムについて詳しかったですぞ!あの知識量は中々の研究者と見て間違い無いですよ!」
ガイルが親しみを込めてカイエンに答えた。
「そうね20m位あるゴーレムも凄かったけどミリスちゃんの知識は本物ね。黄泉の沼地にあった、あの巨石やっぱりゴーレムだったみたいよ。蘇生させて倒して下僕にウリシュクがしちゃったのも驚いたけどね」
「な、何!?それは黄泉の沼地の目印となっとったあの大岩かよ!?かすかな魔力を感じてはいたが、あれはとっくに死に絶えたと思っておったのに、ど、どうやって復活したんじゃ!?し、しかも倒して従属させたのか!?」
マーリンが興奮してリットに尋ねた。
「ええ、マーリン、そうウリシュクから聞いているわよ?本当に大きくて全身ミスリル製で強そうだったわね。あれなら巨人族とも渡り合えるかも知れないわね」
「な、なんと!?あれは石のゴーレムでは無いんかい!?どう見ても良くて岩の塊にしか見えんかったぞ!?」
「ミリスちゃんの話だと動作出来ない状態だったからミスリルの盗難を恐れて岩に偽装してたんですって。本当凄かったわよ、あのミスリルだけで城が買える程の価値があるものね」
「い、いや、待て!初耳だぞ!?あの黄泉の沼地のゴーレムを復活させて、しかも従属させただと!?あの岩は20mは立てばあるだろう!?そんな存在を人が倒せる訳があるまい!?」
「いえ、事実よカイエン。実際ゴーレムは調べられたし実物を見てるしね。念の為元々居た黄泉の沼地を調べさせたら、やっぱり大岩が無くなっていたって報告されてるし間違い無いわよ?まぁこの件も、あなたが居なかった、ここ一週間の出来事だったからカイエンが知らないのも当然だけどね」
「ど、どれだけ偉業を達成すれば気が済むんじゃ!あの娘っ子は!!それじゃ何か?ウリシュクは悪魔王を倒す実力を持ち更に悪魔王にトドメを刺せる程のパーティメンバーやリッチを倒せる戦士に更に20m級のミ、ミスリルゴーレムを従属させたと言うんかいっ!?」
「は…はは、それが真実なら炎壊一人で国を落とせる戦力を持っておると言う事に、なりますな…フフ…これは是が非でも我らに加わってもらわねば、なりませんな!!」
いつも冷静なゼルフィンが珍しく興奮していた。
「まさしくな。俺は悪魔王にトドメを刺したと言う戦士に興味がある。ぜひ手合わせを願いたい物だ」
エニグマもオーガの戦士としての血が騒ぐのか、かなり興奮していた。
「話は大体分かったよリット。炎壊は、ここ数十年俺の知っている範囲では誰ともパーティを組みたがらない変わり者ではあったが、どうやら強者と認めないと組まぬポリシーの様だな。どこで見つけて来たのか知らんが4年前は、やはりソロで悪魔王を討つと言っていた。そこから4年で、このシグレアキラ、シルファ・ルビィシオン、デュランダル・ディスティニー、ミリス・バイオレット…か、恐らく悪魔王を討つ為この4人を集めたのであろうな。実際会って見なければ、その者の強さは感じられぬが、これだけの偉業をたったの5人のパーティで成し遂げたのだ。実力者なのは疑い様が無いな。お前達は、どう思う?」
そう言うと、カイエンはパーティメンバー、一人一人に感想を聞く。
「そうじゃな、カイエン様の言う通り普通は、これ程の偉業、疑うのが普通じゃろうて。だがインフィニティは、まだ報告を受けておらぬから分からんが炎壊が嘘を言うとは思えんしな。大体ギルドへの報告で金級ともあろう者が嘘の報告などしたら信用問題に発達するわい下手したら金級の称号も剥奪されかねん。そんなリスクがあるのにウリシュクが嘘を報告するはずが無いのでな。わしは4年前より炎壊は更に力をつけている事は間違い無いと思いますぞ?この戦士、デュランダルに魔法戦士と言うシルファ、そしてリッチを討伐したと言うシグレアキラは、もしかしてわしらより強いんじゃないかと思いますぞ?」
マーリンが、そう言うとギルド長室に居る全員が、ざわつき始めた。
「ば、馬鹿な!?この様な、まだ20才にも満たない少年少女の集団が王国最強と言われる我らのパーティを超えていると言うのか!?マーリン殿!!」
そう言ってセリュードは憤慨した。
「いや、セリュードよ仮に我らが全員で、あの悪魔王に挑んで勝てると思うか?」
エニグマが冷たく、そう言った。
「クク…た、確かに奴の使う魔法は人外の魔法だ。どの魔法も当たれば我らとて即死するレベルだ。一体それをどうやって炎壊達は、あの黒死魔法を防いだのか…分かるか?マーリンに、トゥーリィ?」
セリュードが王国一の魔法使いと、その天才と呼ばれる弟子に問い正す。
「い…いえ悪魔王の使う黒死魔法は我々の解除魔法では、とても太刀打ち出来ませんどうやって、あの神がかった魔法に対抗出来たのか…師ならば分かりますか?」
トゥーリィがマーリンに助力を願った。
「いんや、ありゃ無理じゃ。一度だけカイエン様と一緒に奴と対峙したが、あれは話にならん。詠唱が高速で気がついたら恐らく黒き炎で蒸発しておるだろうて。立ち退いてくれる様に交渉に行った時でさえ生きた心地がせんかったわい、のおカイエン様」
「ああ、マーリンの言う通りだ。対峙したので分かる。あれは天災と同じで人が手を出せる存在では無かった。ウリシュクでも9割がた負けると見積もっていたんだがな。フフ…やはりウリシュクの仲間全員に会わねばならぬな。もしかしたらウリシュクのパーティならば守護者と渡り合えるかも知れぬ…」
「な!?ば、馬鹿な!1パーティーごときで守護者と渡り合えるはずが、ありませんよ!?」
「フ、我ら6人も1パーティーで何とか凌いだではないか?」
「い、いえ!我らと並び称される様な者が、そう簡単に見つかる訳が、あ、ありませんよ!!カイエン様!4年で、その様なメンバーを揃えられるなら、なぜ今まで炎壊は集めなかったのです!!」
「それは本人に聞かんと分からん事だな。何にしても守護者に対抗しえる強者の可能性があるだけでも、ここ数十年来の好機だ。絶対に今、ウリシュクを見つけ同行してもらわねばならん、そう言う事だリットそれでウリシュクは今どこに居るんだ?」
「あ、うん王都に何か用事が出来たから向かうって言ってたわよ?午前中に出発したらしいから王都を目指せば早馬なら、うまくすれば追いつけるんじゃない?追いつけなくても王宮に用事がある様な事を言ってたから王宮に寄れば会えると思うわよ?」
「良し!では早馬を6騎、調達してくれ!30分後にはウリシュク達を追うぞ!急げリット!!」
「あ、うん分かったよギルドの早馬が丁度6騎は動けるはずよ、すぐ出れると思うわ」
「良し!皆聞いての通りだ炎壊のパーティメンバーに会いたい奴はすぐ準備をしてくれ30分後には街を出るぞ!!」
「まったく新しいおもちゃを貰える子供の様ですぞ?カイエン様目がワクワクで輝いておりますぞ?」
「フフ…これがワクワクしないで、なんとするよマーリン。数十年待った強者が、ようやく見つかりそうなんだぞ?喜ばずに居られる方がおかしいだろ?」
「フフ…その通りですぞマーリン殿このゼルフィンも歳がいなく胸をときめかせておりますからな!勿論私も同行しますぞ!カイエン様!!」
「そうだなアマランにせっかく戻ったと言うのに家のパーティメンバーにも挨拶に行ってる暇は無さそうだな。信じられぬが私も真偽を確かめたい。私も行きますよカイエン様」
セリュードがさっそく遠出の準備をしだした。
「フ、俺もカイエン様程では無いだろうが、それに匹敵するかも知れぬ強者と会えるのならば迷う事無く連いて行きますよカイエン様」
そう言ってエニグマも大きな身体を動かして遠出の準備にかかった。
「マーリン師匠が行くのに弟子の私が行かない訳には行きませんよね!馬は慣れてませんが乗れなくは無いですから連いて行きます!それにカイエン様!私は炎壊に会った事が無いのでマーリン師匠が模擬戦で初めて負けたと言う炎壊に会ってみたいです!出来れば魔法使い通し魔法談義を交わせたら嬉しいですし!!」
「ええい!トゥーリィ!あれはちょっと油断しただけだって言うとるやろ!!わしだって10回やれば1回は…その…か、勝てるはずじゃぞ!!」
「え…10回に1回って…それって歯が立たないって言ってますよ師匠…」
「う、うるさいわい!ウリシュクが天才すぎるんじゃ!エルフだし!わし只の人間だし!あの娘っ子が、おかしいんだっての!!」
「はいはい、分かりましたよ師匠。それで早馬なんかに乗れるんですか?」
「馬鹿にするな!わし、これでも120才なんじゃぞ!馬ぐらい若い頃から乗れてるっつーの!!」
「良し、なら全員で、炎壊を追うぞ彼女らは国の希望だ絶対に合流するぞ!!」
「はい!!」
カイエンのパーティメンバー全員が大きな声で返事をした。
この様な明るい顔をした英雄達をリットは、ここ数年で初めて見た気がした。
もしかしてウリシュク達って、とんでも無い事をしているのかも知れないと事の重要さに気づいてきたリットは、その渦中にいる友人の事が色々な意味で心配になって来たのだった
次回は10月20日(土曜日)の更新です!(^^)




