第62話 国王とアハ・イシュケーン
「…しかし王よ金級は3人共あてには出来ないと聞いております。私だって…可愛い弟を殺されたくなど、ありませんよ!…しかし冷静に考えて人員がおらぬのです…他国に嘆願書は何度も出していますが検討する、の一言がここ数年の回答です。次回の遠征までには、ご決断をせざる負えないと愚申します」
「クク…他国の連中め…この仕打ちは必ず報いを与えて見せるぞ!」
ケイン王子はため息をつきながら思った。
父は初代デュラリオン国王ヨルグ王に並ぶ賢王と呼ばれ、その手腕は他国に知れ渡る程で政治も国民に差別無く行ない賢王の再来と他国の民にまで褒め称得られる存在で自分にとっても目標であり尊敬してやまないお方だ。
しかし家族の事となると、こうして盲目と言える程甘くなってしまう。
それだけ家族に対しての愛が深いと言う事であるのは分かってはいる。
普通の父親ならば、それで良い。
だが父上は国王なのだ。
時には国益の為には非情にならなければならない時もあるのだ。
自分も弟は可愛い。
武の腕が無い自分でも卑下する事もなく、むしろ勉学に秀でている自分を心から尊敬してくれている。
心優しく恐らく次の王になるのは弟なのだろうと思う。
それは自分も理解はしている。
弟が王になった暁には足りない知識などをサポートして支援し支えていくのが自分の今の夢でもある。
しかし今は時間が無いのだ。
恐ろしい守護者達が国に侵攻して来るのを止めなければならないのだ。
そうしなければ大勢の国民の命が失われてしまう…カイルが参加するしか、この窮地を脱する方法が無いのだ…カイエン様のパーティ以外ではもはや金級の3人があてにならない今、カイルしかデュラリオン王国には強者が残って居ないのだ…
多分、王もそれは充分分かっている事だし決断せねばならないのも理解されていると思う。
しかしギリギリまででも金級が参加してくれるかも知れないと言うかすかな希望にすがりたいのだろう。
国王として、しかしそれは決断を迫られる時が近い内に来てしまう、それは分かっているのだろうが…
どうしたものかケインが思考を繰り返していた時、伝令兵が謁見室に入って来た。
「何事か!!今は会議中であるぞ!!貴様、会議中は部屋に進入禁止だと言う王宮のルールも知らんのか!!」
秘書官の一人が大声で伝令兵を怒鳴った。
「しょ、承知しております!しかし王子が、凱旋!!凱旋です!!国宝インフィニティを奪還!!入場されました!!」
「な、何だと!?」
いの一番に、王はそう言って玉座から立ち上がった。
俺達は馬車から降り26名全員の無事を門兵長に報告をした。
慌てて伝令兵が王城まで走り去って行った。
まあ気持ちは分かるが、あれでは転んでしまうだろ。
「なる程、ここがお前達の城か。この地方には王城など確かに存在して無かったな。フフ、ヨルグがこの城を建てたのか。全く俺と最後に別れた時は、まだまだ10才の子供で剣もおぼつかなかったと言うのにな、フフ、嬉しいものだな、その子孫が国を引き継いで立派に政治をやってると言うのはな」
「はい!建国から数回建て直しましたが初代ヨルグ王の時代から王城のデザインは変わっておりません!文献にそう書かれてありました!」
「ありがとうシスティリア王女よ、お前はまだ13才なのに博学だな」
そう言ってアハはシスティリアに笑いかけた。
「そ、その様な事は!だ、誰でも知っている事ですよ!大した事ありません!」
アハに見つめられたシスティリアは頬を赤く染めて恥じらいを見せていた。
まあ肖像画以上の美形で女性かと見間違える程だ無理もないなとカイル王子は思った。
「カイル!!無事か!!」
すると20数名の衛兵を引き連れて国王がバタバタと珍しく走って俺達に近寄って来た。
王が全速力で走る姿なんて久しぶりに見たなとカイル王子はニヤけてしまった。
「親父!今、帰ったぜ!!危なく死にかけたが、とんでもない奴と一緒だったんで無事に帰って来れたぞ!」
「バカ息子が!!王城では国王と呼べと言ったであろう!」
そう言うと王はカイル王子を強く抱きしめた。
目には薄っすらと涙が見える。
「良くぞ…良くぞ無事に帰った…俺はお前が誇らしいぞ」
そう言うと更に強く王はカイル王子を抱きしめた。
「まぁよ俺は運も良い方なんだよな。昔っから死にかけても何とかなっちまうもんだしな!しかし親父そろそろ離してくれよ、みんなが見てるし恥ずかしいだろ!俺はもう子供じゃねぇんだぜ!?」
そう言うと照れながらカイル王子は王を引き剥がした。
「馬鹿め、お主はまだまだ子供よ、こんなにも小さいではないか!だから無理などせずおとなしくしておれば良いのだぞ?子供は子供らしくしておれば良い。周りが何と言おうがな!」
「へへーん、いいのかよ親父俺を子供扱いしたままでよ?おいケンプ!持って来て親父に見せてやってくれないか?」
「はは!すでに、こちらに用意してありますぞ!!」
そう言っってケンプ隊長は大事そうに剣の入ったケースを開けた。
「おお!!」
王の衛兵達も驚き見入ってしまう。
「ま、まさに、これは文献で見た宝剣インフィニティ!!こ、この剣からあふれんばかりの魔力!!た、確かに間違いなさそうですぞ!!」
一人の剣に詳しそうな文官が、そう説明すると
「俺の愛剣が国宝などとヨルグが決めたらしいが、あいつめ粋な事をした物だな」
そう言ってアハは嬉しそうに静かに笑った.
「何?お主、ヨルグ様に対して不敬であろう…ん?何だ?お主の顔どこかで見た様な…」
「そりゃそうだろ親父、この方は俺達のご先祖様で、おとぎ話にもなってる、あの剣豪アハ・イシュケーン様ご本人だからな!」
「はあ?お前、何を馬鹿な事を言っておる。アハ様はとうの昔に、お亡くなりになっておる!この様な若い人間であるか!こ奴は、どう見ても20代前半か10代後半の年齢であろうが!お話に出て来るアハ様は30代後半の、お姿が主流であったろうが!!」
「いえ、色々とありましてアンデッドと、なっておられたアハ様を炎壊のパーティメンバー、シルファ殿が蘇生してくれたのですよ!!正直我々も驚いている所存ですぞ!!」
ケンプ隊長が興奮を隠さずに、そう発言した。
「な、何!?炎壊のパーティメンバーにアンデッドを、そ…蘇生出来る様な司教級の僧侶が、お、おるのか!?我が王宮にも、ここ数百年、その様な使い手はおらぬのだぞ!?」
「ああ、そうだ親父!メンバーの名前は覚えておらんだろうがシルファと言うエルフが、それだぞ!しかも、お袋の病気を観てくれると約束をシスティリアがしてくれたんだ!今はアマランのギルドに報告をしに行ってるが今日か明日には到着すると思うぞ!!」
「た、確かに、あの炎壊がパーティを組むなど珍しいと思っておったが、そ…その様な使い手を仲間にしたのか!さ…さすがは炎壊だ!金級の称号は伊達では無いな!!しかもルイーズの病を治してくれるかも知れんのか!?我が国の、いかなる僧侶でも、あの天才児のエリスでも、まったく治せないと言われた病をかよ!?し…信じられんぞ!?本当なのか!?」
「ああ、とんでも無いのはシルファだけでは無いぞ親父!俺が操られていたアハ様に殺される寸前までいった程、てんで相手にならない噂通りの強者で、いや、それ以上の達人であられた、このアハ様を打ち負かし更には竜族をも打ち倒した猛者シグレアキラが居るんだ!奴の強さなら恐らく門番の守護者とも互角に、いや、もしかしたら倒せると思う強さだったぞ!なにせ人から竜になった竜族もアハ様もまるで相手になって無かったからな!奴なら、いや、もう一人のミリスとか言う奴も半端ない強さだった奴の召喚したゴーレムは巨大で敵の召喚した2匹の竜と互角に渡り合っていたぞ!炎壊の魔法も、やはり凄まじく2匹と渡り合っていたよ家のテム以上のやはり炎壊は使い手だったぞ!炎壊のパーティが俺達の味方ならば、きっと大きな力になって数百年来の国の障害だった奴らも、きっと何とかしてくれると彼らと今回の旅に同行した俺は確信したぜ!」
「シ、シグレアキラか名前はギルドの依頼書を見て覚えてはいるが、ほ、本当に、その様な強者が…そしてアハ様…で、よろしいのですか!?確かに、その顔立ちは子供の頃から国の男子の憧れの肖像画のお顔!!ま、間違い無いのだな、ケンプ!?」
信じられない気持ちでいっぱいの王は、今回の探索隊の責任者、騎士隊長のケンプに確認取るのだった。
次回は10月10日(土曜日)に更新です!(^^)




