第51話 金龍エミリオとの激闘
シグレがアハと戦っている時ケンプ隊長達は後方の治癒士達を守りつつ火竜の攻撃から逃れて只俺達の戦いを見守っていた。
ある騎士がつぶやいた。
「こ、これは本当に現実の戦いなのか?」
「う…うむ…確かに、この事を報告しても信じてもらうのに、かなりの説明がいるかもな…そ、それだけ炎壊のパーティメンバーの戦いは、じょ…常軌を逸しておる…」
ケンプ隊長は、うなずく様にそう答えた。
国でもTOP級に入る剣の腕を持つカイル王子が時間稼ぎしか出来ずに倒れ今後方で治療を受けていて、その王子を倒したアンデッドが今王子と同い年と言っていたシグレアキラと言う少年に倒された。
しかも速すぎて目で追える戦闘ではなかったが凄まじい轟音と振動があって気がつくと地面は、めり込みそこに立ちつくすシグレアキラの姿があった。
「か…勝ったと言うのか!?カイル王子を圧倒していた、あのアンデッドに!?」
隊長はシグレアキラの異常な強さに改めて驚愕していた。
そして只の少女かと思っていたミリスと言う子供も、いきなりあの様な巨大なゴーレムを召喚し伝説のドラゴンと互角の戦闘を続けている。
あの巨大なドラゴンの爪や炎のブレスに耐え良い勝負を繰り広げている。
確かゴーレムの専門家で武道家と聞いていたがゴーレムに乗り込み操る事も出来るとは…
恐らくミリスと言う少女の奥の手なのだろう。
このゴーレムがあれば、一人で城壁すら、打ち崩せる程のパワーと巨体だ…
彼女が居なければ、我々は、ドラゴンのたった一撃の攻撃で全滅していたかも知れない。
それ程のパワーと力をあの2匹のドラゴンからは、感じられる。
そして炎壊だ。
火竜には冷気の攻撃が有効だと冷気の魔法を繰り出している。
自分は冷気系の魔法は苦手だからと妹のテムに助力を願い一緒にゴーレムを援護しているが初級のブリザードの呪文のはずなのに、それ以上の高度な冷気魔法を放っているテムより数倍威力があるブリザードの魔法を放っている。
実際テムは、あまり役に立っていないと感じる。
ドラゴンにはテムの冷気魔法が当たっても、あまり効いている感じは無かった。
しかし炎壊のブリザードが当たると明らかにドラゴンは苦しんでいる悲鳴に似た声を上げていた。
ゴーレムとの連携も、うまく炎壊の魔法が当たるとすぐにゴーレムが打撃をくわえ確実にダメージを与えている様に見えた。
我々も援護をしたい所だが、この戦いに巻き込まれたら恐らく即死に近いダメージを受けすぐ死んでしまうだろう。
近づかず見守るしかない状況だ。
国一番の戦力で、宝剣インフィニティ探索の任務を託され最強と言われた近衛騎士団がだ。
しかし相手はハイエルフと言っていたしアンデッドも王子を圧倒する程の強さだった。
それにあのエミリオとか言う少年も凄まじいスピードでシグレとの戦いで森が破壊されているのを見れば、その破壊力がも相当な物だったのだろう。
我らが手を借すレベルではなかった。
悔しいが見守るしか無いのが現状だった。
「う…く…こ、ここは?」
「あ!王子気が付かれましたか!!」
今回のメンバーで国一番と言われる治癒士のエリスが喜びの声を上げる。
さすがエリスだ。
重症だったカイル王子の傷も見た感じでは、ほとんど塞がっている様に見える。
「そ、そうだ、俺はアンデッド…いやアハ様に倒されてシグレと交代を…って!ど、どうなった!?シグレは大丈夫か!?」
「大丈夫ですよ王子、今決着がついた様ですアンデッドの身体は両断されシグレは無事の様です」
ケンプ隊長が王子に、そう告げると
「な、何と…フフさすがだ。ケンプこれは何としてもシグレを国にスカウトせねばなるまいな!」
「そ、そうですね、しかし冒険者は国に仕える事を拒む者も多いです。あの炎壊もしかり難しいかと思われますぞ?」
「フフ、馬鹿めシグレの戦力は国を揺るがす腕だぞ?奴が国に居るだけで諸国は我が国には手を出せぬはずだぞ、フフそれに奴とは馬が合うのだ。俺は親友としても奴を国に迎え生涯友としても共に生きていきたいと心底思っているのだ!」
確かにシグレアキラ程の強者が国に仕えたとなれば諸国もおいそれと攻めて来る事など出来ぬであろう。
それに炎壊と、あのゴーレム使いのミリスと言う少女が居れば我が国は百年は安泰ではないかと思われる程の逸材だ。
だがその炎壊には、すでに国に仕える事は断られている。
ましてや、このシグレアキラとミリスは炎壊のパーティメンバーだ。
炎壊共々引き抜きは難しいとケンプは感じていた。
「お、お兄様!何を勝手な事を!私は冒険者などを国に組み込むのは反対です!奴らは気品の欠片もない粗暴で邪悪な人種です!!」
「フッまぁ中には、その様な輩も多い。冒険者は血の気が多い荒くれ者の集まりの様な者共ばかりと言って良いからな。しかしシグレアキラは無下に魔物の命ですら奪おうとはせぬぞ?冒険者としては甘いのであろうが奴の心情は理解出来る。俺も魔物とは言え命まで奪うのは好きではないのでな。強さを競い合うのは好きだが殺しをしたい訳ではないのでな。普通は、そんな事言ってられないのだろうが強者には、それが許されるのだ。そしてシグレは、その最たる者よ。あれ程の猛者、叔父上以来、俺は出会った事などないぞ!」
「お、おじ様は特別です!五大英雄の、お一人ですよ!あの様な者と一緒にしないで下さい!!」
「…いや もしかしたら叔父上ですらシグレには負けるかも知れんぞ?」
「そ、そんな馬鹿な!!」
「グオオオー!!」
その時、森の奥から尋常で無い雄叫びが聞こえた。
それは、エミリオが吹っ飛ばされた場所だった。
その声の出どころを俺は注視し、そいつを見た。
それはミリスと戦っている竜よりも、一回り大きな金色の巨大な羽を持つドラゴンだった。
「もう許さないよ!龍族をここまでコケにしてくれた、お礼はタップリさせて貰うからね!この姿になったからにはお前なんかに勝ち目は無いんだからね!!」
あれ?何だろ、あの金の竜から少年の声が聞こえる…
確か、あいつ自分を龍族とか言ってたし中途半端な竜みたいな姿にもなってたし…
もしかしてドラゴンになれる種族か!?
うん、まぁそうじゃないかなって思ってはいたんだけどね!
「い、いかん!!エミリオ!協定を破るつもりか!?地上では、龍族は龍化は龍王の許可がないと、してはいけない事になっているだろう!?地上を滅ぼす気か!?」
マクドルとか言うエルフの兄ちゃんが金の竜に叫んでいる。
俺の技の余波を受けて吹っ飛ばされたのに大丈夫だったのは良かったけどピンピンしてるのは大したもんだね。
結構、勢い良く飛ばされてたのに、あんな細身の身体で以外とタフだね。
ああ、もしかしたら防御魔法とか使ってダメージを軽減したのかな?
まぁさっきも使ってたしそうだろうねきっと。
「協定なんか知るもんか!!人間種に、負けたなんて方が龍王様に怒られるだろ!!今は、こいつを滅ぼす事の方が、大事なんだよ!!」
「クソッ!この事はエルフ王にも報告するからな!!」
「勝手にしろよ!!」
そう言うと金の竜は俺の方に向き直った。
「残念だったね!お前は本当にに強かったよ人化してたとは言え僕を圧倒したのは褒めてあげるよ!でもねこの姿になったからにはもう手加減は出来ないからね!!今度こそ冥府に送ってあげるからね!!」
そう言うや否や、金の竜は息を大きく吸った。
「消えちゃえよ!人間!!くらえっ!!」
そう言うと、金の竜は金色の炎を吐いた。
あ、マズイ!
こいつはここに居る全員と広範囲に渡って被害が出ちまう仕方ねぇな!
「ソウルブレイカーッ!!」
俺は自身の最強の技で金色の竜に斬撃をぶつけた。
「ば、馬鹿な!?龍化した僕のブレスを、と、止めて…うっ!?」
「無茶苦茶すんじゃねぇよ!このバカが!!」
そう言うと、俺は押し合いになっていた俺の斬撃に、さらに力を込めて金の竜の炎をかき消した。
「うっぎぃやああ!!」
そして俺のソウルブレイカーの斬撃は金の竜に襲いかかるが、すんでの所で俺は斬撃の軌道を曲げた。
しかしさすがに本気で撃った俺の最強技だ。
威力が高すぎて金の竜に少し当たってしまった。
金の竜の片翼が切断され空に浮いてた竜は地上に墜落した。
「うっぎゃあああ!!ぼ、僕の翼が!!よ…よくも!よくも!!許さない…グッ!!」
地上に落下した竜は、そのまま変身が解け元の少年の姿に戻っていた。
「そ…そんな馬鹿な…ぼ…僕が負けた?し…信じられない…」
人の姿に戻っても、ダメージが大きいのか血が大量に出てしまっている。
それを見て、俺は迷わずシルファを呼んだ。
次回の更新は9月1日(火曜日)になります!(^^)




