第43話 竜の魔窟探索へ
俺とカイル王子の前に探索用の服装ではあるんだろうけど豪華そうな装備一式を着た気の強そうな女の子が立ち塞がった。
「お、おやめ下さい!今のを見たでしょう!?王子があの様に簡単に敗北した強者です!無謀すぎます!!ましてや王女は魔法使いです!!剣士に1対1の試合で勝てる訳がありません!不利すぎるんですよ魔法使いと剣士では!!」
「そんな事はありません!!高速詠唱を最近覚えたではありませんか!!あの者が近づく前に魔法を当てて見せますわ!!」
そう言うと、キッとシスティリアと言う王女が俺を睨みつける。
うん、随分嫌われたね。
まぁ目の前で兄貴が倒されたら気分は悪いよな。
って言うか、この集団に子供が二人居るなと思ってたけど、一人は王子だったから良いとしても、この子も王女だったんかい!良いのかよ国として二人も王族を、こんな危なそうな場所に連れて来ちゃって!
「フ、やめておけシス。シグレアキラなら、その高速詠唱の一瞬で間合いを詰められる。ケガをしたくなければ引くんだ」
「で、でも お兄様!こんな奴、私が倒して見せますわ!お兄様の仇は私が取ります!!」
「言う事が聞けぬなら、王城へ帰ってもらうぞ?俺の言う事には従うとの約束で無理を聞いて、ここに連れて来てやったのだ。約束を反故にするなら俺も、お前の言う事は聞けんぞ?」
「ううっ!…で、でも私悔しくて…お兄様が負ける所なんて、カイエン叔父様との試合以外で見た事なんて無いから…」
「フハハハ!世の中は広いと言う事だ。シスよ、俺は確かに王城では敵無しの戦士になったが、叔父貴には未だ一本も取れぬし、国の金級の冒険者とも戦った事は無い。俺など、まだまだよな」
「そ、そんな事ないですわ!お兄様はいずれ世界一の剣士になれますわ!!カイエン叔父様にだって、きっといつかは勝てると信じてるもの!」
「フフ、だと良いがな。まぁ俺も負けはしたが負け続けるつもりは無い。いずれ叔父も、そしてこのシグレアキラにも勝って見せるさ。強さを諦めはしないさ」
「そ、その意気です!お兄様!!」
そう言ってシスティリア王女は、カイル王子に抱きついた。
「まったくいつまでたっても、シスは子供だな」
そう言って、優しく王子はシスティリア王女の頭をなでた。
とても満足そうな笑顔になる王女。
それを見ていた俺に向かって
べー!
と、舌を出して、そそくさとテムと一緒に、
自分の天幕へ戻って行った。
うん。
腹が立つより、可愛いね。
兄思いの妹って感じで、ちょっとホッコリしたよ。
「フフフ、女たらしのシグレでも、王女には嫌われたみたいね♡」
何故か機嫌の良いウリシュクが俺に近寄って来て、そう言った。
「誰が女たらしだ、誰が!」
「マスターは、女たらしなんですか?」
「ほら!ウリウリが余計な事、言うからミリスがバカな言葉を覚えちゃったじゃんか!!」
「誰が、ウリウリよ!!…まったく、まぁでも良く殺さなかったわね、うん。手加減出来るじゃない。見直したわ、てっきりカッとなって殺しちゃうんじゃないかって、少し不安だったのよ」
「あのなぁ、人を見境ない殺人鬼みたいに、言うなっての!!俺は基本命は奪わねぇ主義なんだよ、それに王子にケガさせたら、お前の評価に傷がつくかも知れねーだろ?安心しろってカッとは、なったけどわきまえてるつもりだからよ」
「フフフ、そうなのね、ばかね。あの王子なら、そんな事しないでしょ?でもありがとねシグレの、そう言う所私も好きよ」
「お、惚れちゃったか?まぁ付き合うなら、デートからかな」
「調子に乗らない!」
ポコっと、ウリシュクパンチを、頭にくらった。
全然痛くはないけどね。
「ウリシュク殿、では10分くらいしたら、竜の魔窟の探索に入る準備を、整えていてくれ」
ケンプ隊長が、俺達にそう告げた。
準備と言っても、剣はいつでも転送で出せるし、ウリシュクも例のワンドを背中に背負ってて、臨戦態勢にいつでも入れる。
ミリスにいたっても、いつでもゴーレムを召喚出来るので、やる事は別段ない。
なので俺は、ウリシュクにさっきの王女について聞いてみた。
「システィリア王女?ああ、私四年前に王城に行ったけど、その時はチラッと見ただけよ確かあの時は9才だったのに、凄い魔力を感じたから覚えてるけど、喋った事もないし、全然、知らないけど国の噂でも、あまり目立った事柄は聞いてないわね。第一王女のリムリア様となら若干喋った事はあるけどね。まぁ王族だし当たり障りのない魔法談議をしただけ、だけどね」
「え?第一王女?何人兄妹居るんだ、王子達」
「そうね、シグレは他の国の人だから、知らないわよね。この国デュラリオン王国の王家は、国王イグルス5世が統治する国家で、王妃がルイーズ様、その子供達、ケイン第一王子、カイル第二王子、リムリア第一王女に今のシスティリア第二王女の四人兄妹ね。ちなみに国王は賢王って呼ばれる位、人間にしては賢そうな人ね。国民からの人気も高いわ。あなたと試合した第二王子のカイル王子も、さっぱりしたあの性格だから人気はあるわね」
「へぇ〜四人兄妹か。俺にも妹が居たけど家は二人兄妹だから四人も居たら賑やかで良いな」
「あら妹さんが居るのね?」
あ、しまった、これは俺本人の家族の事だ。
シグレアキラの設定に妹なんて居なかった。
「う、うん…まぁな…」
俺がちょっと言いにくそうに、そう答えると
「あ、うん言いたくなければ…その…死別したとかなら…」
「ああ、いや死んじゃいないけど、ちょっと今は会える機会がねぇってだけなんだ。気にしないでくれ」
うん、だって現実に帰れる手段が、まったく現状では分からないしね。
「そうなの?なら生きてるのね、良かったわね、生きていたらきっとまた会えるわよ、生きてさえいればね…きっと…」
そう言うと、ウリシュクは悲しそうな顔をした。
もしかしてウリシュクの兄妹は…いやそこは聞くべきではないよね。
「我にも15機程、同型機が存在しておりましたよ!」
元気良くミリスが、俺達にそう言った。
うん、暗くなりつつあった、この雰囲気をナイスな判断で明るくしてくれた。
まぁミリスの事だし、気を使ったんじゃなさげだけど。
「え?それじゃミリスの兄妹達も、どこかでミリスみたいに動けなくなってんのか?」
「いえ、ほとんどの兄妹は、聖戦で破壊され生き残ったのは、三体程だと思います。しかし我は聖戦の途中で負傷が大きく修理も出来なさそうと判断され、あの地に放置されましたので他の二体の生存は分からないです」
「マジかよ…お前のマスターって冷たいな。つまりは置いてかれたんだろ?」
「いえ!正しい判断かと。我は巨大だったので、直るか直らないか分からぬ我を持ち運ぶのは軍にとって大きな負担になりますから、理にかなっていたかと!」
「理にって…お前それで五千年も、あんな所で放置されてたんだろ?恨んでねーのか?マスターを」
「いえ、まったく!むしろ足手まといになるくらいでしたら自爆して消滅した方がマシだと思いました!」
「はぁ…お前の忠義は良く分かったけど、俺は絶対お前を見捨てて置いて行くなんてしねぇからな安心しろ」
「? なぜですか?足手まといになれば、道具は切り捨てないと、戦いに勝利出来ませんよ?それこそ理解に苦しみます」
「ばか!お前はもう道具なんかじゃねぇっての!大切な仲間なんだ!仲間を見捨てるなんて俺は絶対にしねぇ!誓ってもいいぜ!!」
「我が…仲間ですか?」
「そう言ってる!だから前は知らねーけど、見捨てられて当然とか思うな!約束だぞ!」
そう言って俺は、ミリスの頭を撫でてニコッとサムズアップ笑顔を向けた。
「は、はい!了解ですマスタ…いえシグレさん!!」
そう言われた、ミリスは少し理解してなさそうな表情もしていたが、頭を撫でられた時は嬉しそうな表情をしていた。
「そうよ、ミリスもそんな薄情な前の主人の事なんて、もう忘れて楽しく生きなさいね。ゴーレムだろうと、ミリスはミリスなんだから、もう私達の大切な仲間なのよ?自覚しなさいね♡」
そう言ってウリシュクが、ミリスを抱きしめる。
「は、はい!努力します!」
少し照れながら、ミリスが返事をした。
うむ。
良き良き。
そんな感じで和気あいあいと過ごしていたら
すぐに出発の時間が来たのだった。
次回は8月4日(火曜日)更新です!(^^)




