第42話 シグレ対カイル王子
「いいの?王子ケガしても、私じゃ治せないんだけど?」
ウリシュクが、ケンプ隊長に尋ねた。
「大丈夫ですよ、私が治癒魔法を使えますから、腕の一本や二本すぐに生やして見せますよ!」
すると後方で、この騒ぎを見学してた女性が前に出て来た。
年は20代前半っぽい神官の様な服を着てるので、どこか雰囲気がルフレと似ている。
なる程そりゃヒーラーも居る訳か。
「あなた治癒士?なら大丈夫ね。シグレ殺しちゃダメよ?程々にね」
何とまぁウリシュクからOKが出ちゃったよマジか…
「フ、ウリシュク殿、王子は、あのお年で、俺より強い剣士なのです。油断していると痛い目に遭いますぞ?」
何とも、この王子、実は実力者っぽい。
イケメンで権力あって、腕も立つってどこの漫画の主人公かな、この人は…
「あ、そう。じゃシグレ手加減無しで良いみたいだから、本気でやっちゃって!」
「おう!まかせとけって!!」
俺は、またもや笑顔でウリシュクに、サムズアップする。
いやいや後で問題になっても知らないっての!大丈夫か!そんなんで!!
俺の心が、そんな心配でアワアワしてる内に騎士が木剣を持って来た。
王子には、丁寧に渡していたが、俺には投げつけられた。
いや、この差…ちょっと俺も腹が立って来たな…
「国では、俺と互角に立ち会えるのは、カイエン叔父貴ぐらいになってしまったのでな。もし貴様が俺と互角に戦える様なら王宮付きの士官に推薦しても良いぞ!」
「はん!何だそりゃ、お断りだね、それより負けても後から不敬だったとか言って依頼自体をキャンセル扱いとかに、するなよ?」
「フハハハ!勿論だ!そこまで強ければ俺の近衛に推薦しても良いぞ!ただし俺に勝てたらの話だ!!ケンプ!審判をしろ!こ奴の合図で試合を始める!異議はないな?」
「おう、いつでも良いぜ?王子様!」
俺は手をクイクイっと手招きして挑発する。
「フハハハ!その意気や良し!久しぶりに血がたぎるわ!!」
「両者剣を構え!では、これより模擬戦を始める!」
ケンプ隊長が大きな声で、そう言った。
これはもうやるしかないか…
まぁシグレアキラが、もうやる気満々なので止められそうにないけどね。
王子が胸の前で剣を添えた。
試合前の儀礼的な作法かな?
まぁシグレアキラは、そんな物分からないので、何もしない。
すると礼儀も知らんのか、あの子供は!
無礼にも程がある!田舎者め!!
と、非難轟々だ。
「では、始め!!」
大きな号令と共に、王子が結構なスピードで俺に突きを放って来た。
へぇ喉に一直線だ。
中々速いな。
だが、俺から見たらスローにしか見えない。
俺は最小限の動きでそれをヒョイと躱した。
「!?」
驚いた表情を一瞬浮かべた王子だったが、すぐに連撃を入れて来る。
今度はさっきより速いけど、やっぱりシグレアキラから見たらスローに感じる。
連撃もヒョイヒョイと、躱すと、王子は驚いた表情を浮かべ少し後ずさった。
「な…何だと!?王子の連撃が、躱されたぞ!?」
「ど、どう言う事だ!?」
「ぐ、偶然に決まってる!!」
「しかも、あ奴余裕そうだぞ!?」
騎士達が、どよめく。
審判をしているケンプ隊長も驚きを隠せない表情をしていた。
「ほう?俺の7連撃を、こうもあっさり躱すとは…フフフ、こいつは想像以上かも知れんな…」
すると王子の構えが変わった。
「お、王子!?いけません!!いくら木剣でもその技を使えば、相手を殺してしまいますぞ!?」
ケンプ隊長が審判と言う立場を忘れ、そう大声で告げた。
「俺は負けるのが嫌いだ。それに最速の7連撃を躱す相手だ。どうやら全力で戦わねば、勝てぬと見切った。ならば、有無を言わさぬ!こ奴なら死にはせん!!」
「お、王子!?」
「受けて見よ!奥義、炎神!!」
王子の剣が光ったと思うと、それは炎をまとって、先程の数倍の速さで俺に迫った。
その威力は絶大で当たったら、シグレアキラでも真っ二つになる…って言うかミリスのゴーレムでも切断、出来そうな凄い技だ。
避けた方が無難なんだけど、この威力だと後ろで見学してる人達に、被害が出てしまうな。
仕方ないから、空へ受け流すかな。
俺は木剣に魂を込めて(とても込めにくいけど)剣を強化して、その技を受け流し威力を空へ逃がした。
「何!?」
驚きの表情を浮かべる王子。
受け流された炎の剣撃は、空中で爆風と共に霧散する。
俺の魂で強化した剣撃で、相殺した結果だ。
爆発させないと危ない剣撃だったので仕方ない。
驚いてる王子の首元に、俺は木剣を近づけて
「チェックメイトだな」
と、言って軽く笑顔を向ける。
その剣を見て、王子は一瞬苦い表情を、浮かべ、とても悔しそうな顔をしたが、すぐに笑顔を返し
「見事!お前の勝ちだ!!」
「おお!!」
すると周りの騎士達も歓声を上げた。
「な、何と言う試合だ!王子の技を、ああもあっさりと破るとは!!」
「か、完敗だ…あれが真剣の勝負なら、王子は殺されていたぞ…」
「シ、シグレアキラと言ったな、聞いた事など無い名だぞ!?」
「い、いや王子と同年代と聞いた、恐らくあの若さだ、まだまだ名を知られてなどなかったのだろう」
「さ…さすがわ炎壊のパーティメンバーだ…きっとどこぞの国からスカウトして来た天才に違いないだろう…」
「へ、下手をしたらカイエン様に匹敵するんじゃないか!?」
「ば、馬鹿を言え!五大英雄と同格の剣士など、居るはずがなかろう!!」
ザワザワと騎士達が、騒ぎ出す。
戦う前と違って俺に対する目が違って来ている。
尊敬や憧れ、そして畏怖が魂の色で分かる。
全体的には好感度が上がっている気がする。
大将が負けたからもっとキツイ態度を、とられるかと思ってたけど、意外とコイツら武闘派だな。
強ければ認めるって感じなんかな。
「そ、それまで!試合はここまでとする!勝者はシグレアキラ!!よろしいですな?」
審判を務めていたケンプ隊長が王子に確認する。
「フッ悔しいが、どうやら格が違う様だ。もしも攻撃をされていれば骨の一本や二本折られていただろうな。我が奥義を、あの様に軽く凌がれたのは、叔父貴以来だ。フフフ、良い目標が出来たよシグレアキラよ!」
そう言って王子は握手を求めて来た。
「ぜひ俺と、友になって欲しい!どうだ?」
負けたらもっと駄々こねられるかと、思ったけど意外にこの王子スッキリした性格だね。
うん好感持てるね。
「へっ!良いのかよ?王族が庶民を友だなんて呼んでよ?」
「フフ、俺は強者が好きなのだ。しかもお前は俺を傷つけ様と思えば簡単に出来たはずだ。それをしなかったのは、お前の甘さと思えるが俺はそう言う優しさを持ってる人間が好きなのだ!気に入ったのだ、ぜひこれからは俺の名で呼んで欲しい、勿論、呼び捨てで構わん!」
騎士達が今の言葉を聞いて、ざわついた。
「お、王子!いくら何でも、それは不敬です!!許可いたしかねます!!」
ケンプ隊長がカイル王子に詰め寄った。
「なに、公の場では殿下と呼べばいいさ。しかしそれ以外ではカイルと呼んで欲しい。それが友と言う物だろ?」
「し、しかし…」
「異論は認めぬ!これは命令だ了承しろ!!」
「ははは、あんた王族なのに良い奴だな俺も気に入ったぜ。じゃあこれからはカイルって呼び捨てて呼ぶぜ?俺も王子様なんて呼び名かったるいからな」
そう言って俺は、握手に応じた。
「うむ!ではそれで決定だ!皆分かったな!シグレアキラは今、見ての通りの強者であり恐らく我が叔父で五大英雄のカイエンに匹敵すると俺は見るぞ!これは国の宝と言えよう!文句のある者はシグレアキラと試合をするが良い!そして身を持って、こ奴の価値を知るが良いさ!!」
王子の言葉に周りにいた20名程の騎士達は一旦俺を見て生唾を飲み込む仕草をし全員が
「異論はございませぬ!!」
と、片膝を付いた。
しかし
「私が!この者を倒します!!」
と、言うと一人の少女が俺達の前に出て来た
「シ、システィリア王女!?」
何だか気の強そうな女の子が敵愾心むき出しで俺を睨みつけた。
次回は8月1日(土曜日)に更新です!
よろしくお願いします!(^^)




