第40話 竜の魔窟へ
そんなに堂々とケチをつけられて、機嫌を悪くしてないかと、チラリと俺がウリシュクを見ると
「まぁどうでも良いけど護衛の依頼は私達でするから安心して良いわよ。国宝でも何でも依頼期間は、きちんと護衛してあげるから、安心して探索でも何でもして」
「ふん!冒険者ごときが我ら近衛兵団の護衛なんて務まるのかしら?足手まといにならなきゃ良いけどね!」
「よさないかテム!!ウリシュク殿は本当の実力者だ!お前の師匠だって模擬戦で倒されてるのだぞ?お前だって知ってるだろう!?」
「兄さん!私はそれを見てないって言ってるでしょ!きっと卑怯な手を使ったに決まってる!そうじゃなきゃ王国最強の魔法使いのマーリン師匠が冒険者ごときに、ましてやこんな子供に負ける訳が無いわ!!」
ん?今このテムって人、隊長のケンプって人を兄さんって言ったぞ?
もしかして兄妹なんかな?
「すまない妹は、こう言った性格で少々問題があるのだ、ウリシュク殿には非礼を詫びよう」
そう言うと、隊長は片膝をついた。
多分、騎士としての謝り方何だろうね。
人間が出来てて、この人は好感が持てそうだね。
「兄さん!そんな奴に謝る事なんてないわ!!」
「いい加減にしないか!殿下の御前でもあるのだぞ!わきまえろテム!!」
「くっ!…わ…悪かったわよ」
全然謝ってないな、このテムって人。
しかもウリシュクに見向きもしてない。
ウリシュクには謝ってないよな、これ。
「フッ気にするなケンプ!なあにテムも優秀な王宮魔術師なのだ、すぐに炎壊の実力に、気づくさ!」
「あり得ないですけどね」
「テム!!」
「はぁい、ごめんなさい、ごめんなさい」
うーむ大丈夫か、この集団…
とてもフレンドリーとは言えない状況だぞ?
こんなギスギスした集団と一週間も一緒に、居るなんて地獄か…
「所で炎壊、後ろの二人は従者か?」
王子が俺とミリスを見て、そう尋ねた。
「違いますよ殿下。依頼書の通りのパーティメンバーですよ。シグレは剣士で、ミリスは武道家兼ゴーレム使いです」
ウリシュクが、王子にそう説明した。
「何!?彼が…いや確かに依頼書には14才と、記載されているが…まだ子供ではないか!!」
ケンプ隊長が素直な感想を述べる。
うんまぁ確かに俺達って見た目全然、強そうに見えないから納得だね。
逆に、この見た目で強そうだ!とか言われたら、どうかしてるって思うもんな正直。
「大丈夫よ、ハッキリ言ってシグレは私より強いから、すぐに実力に気づくわよ。ミリス本人も…多分強いし使役するゴーレムは半端ない強さだから安心して良いわよ」
「はは、それは褒め過ぎだろう!炎壊!お前より強かったら、この国にはさらに金級の、冒険者が二人も増えると言う事だぞ?しかし、はは、仲間をたてるのは良い事だ!俺は嫌いじゃないぞ!」
「はぁ…まぁ良いです。それで詳しい、依頼内容を聞かせてもらえますか?殿下」
「おう!ではケンプ!」
「はは!!ではこちらに、ウリシュク殿」
簡単なテントがある所に、ウリシュクが、呼ばれたので俺達も付いて行こうとすると、騎士に止められる。
「従者は、外で待つ様に」
うーむ。
冷たい目だな。
この騎士も冒険者が嫌いっぽいのかな?
そんなに冒険者って、イメージ悪いのかな…まぁ粗暴でチンピラみたいのも居たしな。
しょうがないのかな。
「シグレとミリスは、パーティメンバーで、従者じゃないわよ。来て良いよ二人共」
ウリシュクが構わず俺達に、手招きをした。
なのでテントに入ろうとすると
「ま、待て!勝手に入ろうとするな!」
剣を抜き俺達を止めようとする。
「へえ?抜いたね?じゃあんた死ぬ覚悟は、出来てるんだな?」
ホマレ自身は別に何の弊害もないし、剣を抜かれて少しビビってるが、魂が、その
シグレアキラとしての自身の心が、その行為を許さない。
心がすぐに熱くなる。
マズイ、シグレアキラはケンカっ早いのだ。
俺と言う人間が入っていても、この衝動は、止められない。
売られたケンカは買う主義なのだ。
理性で分かっていても、魂から来るシグレアキラの心の衝動は抑えられない。
俺は、スッと手を伸ばすとレオンがそれに、合わせて剣を転送してくれる。
ああ、間が良いのか悪いのか、気がききすぎだろレオン!!
「な、何!?貴様!今どこから剣を出したのだ!?」
「俺だけじゃねえ、ミリスにも、お前剣を向けたな?仲間を傷つけ様と、する奴は容赦しないぜ?」
シグレアキラが、啖呵を切る。
マズイ怒りの衝動が、どんどん強くなっていく、このままじゃ依頼がメチャクチャに、なっちまうぞ!?
シグレアキラの異様な雰囲気に、剣を向けた騎士が後ずさった。
「な、何だ!?この少年は、リーチも短い、たかが片手剣を構えただけの子供…なのに、な、なぜだ?なぜこうも威圧感を感じるんだ!?」
騎士の一人は、少年から感じる謎の圧迫感に後ずさっていた。
これではまるで、この子供が強者の様では、ないか!?
こ、この感じはケンプ隊長とも違う…
この圧は、まるで…カイエン様と対峙している様ではないか!?あ、ありえぬ!?
「よさぬか!!シグレアキラも、ミリスも依頼書に記載されている立派な炎壊のパーティメンバーだ!!通して良い!!」
ケンプ隊長が騎士に、怒鳴った。
「わ、分かりました!小僧通って良い!!」
「どうした?怖気づいたのか?かかって来ないのか?」
「き、貴様!図に乗る…」
「命令を聞けんのか!通して良いと言っている!!」
隊長がさらに怒鳴り散らした。
「りょ…了解!!」
剣をしまう騎士。
「へっ命拾いしたな?だが次に仲間に剣を、向けたら命を、貰うぜ?俺は殺しは、しねぇ主義だが仲間を傷つける奴には、容赦しねぇからよ覚えとけよ」
「グッ!さっさと行け!!」
「分かったよ、行くぞミリス」
「はい!シグレさん!!」
元気良くミリスが、俺の後に続いた。
テントに、俺達が入ったのを確認して、シグレアキラに絡んで来た騎士は胸を撫で下ろす。
「な、何なんだ、あの子供は…まさか本当に強者なのか!?」
身体が震えてる事に、気づいた騎士は信じられないと、首を振る。
我は王宮騎士団の中でも最強のケンプ隊の、騎士だぞ!?
そ、それがあの様な年端もいかない少年に、気圧されるなんて…あ、ありえんだろう!?
今起こった事なのに、信じられなかった。
実際、近衛騎士団の騎士は、エリート中のエリートだ。
一般の冒険者に比べても銀級にも引けを取らない凄腕の集まりだ。
魔物と対峙しても臆した事など一度もないという集団で、実際強者の集まりだ。
国の戦力の要でもあった。
その団員が、たかが14と言っていた少年に気圧されたのだ。
ありえぬ事だった。
「フン、生意気なガキだぜ、どうせ炎壊の、金魚の糞だろ?炎壊って言う実力者が居るもんだから、いきがってるのさ」
今のやり取りを、見ていた数名の団員が、駆け寄って来た。
「まったくだ フン魔物との戦闘にでもなれば、すぐに化けの皮が剥がれるだろ。気にする事はないぜ」
仲間の団員に声を、かけられてその騎士は、力無く
「ああ…」
と、返事を返した。
「どうした?具合でも悪いのか?顔色が悪いぞ?」
「いや、だ 大丈夫だ、何でもない」
「そうか?なら良いんだが、じゃ俺達は、持ち場に戻るぞ?」
「あ、ああ心配をかけたな」
そう言って手を振る、その騎士は、まだ冷や汗と身体の震えが止まらないでいた。
「あ…ありえん…」
騎士は、少年の入って行ったテントを、凝視してもう一度言った。
「ありえる訳が無い…」
その言葉は、消え入りそうなくらい小さな
うわ言の様な声だった。
次回の更新は、7月25日(土曜日)です!よろしくお願いします!(^^)




