第38話 護衛任務の始まり
「しかし、あのリッチを従属出来る存在が居るなんて、これは相当な問題だな。アマランの領主…いや国に伝えなければ、ならないレベルの話かも知れん…」
イングディが、険しい表情でそう言った。
「大丈夫、リットには伝えてあるから、何か対策をするかもね。ギルマスならリッチでも難なく倒せると思うし大丈夫でしょ」
ウリシュクが不安を和らげる様に、全員に、そう言った。
「そ、そうか、なら安心ですね。もしまた黄泉の沼地に現れたらギルマス自ら討伐に動いてくれるなら問題無いですな」
イングディが、ホッとした顔をして胸を撫で下ろした。
「リッチは多分もう人間は襲わねーって言ってたから大丈夫だよ。それよりもギルマスって奴は強いのか?」
「え!?シ、シグレ君、うちのギルマスを知らないの!?」
「ああ 知らねー会った事も無いしな」
「かぁ〜!このお上りさんめ!国の英雄で、元金級冒険者カイエンさんを知らない人間がまだ、この国に居るなんて信じらんない!!」
キャロルが大げさに両手を広げて芝居かかったリアクションで、そう言った。
「はぁそうねシグレには、言って無かったわね。アマランのギルドマスターのカイエンは国の長い歴史上でも五大英雄の一人って言われる程の相当な実力者よ。ハッキリ言って私より強い奴は、このギルドでは、あの人くらいね」
「え!?ウリシュクより強いのか!?そいつ!?」
俺は、驚いてウリシュクに、そう聞いた。
ギルドマスターって俺のイメージだと皆をまとめる力は、あるけど腕は、そこそこで、事務処理能力に長けるって感じだ。
まぁファンタジーの作品では、ギルマスが強いってのも良く聞くが、俺の見解では、強くても年齢いっちゃってて、現役を退いてるってイメージかな。
なのでトータル強くはないんじゃないかなってのが俺の印象だったんだが。
「認めたくないけど何回か、模擬戦で試合した事あるけど、5回やって5回負けてるわ…」
「へぇ〜そりゃ相当強えな!ウリシュクが1回も勝ててないって事だろ?」
「う うるさいわね、カイエンは速すぎるのよ、魔法の詠唱が間に合わなくっていつも瞬殺されちゃうのよ!魔法使いじゃあの人に勝てっこないのよ!」
「す 凄い!炎壊さんギルマスと、試合なんてしてたんですね!驚きました!!」
チャチャが目を輝かして、ウリシュクに詰め寄った。
「本当に凄いな。ギルマスは、滅多に模擬戦を行わないらしいぞ?それは相手にならないから、らしい。最低限自分と多少でも戦えると認めた相手としか試合は、しないらしい。俺がギルドに入って20年近くになるが、一度もギルマスが模擬戦をしてるのを、見た事が無い」
ウックと言うシーフが、俺達にそう言った。
「え?でも俺の登録には、ギルマスが来てからって言ってたから、てっきりギルマスとそんな感じでテストされんのかと、思ってたけど」
「ああ シグレ君は、そう言う事だったな。最近は新人冒険者の事故が多くてな。死傷者も出てる。それで下級の依頼でも最低限の腕があるかどうか、ギルドマスター自らが見て判断してるんだよ。新人の冒険者相手に、ギルマスが模擬戦を行う事なんてないさ。適当な相手と試合させて、それを見て実力を判断してるだけだよ」
イングディが、そう教えてくれた。
「だが、彼ならもしかしてギルマス自ら模擬戦を行なうかもな」
無口でずっと黙っていたリムジーと言う大男が、ぼそっとそう言った。
あんたちゃんとしゃべれたのね…
「ああ 同意だ。シグレ君の腕を見れば、あのギルマスの事だ、きっと模擬戦を挑んで来るだろうな。あの人は強者が大好きだからな」
ウックがリムジーに同意する。
「ええ あの人シグレ君の実力を知ったら絶対自分で確かめに来るよね!その時は教えてねシグレ君!アマランのギルド始まって以来の見物だもの!」
キャロルが、俺の腕に身体を巻き付けて笑顔で、そう言った。
うわ、役得!結構グラマラス!!…はっ!?
気がつくとウリシュクのジト目攻撃が再度俺を襲う!
「キャロルさん!シグレさんに迷惑ですよ!離れて下さい!!」
するとルフレが、俺とキャロルを引き剥がしに来た、が、ルフレの力では弓使いのキャロルを引き剥がせない。
「あんらぁ?ルフレったら何々?もう独り占め宣言かしらぁ♡だめよ、シグレ君は、金の卵なんだから、つばつけとくのよ♡」
と、さらに身体を巻き付けて来るキャロル。
役得だがウリシュクからのジト目がキツイので、俺はやんわりと、キャロルを引き剥がした。
「ああんっ!」
キャロルは文句を言ったが、その顔は真っ赤で超笑顔だ。
酔ってるね、このお姉さん。
まぁ役得では、あったけど。
キャロルを引き剥がすと、ホッとした顔のルフレが、そのまま俺のそばに座ってる。
俺の右には、ウリシュク。
左には、ミリスが座っているので、ルフレはミリスの隣だけど。
その後、色々とルフレのパーティメンバーの生い立ちをやら依頼で戦った魔物の話なんかを、聞いたりして俺達は結構盛り上がった。
ウリシュクはチャチャと魔法談議を、したりして楽しそうだったし、ミリスもルフレやキャロルとかに、マスコット的な扱いを受けて、抱きしめられたりして、ちょっと迷惑そうだったけど、料理が好みだったみたいで、笑顔で楽しんでたし、まぁ良かったかな。
俺は、なんでそんなに強いんだとか、どこで剣を学んだんだとか、色々聞かれて面倒だったが、うまい事スルーして誤魔化した。
本当の事言っても理解されないだろうしね。
でもまぁ結構楽しんだ。
ルフレのパーティメンバーは、気さくな連中だったので話しやすいし、良い友人になれた気がした。
俺達は、そのまま夜まで盛り上がって楽しく別れた。
うん良い宴会だったかな。
(まぁ料理は薄味で、ちょっと物足り無かったけど)
その夜、俺達は宿屋に戻って多少気苦労も、あってグッスリ眠れた。
ミリスは、俺の部屋で一緒に寝たがったが、ウリシュクの猛反対にあって、ウリシュクの部屋で寝た。
うんまぁ見た目が10才くらいの子供だけど倫理的に、それが正しいよ。
マスターマスターってもう少し倫理観を持たないとねミリスは…まぁ懐かれるのは悪くないんだけどね。
そんなこんなで、何日か俺達は、街を見学したりウリシュクに案内してもらったりして、護衛の依頼日まで、三人一緒で結構楽しく過ごした。
依頼用にミリスのゴーレムのミスリルを少し分けてもらって俺用の剣も精製出来たので、準備はバッチリだ。
そして護衛の依頼の日は訪れた。
俺とウリシュク、ミリスの三人は依頼の指示があった街の正門に、朝8時頃に迎えが来ると、言うのでそこで待つ事にした。
「今7時50分だから、そろそろ何か来るんじゃねーかな?」
俺は腕時計を見ながら二人にそう言った。
「しかし凄いわねあなたの時計、そんなに小さくても正確っぽいし、それアマランでも相当、値の張る代物よ?」
ウリシュクの話では、懐中時計が、俺の腕時計に匹敵する時計だそうだ。
でも金貨10枚は、するらしいし何と言っても、ネジマキ式だそうだ。
ボッタクリだろ、そんな時計…
「あのなぁ俺のこれは時計だけじゃねぇぞ?バイクに付いてた3Dマップ機能も連動してるからダンジョンとかに入っても自分の位置は、バッチリ分かるぜ?他にも温度、湿度、緯度、経度なんかも測れるぞ!」
「え!?そんなに小さいのに凄い機能があるのね!?ますます希少価値が高いわよ、その魔導具は!」
「フフ 恐れいったか!」
「調子に乗らないの!…まぁでも凄い事は確かだけどね」
「マスター!さすがです!!」
「だろ?もっと褒めて良いのだぞ二人共!我を褒め称えよ!」
「だから調子に乗らない!」
ポコっとウリシュクパンチ(弱)を、頭にもらった。
そんなくだらない、やり取りをしていると、豪華そうな一台の馬車が俺達の前に止まった。
馬も普通の馬っぽくない、何か高貴な感じがするし、馬車もアマランで見た乗合馬車に、比べて高級な装飾で飾られてて、いかにも高そうな感じだ。
「あれスレイプニールよ…どうやら今回の依頼人は相当の権力者みたいね…」
「スレイプニールって、もしかして魔物の?」
ゲームとかで聞いた事のあるモンスターの名前だ。
「そうよ普通の馬より体力もあるし力も強いの。その分値段も普通の馬の10倍以上は、するわよ」
なる程、こんな馬を持ってるだけでも依頼主の権力が分かるってもんだ。
「炎壊、ウリシュク様と、シグレアキラ様、ミリス様にシルファ様、デュランダル様の、パーティでよろしいでしょうか?…おや人数が足りない様ですが?」
すると見るからに執事っぽい初老の男性が、降りて来て俺達を見て、そう言った。
次回は7月18日(土曜日)の更新です!(^^)




