第20話 黄泉の沼地へ
ルフレをかかえて走り抜ける俺たちを見て
門番は驚いていたが、俺達は気にせず街から少し離れた場所でルフレを降ろした。
「な…なんです!?今の!?もしかして噂で聞いた事のある重さをコントロールするって言う魔法ですか!?え 炎壊さんが使ったのですか!?」
「違う重力魔法なんて私は使えないシグレの魔法でしょ」
「え!?こ この男の子の魔法なんですか!?」
「ほんじゃバイク出すぞ?お前らちょっと離れてろ」
「バ バイク?」
「うん、よろしく」
「ほい」
そう言うと俺はエアバイクを、船から転移させた。
「ええ!?」
急に現れたバイクにルフレが驚きの声を上げた。
「そんじゃ行くかって…そういやこれ二人乗りだな…」
しまった、バイクに乗れる人数を忘れてた。
「前はシグレだとして、詰めれば私とこの子くらい後ろに乗れそうじゃない?」
「え?それだと結構密着しちゃうぞ?色々とまずくねぇか?」
「うーん、そうねじゃあ私がシグレの後ろで、この子が私の後ろなら問題無いでしょ?」
ああ なる程それならルフレが、俺に密着して少年マンガ的ラッキーすけべは、起こらないかな。
「そうだな、じゃあそうすっか。じゃ二人共後ろに乗ってくれ」
「な なんです、この機械!?魔導具ですか!?でも、こんなの見た事ないですよ?」
「当然よ私だって今まで見た事無いもの」
何故か自慢げにウリシュクがそう言った。
「そんで場所は分かるか?さすがに場所が分からねぇと行き様が無いぜ?」
「えーと黄泉の沼地…だったかしら?ある程度の場所は分かるけど、細かい場所は分からないから、あなたシグレに教えてあげてね」
「え?え?ば…場所!?どう言う事です!?」
「まぁとりあえず沼って所に移動するか。着いたらルフレに案内してもらえば良いだろ。このバイクなら地理は、関係なく移動出来っからよ、大丈夫だぞ?」
「まったく本当に、とんでも無い魔導具よねこれ…あ ルフレって言ったかしら?この魔導具は秘密だから他言無用でね」
「え!?は はい!も もちろんです!でもこれは一体?」
「そんじゃ発進するぜ、シートベルトで二人共固定して、振り落されんなよ!ちょっと急ぐからな!!」
「シ シートベルト!?」
ルフレが、アワアワしている。
「これよこれ!でも二人じゃ…あらこのヒモ伸びるのね。これなら二人固定出来そうね」
そう言うとシートベルトを器用に二人分身体に巻き付けて固定した。
中々ウリシュクも応用力がある。
「そんじゃ発進するぜ!二人共しっかり捕まってろ!!」
「うん!」
「わ 分かりました?」
ルフレは訳が分からなそうだが、シートベルトで固定された二人を確認したので、俺は構わずエアバイクを発進させた。
「ほ ほええええ!!う 動きましたよ炎壊さん!!」
「う うるさいわね!ちょっと抱きつき過ぎよ!緊張しなくて大丈夫だから!これは鉄の馬の魔導具なの!安心しなさい!」
「す 凄い!こ こんな魔導具があるなんて!!」
そうは言ってもウリシュクも、人のサイズで乗るのは初めてなので緊張して、俺に強めに抱きついて来ている。
フフ 可愛いいもんである。
「そんじゃ沼地って、ここだろ?10分位で着くからルフレ案内よろしくな!ウリシュク地図の見方教えてやってくれ!」
「うん分かったよ。ええっと あ この赤い点が私達で、これがこの辺の地図よ。立体映像とか言う魔法で、自分の居る位置と場所を教えてくれるから沼地に着いたら案内してね」
「え ええ!?なんですこれ!?ま まさか動く地図!?す…凄いです!!」
沼地までは草原や平地が多く、障害物も少なかったので言った通り10分位で到着した。
「おし着いたぞ。で 仲間が立てこもってるって言う小屋はどこだ?」
「ええ!?う 嘘!!本当にもう着いてしまったの!?す…凄い、ここは確かに黄泉の沼地!!で でも、どの辺りだか…沼地と言っても広大な土地なので、何か目印があれば方向が分かるんですが…」
確かに地図上で見ても結構広い沼地だ。
当てずっぽうに移動してたら日が暮れてしまうだろう。
「あ!見て、この大岩はゴーレムの巨石じゃない!?」
ウリシュクが地図上から大岩を見つけた。
「!!…は はい!!これはまさしくゴーレムの巨石!!そこからなら仲間の場所まで案内出来ます!!」
「良し!そんじゃ ええっと…5kmくらいだな。それなら1分もかからねぇよ、行くぜ!!」
俺はエアバイクを飛ばして、ゴーレムの大岩と言う巨石のある地点に向かった。
時速100kmくらい出てるので、ウリシュクもルフレも俺にしがみついてて少々怯えてるみたいだ。
しかし人の命が、かかってるのだ。
我慢してもらうしか無い。
まぁこの世界の文化レベルで時速100km出せる乗り物なんて無いだろうし無理もないけど…
「お 見えて来た。あれだろ?ゴーレムの巨石ってのは」
そこには巨大な20mくらいはある
ゴーレムの姿に似た岩山が沼地の目立つ所にそびえ立っていた。
人工的な物に見えなくも無いが、かなりの年数が経っているのだろう。
所々風化しており植物が深く根を張りめぐらせ只の小山の様にも見える。
「これは昔造られた古代のゴーレムらしいんだけど、もう何千年も動いて無いみたいよ。本物だけど動かないんじゃ只の岩と変わらないわね」
ウリシュクが説明してくれる。
「ふーん…でもなんだか、こいつから何か感じるんだよな…」
シグレアキラの鉱石を感知する能力が、かすかに何かを感じているのが分かる。
しかし、それでも気のせいかと思う様な、かすかな気配だ。
「シグレ鉱石に何かを感じる力があるもんね…もしかして、このゴーレムと会話出来たりとか…する?」
「うーん いや そこまでじゃないんだよな。死んでると言えば、そうとも言えるけど死んで無いと言えばそうとも言えるって感じだ」
「何それ?どっちなの?」
「お二人共!大岩から南東へ少し行けば仲間の立てこもってる廃屋です!!行きましょう!!」
ルフレが大岩に着いた喜びと仲間の危機を感じる不安が入り混じった声で俺達を呼んだ。
確かに今は岩より生きてる人間を救わねえと。
「まぁ気になるなら事が片付いたら、またここに来てシグレが調べれば良いわ。それより今は、あの子の仲間を助けないとね」
「ああ その通りだな!行こうぜ!!」
俺達はエアバイクを船に転送し、そこからは走って廃墟に向かった。
もちろんルフレは遅いので俺が担いでいる。
「す すいません足手まといで…」
「いいよルフレ軽いし、気にすんな!」
「そ そうですか?」
ポッと何故か照れた顔をして、ルフレが今回は怖がらずに俺にそっと身体を預けてきた。
「女たらし…」
ウリシュクがジト目で俺を睨んだ。
少し怒ってる?
まさか嫉妬か!?…いやそんな訳ねぇかな。
「なんでやねん!しょうがねーだろ!こいつ足遅えんだからさ!」
「あ!シグレさん止まって!!あそこです!!アンデッドの気配が、す 凄いします!!」
ルフレが声を絞った状態で叫んだ。
「お!本当だ、あの小屋に籠城してんのか?」
俺は、そっとルフレを降ろすと、そう尋ねた。
「は はい!で…でもいけない…あ あんなにアンデッドが…私が逃げ出した時には20体も、い 居なかったんです!…」
一般的な一戸建ての建物くらいの大きさのボロボロの、ほっ立て小屋が確かに沼の小島の様な場所に確認が出来る。
しかしその周りには100体以上のスケルトンと言うか、人間の骨の化物が粗雑な武器を持って小屋を叩いたり、唸り声を上げている。
「何だあれ?スケルトン?アンデッドって奴か?」
俺がウリシュクに尋ねる。
「そうねスケルトンで間違い無いけど、厄介な奴が居るわね…見て沼の奥で陣取ってるフードを被ったスケルトン」
ウリシュクが指差した方向には確かに周りより大きめの人間の骨とは思えない大きさの骨の兵士に守られる感じで、ひときわヤバそうなオーラを放ったローブを纏った異質な存在が鎮座して居た。
「ひっ!?う 嘘!?ま まさか死霊じゃなくて…リ リッチ!?」
「ええ間違いないわね。あの魔力…下手したら私ぐらいあるかも…」
ウリシュクが真剣な表情でそう言った。
「そ そんな!!それじゃ勝ち目なんて無いじゃないですか!?」
半泣きでルフレがウリシュクに詰め寄った。
「どう言う事なの?こんな所に金級クラスの魔物が居るなんて…黄泉の沼地はスケルトン位の低級アンデッドの存在は確認されてるけど、あんな化物が居るなんて聞いた事無いわ…」
珍しく強気なウリシュクが委縮してるのが分かる。
そんだけヤバイ奴なのか、あの骨。
「でもどうして、あんな奴が手を止めて一気に襲いかからないのかしら?結界を張ってるみたいだけどリッチなら、あんなの簡単に壊せるのに」
するとリッチがこちらに視線を向けた。
遠目だがシグレの視力なら、ハッキリと見えた。
リッチと言われる骨は、こちらに気づいて笑ったのだ。
「はは なる程な。ルフレの仲間は、餌を呼寄せる為の囮にされたって訳だな。気ぃつけろ増援をお待ち兼ねだったみてぇだぜ?」
俺が二人に警戒を促す。
次回の更新は、5月16日(土曜日)です!
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