第11話 ウリシュクを想うリット
「あの人は実力ある冒険者なんだが、他人に対しては態度が悪くてな。こう なんつーか…信じてないっつうか、人間自体を信用してないっつうかさ、だから誰ともパーティは組まねぇし、つるんでる所なんて見た事ねえんだ。それが、あんたとの態度を見てると、あのウリシュクさんが信頼しきってる感じだろ?そりゃ驚きだろ!」
そう言うとまたガハハと言って俺の肩を叩く。
この人、部下に対しても、こんな感じで接してるんだろうか?
下手したらパワハラで訴えられかねないだろ…ってまぁこんな体育会系人間は嫌いな方では無い。
ハッキリしてて付き合いやすいからだ。
俺がなっている、このシグレアキラも体育会系の性格なので、こう言った人物には好感を持っている感じがする。
「あんた冒険者か?しかし若い所を見ると依頼か何かでウリシュクさんと同行してるってとこか?」
「あ いや実は俺の冒険者登録をする為に、ここに来たんだけどさ、何でもギルドマスターが不在で登録するには、依頼をこなさなくっちゃならねーらしくってさ」
と俺が、ガイルに説明していると、お金の入ってるらしい小袋を持って、ウリシュクが戻って来た。
「そう言う事だから、これから私達はリットの依頼を、こなさなきゃならないのよ。そしたらシグレの登録は、その時にしてもらうから、よろしくねガイル」
ウリシュクが淡々と説明する。
「ほほう!確かにギルマスは王都に、お出かけになってますな!しかし一週間も待てば戻って来ますよ?恐らくリットさんの依頼じゃ、とんでもない難解な物を押し付けられたのと違いますか?わざわざウリシュクさんの手を煩わせなくても…」
「いいのよ。私はたまにしか、ここに戻らないしね。時々依頼を、こなしておかないと立場上マズイんでしょ?」
「ガハハハッ!その様な!!炎壊の名を知らぬ冒険者は、王都は元より、ここアマランの街の冒険者ならば知らぬ者など、おるわけが無い位の知名度なんですぞ?そもそも金級の冒険者の中では依頼を、受けてくれる方ですぞ?他の二人は5年〜10年音沙汰無いなどザラですから!!なのでウリシュクさんを重宝しないはずが、ありませんのでな!!」
そう言うと、さらに大きな声で、ガイルはガハハハと笑った。
「おべっかが、うまくなったわね。ガイル。
新人の頃、上司に怒鳴られてた時よりは成長したみたいね」
クスッとウリシュクが小さく笑った。
「いやはや!それを言われますと敵わないですな!さすがに、あれから数十年経っておりますからな!しかしウリシュクさん達エルフからしたら少し前くらいの間隔なのでしょうな!いや恐れ入りました!」
と言ってガハハハと、大声で笑うガイル。
「それじゃリットの依頼を終えたら、ここに戻ってシグレの登録するから、またねガイル」
そう言うと軽くガイルに、手を振って
「さっさと宿屋を探しに行くわよ」
と、俺に言うとズカズカと出入り口にウリシュクは向かって行った。
後を追おうとする俺に
「ウリシュクさんを怖がったり、とっつきにくいと言う冒険者も居るが、あの人は根はとても優しくて温かい方なんだ。あの人をどうか見捨てないでくれよ少年!」
と、さっきとはうって変わって真剣な表情と口調でガイルは俺に言った。
「ああ、分かった。まかせてくれ」
「まあ、あの人は物理的には、TOP級の冒険者だ。どちらかと言うと、お前が見捨てられぬ様に気をつけるって所だろうがな!」
ガハハハと俺の肩を強めに叩いて俺を送り出した。
「たく、俺があいつを助けたんだっての!」
と、言って俺がギルドのドアから出ようとすると
「面白い冗談だ!男はそれぐらい負けん気が無いといかん!ガンバレ!足を引っ張っても恥じゃないぞ!!」
と、またガハハとより一層の大声を出して送り出された。
どうやら俺がウリシュクの弟子くらいの立場だと勘違いしてるっぽい。
まぁあいつのギルドの評価を聞いていると、それもうなずける。
高レベルの冒険者の仲間が、それ以上の実力者だとか普通思わないのだろう。
ましてやシグレアキラの見た目は14才、少年、生意気そうなガキだ。
仕方の無い事だ。
俺がガイルの立場だったなら普通にそう思う。
外に出るとウリシュクが俺を見つけ
「遅い!ほらさっさと宿屋に行くわよ!」
そう言ってウリシュクは、俺の腕を掴むとグイグイと街を先導していった。
「ガハハハ!威勢の良いガキだな!あのウリシュクさんが仲間にしてるだけあって元気が良いな!」
ガイルがギルドのロビーに響く様な大きな声で、またガハハと笑った。
「相変わらず大きな声ねガイル」
「お これは副マスター!珍しいですな、こちらに顔を出されるなんて!」
と、言ってガイルは、またまたガハハと笑う。
「ウリシュクは帰った?ちょっとウリシュクの依頼を手続きするから、こっちに来たんだけど」
「お!調度、今帰られた所ですぞ!今ならまだ間に合いますよ?呼び戻しますかい?」
「いえ書類の手続きはウリシュクが確認したりする所は、もう終わってるから大丈夫よ。ちょっと別れの挨拶したかっただけ」
「なる程!了解しましたぞ!!」
そう言うとガハハと笑うガイル。
「おいおい!リットさんが、このフロアーに来るなんて久しぶりだぞ!?」
「な なんだろう?何か重要な案件でもあったのかな!?」
「しかし相変わらず、お美しい!本当、俺ギルド職員になれて幸せだ!!」
などとギルド職員が、騒ぎ出す。
「お おいおいあれは、リットさんじゃねぇか?」
「お おう珍しいな、こっちのフロアーに顔を出すなんて!」
「きれい!さすがエルフね!う うらやましいわ!!」
フロアーにたむろしていた冒険者まで騒ぎ出した。
「はぁ…しょうが無いわね、私は応接室に居るから役職連れて後で来る様に、みんなに言ってねガイル」
「ほう!もしやそれはウリシュクさんがらみの件ですかな?」
「ええ、察しの通りよ。例の依頼、ウリシュクが受けてくれたから」
「!?な なんですと!あの依頼!?そ そうですか!確かに金級のウリシュクさんなら大丈夫…いやウリシュクさんで、なければ受けるに値しませんな!いやはやしかし、あの様な依頼良くウリシュクさんが受けてくれましたな!!」
「そうよね、私も無理かと思ってたんだけどさ、同行してた男の子の登録を条件にするって言ったら二つ返事くらいで受領してくれたのよ」
「おお!それは、さき程その少年から直接聞きましたぞ!」
「あら、もう会ってたのね?」
「はい!感じの良い少年でしたぞ!恐らく弟子なんでしょうな!フフ、ウリシュクさんも弟子を取る気に遂になられた様で、これはめでたいですな!!」
「あら、あの子ウリシュクの弟子って言ってたの?」
「いえ、本人からはそう聞いていませんが、きっとそうなんでしょう!でなければ、ウリシュクさん程の実力者が人間の子供を同行など不自然極まりませんぞ?」
と、言ってガハハと笑うガイル。
「だよね普通そう思うわよね…」
リットは適当にガイルに、うなずいて応接室に向かった。
あの子、シグレアキラって言ったっけ…
リットは先程書かせた二人の契約書を書類の束から取り出した。
シグレアキラ、14才、人間…確かに見た目は、少し変わった服装をしていたが、見ない服装と言う程、珍しい訳でもない。
見た事の無い機器を身に着けていたが、きっと魔道具のたぐいだろう。(腕時計の事)
ギルドの魔力の扉を開けて、入って来れたと言う事は、恐らく銀級位の魔力量はありそうだ。
魔法使いのウリシュクの弟子と言っても不思議では無い。
しかしウリシュクの話では、彼と彼らの仲間が、あの魔王と恐れられていた深淵の森の王、アークデーモンを倒したと言う事だ。
多分、後の二人が実力者で、シグレアキラは本人の言う通りサポートだったのだろう。
それでもいきなり銅級を通り越して、銀級として登録と言う事に、なったとしても前代未聞の事だ。100年このギルドに、勤めているリットにしても聞いた事が無い。
「一体、何者なの…この子…」
ウリシュクに対しても友達の様に接していたしウリシュクも同様な態度だった。
普通、師弟関係があれば、あの様な態度には、お互いなる物では無い。
同等の立場…ならあの子もウリシュク程の実力者で金級の冒険者!?
だとしたら、これはアマランの街、始まって以来の事になる。
いやもしも冒険者登録、初の少年が、いきなり金級に登録なんて事になれば、これは国家級の事案だ。
「はは…そんな馬鹿な…」
そう考えながらも、リットは自分の考えに失笑する。
「どうあれ強い冒険者が、このアマランのギルドに登録をしてくれる事はギルド的にも相当な利益になるわ。本当にシグレ君がそれ程の腕を持っているなら、もしかしたら、あの事案にも対処してくれるんじゃ…」
そうしたら、きっとギルマスだって安心出来るに決まってる…
「フフ…でも、そんなに世の中うまくいくとは思えないわ…ちょっと私、楽観的に、なっちゃってるな…」
自分の希望的観測の思考に少し反省をしながら、リットは応接室に入り、この依頼の事務作業に入った。
「何にしても、こんな重大な案件の事務処理は、3日は徹夜を覚悟しないとダメかもね」
そう言って、ため息をはいた、その顔だが友人の少ないウリシュクに仲間が出来た事に、素直にリットは喜び、その顔には笑顔が浮かんでいた。
次回は4月14日(火曜日)0時に更新です!
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