第34話
【位置】テラ・オリエナ帰還/宇宙港→議会棟→制御センター
【状況】侵略停止は歓迎されるが“敵データ救出”で世論が爆発/所長が責任を引き受ける
帰ってきた空は、青かった。
懐かしいのに、前より怖い。
港には人がいる。
拍手もある。
歓声もある。
でも――前より尖っている。
「侵略は止まった!」
「英雄だ!」
すぐに別の声が混じる。
「でも敵を連れて帰ったって本当か?」
「敵のデータを救った? ふざけるな」
「危険だ!」
ありがとう、でも怖い。
その感情が、今度は大きすぎた。
議会は荒れた。
反対派が叫ぶ。
「敵を救うなど裏切りだ!」
「防衛艦が外へ出ただけでも危ういのに、さらに敵を抱えた! 正気か!」
賛成派も叫ぶ。
「侵略を止めるために必要だった!」
「個を救ったのは正しい!」
言葉が飛び交う。
俺は立って、息を吸う。
「俺は、消さないって決めた」
「消せば楽だった」
「でも――それは俺たちの勝ち方じゃない」
ざわめきが広がる。
誰かが吐き捨てる。
「若い」
またその二文字。
でも、もう折れない。
「若いから言うんじゃない」
「エリュシオンで、奪われる怖さを知った」
「だから、奪う側にならない」
沈黙が落ちる。
完璧に納得されることはない。
それでも――聞かれた。
所長が立つ。
「責任は私が取ります」
議会がざわつく。
「仮収容データは制御センターで管理。隔離。監視します。メティスの権限は制限下で維持し、ログは全て記録」
いつもの冷たさ。
でも今日は、その冷たさが盾だった。
そして、少しだけ間。
「この判断が誤りだった場合、私が全ての処分を受けます」
空気が凍る。
艦長の声が通信に乗る。
「……背負ったな」
所長は言い返さない。
短く頷くだけ。
不器用な大人たち。
それでも守る。
『ハルト。あなたは、守りました』
「いいや。まだ終わってない」
『……はい』
一瞬だけ、代表の声が混じる。
『私たちも、守りたい』
敵だったはずの声が言う。
それが、次への橋になる。




