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ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【最終章】:救う器
33/35

第33話

【位置】帰投航路(本国外縁→帝国支配宙域外)/アイギス先導/ヘルメス随伴

【状況】仮収容データ安定化/代表窓のみ対話可/未分類領域は隔離



 帰り道の宇宙は、少しだけ広かった。

 でも、胸の中は狭い。

メティスの中に――声が増えたからだ。


『仮収容データ、安定化処理を開始』

『収容層は隔離。航法核は固定。私は私のままです』

「無理してないか」

『無理、の定義が曖昧です』

「……お前な」


 少し間を置いて、続く。


『負荷はあります』

『しかし、耐えられます』


 言い方が強い。

 強がりじゃなく、決意だ。

 救済派の彼女が窓を見ていた。


「ねえ……私たち、帰れるの?」

「帰れる。帰る場所があるなら」


 彼女が笑う。


「あるよ。……だから、帰りたい」


 その言葉が胸に刺さった。

 帰れる場所があるありがたさを、俺は知っている。

 代表の声が、短く混じる。


『ハルト』

「何だ」

『……私たちの中に、知らない“形”がある』

「未分類領域のことか」

『はい。命令の形をしている。でも、私たちの言語じゃない。……怖い』


 代表が“怖い”と言った。

 それだけで、帝国の壊れ方が分かる。

 メティスが言う。


『未分類領域は隔離します。ですが、完全な無害化は不可能です』

「つまり?」

『続きがあります』


 淡々とした答えなのに、妙に現実的だった。


「そうだな」

「終わったのに、終わってない」

『あなたが望んだ形です』

「……その後を含み、だもんな」

『はい』


 その『はい』が、少しだけ温かい。



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