第32話
【位置】本国中枢・核/アイギス外付け冷却維持/ヘルメス防衛継続
【状況】統合命令が途切れる/侵略更新が停止/回収部隊の活動が鈍化
核の海が、静かになった。
命令が消えたわけじゃない。
ただ、“号令”だけが途切れた。
統合命令が薄れる。
更新命令が切れる。
『侵略更新命令、停止を確認』
その一言で、胸の奥が熱くなる。
「止まった……?」
『はい。発信源が遮断されました』
救済派の彼女が膝をつきそうになり、手すりを掴む。
「……終わったの?」
『終わりました』
少しだけ間。
『少なくとも、“今この瞬間”の回収は止まりました』
言い方が現実的で、優しかった。
回収部隊が、動きを止めた。
さっきまで命令だけで進んでいた影が、立ち尽くす。
人形みたいに。
通信が入る。
艦長の声。
「撤収だ。盾はもう十分やった」
「了解」
警告音が、やっと静かになる。
救済派の彼女が小さく言う。
「……ありがとう」
それは命令じゃない。
会話だった。
代表の声が混じる。
『……ありがとう。私たちは、まだ“個”でいられます』
「個でいろ。それが、生だろ」
『……はい』
短い肯定が、妙に重い。
けれど安心は続かない。
『未分類領域が残っています』
『命令は止まりましたが、“種”が残った』
種。別の何かの影。
「持ち帰る」
『持ち帰ります。あなたの星へ』
盾が動き出す。
守ったのは星じゃない。
――生だ。




