第27話
【位置】ヴォルザード本国外縁宙域/巨大構造物(本星中枢)を遠望/アイギス減速
【状況】迎撃が途切れる/通信が“静かすぎる”/救済派の案内で侵入口へ
迎撃が、途切れた。
嘘みたいに。
光条が消えた瞬間、宇宙が広く感じた。
でも――安心はできない。
静かすぎるからだ。
『通信、無音域』
メティスが言う。
「無音?」
『生活音がありません。民間通信がない。救難信号もない』
救難信号がない世界。
それは“平和”じゃない。
“沈黙”だ。
救済派の彼女が、震える声で言った。
「……ここが本国外縁」
「本国中枢は、星の中にある」
「星の中?」
彼女は頷く。
「昔の都市は……もう外にない。外は、殻」
殻。
その言葉の意味が分かり始める。
前方に、巨大な影が見えた。
惑星。
でも、普通の惑星じゃない。
表面に都市の光がない。
海の青もない。
あるのは――冷却のような筋と、人工的な格子。
『……本星表層、巨大冷却ネットワーク』
メティスが言う。
『内部に熱源があります。膨大です』
熱源。
サーバーの熱。
俺の背中が冷える。
「中に、いるんだな」
救済派の彼女は、低く言った。
「いる。……眠ってる」
「眠ってる?」
「私たちは、眠ってる」
彼女は胸の前で指を握りしめる。
「目覚めると、更新が来る」
「更新が来ると、個が消える」
「だから、眠るしかない」
生きるために眠る。
それは生なのか。
俺は息を吸った。
『ハルト』
メティスが呼ぶ。
「何」
『あなたの心拍が、上がっています』
「今それ言う?」
『……言うべきです』
メティスの声は、揺れていた。
『ここは、あなたの知っている“戦場”ではありません』
「分かってる」
俺は言う。
「だから、怖い」
救済派の彼女が言った。
「侵入口がある」
「救済派だけが知ってる。……でも、強硬派も知ってる」
「だから、急いで」
艦長が短く言う。
『アイギス、侵入口へ。盾を前へ』
盾が、闇の惑星へ向かう。
眠る都市へ。
サーバー海へ。




