第26話
【位置】帝国中枢航路・狭窄宙域/アイギス前方盾展開/ヘルメス先行偵察
【状況】強硬派が迎撃開始/多次元同時演算射撃が“帝国規模”で強化/歪曲濃度:高
狭い航路だった。
宇宙なのに、狭い。
通信が間引かれ、灯りが少なく、逃げ道がない。
まるで、最初から“通す相手”を選んでいるみたいだった。
『航路両側に、重力干渉の痕跡』
メティスが言う。
『罠の可能性が高い』
「来るな」
俺が言った瞬間、来た。
光条。
ただの砲撃じゃない。
置かれた弾丸。
逃げ道に、先回りして待っている線。
『多次元同時演算射撃――複数同時展開』
メティスの声が速い。
「旗艦戦のやつが、また!?」
『違います』
『規模が違う。……これは“艦”の射撃ではない』
「じゃあ何だよ」
『航路自体が、射撃装置です』
背中が冷える。
航路が武器。
宇宙そのものが檻。
艦長の声が入った。
『アイギス、前へ。盾を固定。逃げるな』
「逃げない!」
俺は叫んで、ヘルメスを前に出す。
光条が置かれる。
右。
左。
上。
下。
完璧すぎる。
避けた瞬間に次が来る。
避けなければ、その場で詰む。
『ハルト。合理的な回避は封殺されます』
メティスが言う。
「分かってる!」
俺は操縦桿を握り潰す。
理屈を捨てる。
――デタラメ。
ヘルメスが跳ねる。
直線じゃない。円でもない。
“間”を飛ぶ。
光条がコクピットの外壁を掠めた。
警告音が短く鳴る。
でも、生きてる。
『回避、成立。ですが――』
メティスが続ける。
『この射撃は“学習”が速い。あなたのデタラメも、いずれパターン化されます』
「じゃあ、今のうちに抜ける」
『抜けるためには――』
メティスが一拍置いて言う。
『盾が必要です』
アイギスが前へ出た。
装甲の段差が光を受けて、鈍く反射する。
そして――盾が受ける。
ズゥゥゥゥン……!
光条がフィールドにぶつかり、空間が軋む。
『フィールド出力、低下。だが維持可能』
艦橋の報告。
艦長の声。
『少年。矛は“穴”を探せ。航路の射撃には必ず制御点がある』
制御点。
確かに。
どんな檻も、鍵がないと閉まらない。
『解析開始』
メティスが言う。
『……歪曲屈折率、異常上昇。赤点の精度が揺れます』
「本体が見えない?」
『違う』
喉が鳴る。
「分散中枢……?」
『可能性が高いです。強硬派は航路を、複数の制御点で同時運用しています』
光条がまた増える。
凍った光が、航路を埋める。
「メティス! 鍵を見つけろ!」
『見つけます』
冷たい声のまま、熱がある。
『……近いです。本国中枢が』
アイギスが受ける。
ヘルメスが走る。
盾が折れる前に――
檻の鍵を奪う。




