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ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【第5章】:眠る帝国
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第26話

【位置】帝国中枢航路・狭窄宙域/アイギス前方盾展開/ヘルメス先行偵察

【状況】強硬派が迎撃開始/多次元同時演算射撃が“帝国規模”で強化/歪曲濃度:高



 狭い航路だった。

 宇宙なのに、狭い。

 通信が間引かれ、灯りが少なく、逃げ道がない。

 まるで、最初から“通す相手”を選んでいるみたいだった。


『航路両側に、重力干渉の痕跡』


 メティスが言う。


『罠の可能性が高い』

「来るな」


 俺が言った瞬間、来た。

 光条。

 ただの砲撃じゃない。

 置かれた弾丸。

 逃げ道に、先回りして待っている線。


『多次元同時演算射撃――複数同時展開』


 メティスの声が速い。


「旗艦戦のやつが、また!?」

『違います』

『規模が違う。……これは“艦”の射撃ではない』

「じゃあ何だよ」

『航路自体が、射撃装置です』


 背中が冷える。

 航路が武器。

 宇宙そのものが檻。

 艦長の声が入った。


『アイギス、前へ。盾を固定。逃げるな』

「逃げない!」


 俺は叫んで、ヘルメスを前に出す。

 光条が置かれる。

 右。

 左。

 上。

 下。

 完璧すぎる。

 避けた瞬間に次が来る。

 避けなければ、その場で詰む。


『ハルト。合理的な回避は封殺されます』


 メティスが言う。


「分かってる!」


 俺は操縦桿を握り潰す。

 理屈を捨てる。


 ――デタラメ。


 ヘルメスが跳ねる。

 直線じゃない。円でもない。

 “間”を飛ぶ。

 光条がコクピットの外壁を掠めた。

 警告音が短く鳴る。

 でも、生きてる。


『回避、成立。ですが――』


 メティスが続ける。


『この射撃は“学習”が速い。あなたのデタラメも、いずれパターン化されます』

「じゃあ、今のうちに抜ける」

『抜けるためには――』


 メティスが一拍置いて言う。


『盾が必要です』


 アイギスが前へ出た。

 装甲の段差が光を受けて、鈍く反射する。

 そして――盾が受ける。


 ズゥゥゥゥン……!


 光条がフィールドにぶつかり、空間が軋む。


『フィールド出力、低下。だが維持可能』


 艦橋の報告。

 艦長の声。


『少年。矛は“穴”を探せ。航路の射撃には必ず制御点がある』


 制御点。

 確かに。

 どんな檻も、鍵がないと閉まらない。


『解析開始』


 メティスが言う。


『……歪曲屈折率、異常上昇。赤点の精度が揺れます』

「本体が見えない?」

『違う』


 喉が鳴る。


「分散中枢……?」

『可能性が高いです。強硬派は航路を、複数の制御点で同時運用しています』


 光条がまた増える。

 凍った光が、航路を埋める。


「メティス! 鍵を見つけろ!」

『見つけます』


 冷たい声のまま、熱がある。


『……近いです。本国中枢が』


 アイギスが受ける。

 ヘルメスが走る。

 盾が折れる前に――

 檻の鍵を奪う。



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