表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【第5章】:眠る帝国
25/35

第25話

【位置】逃走ルート(冷却塔→外縁廃棄区画)/ヘルメス回収ポイント/アイギス迎撃準備

【状況】追跡者=“回収”部隊/ログに外部混入の確証が出始める



 廃棄区画は、臭かった。

 金属。

 焦げ。

 古い冷却液。

 でもその臭いは、安心でもあった。

 人が来ない場所だから。


『追跡、接近。……複数』


 メティスの声が速い。


「どんな奴らだ」

『軍ではありません。警察でもありません。……“回収”専用の部隊。通信が短い。命令だけで動いています』


 命令だけ。

 会話がない。

 俺の背中が冷える。

 彼女が息を切らしながら言った。


「来る……!」

「落ち着け。ここから出る」

『回収ポイント、十秒』


 メティスが言う。

 俺は頷く。


「走れ!」


 ヘルメスの小型艇が影から出る。

こっちを待ってたみたいに、静かに。

 俺たちが乗り込む瞬間――

 背後で、足音が止まった。

 止まった、というより。

 “同時に止まった”。

 ぞわっとする。

 振り向くと、そこにいた。

 黒い装束。

 顔が見えない。

 でも――視線だけが刺さる。

 彼らは喋らない。

 ただ端末が光る。

 同期命令。

 更新。

 回収。


『ハルト、危険。距離が近い』

「分かってる!」


 俺は彼女を押し込んで、ハッチを閉めた。

 その瞬間。

 黒い装束の一人が、無言で手を伸ばした。

 触れられたら終わる。

 そう直感が叫ぶ。


『加速、今』


 メティスの声。

 艇が跳ねた。

 ――間一髪。

 逃げ切ったはずなのに、胸が落ち着かない。

 彼女が震える声で言った。


「ごめん……私、巻き込んだ……」

「謝るな」


 俺は言った。


「巻き込んだのは、帝国だ」


 彼女は顔を上げる。


「……あなた、怖くないの?」

「怖い」


 俺は即答した。


「でも、怖いから行く」


 彼女の目が揺れる。

 救われた目だ。

 アイギスへ戻ると、艦長が待っていた。


「ハルト。拾ったか」

「拾った。……救済派だ」


 艦長は短く頷く。


「そして、帝国の割れも拾った」


 俺は言う。


「本国中枢は壊れかけてる。だから侵略してる。それと――」


 俺は息を吸う。


「侵略命令に、外部の混入があるかもしれない」


 艦長の目が鋭くなる。


「外部?」

「帝国のものじゃない命令が混ざってるって」


 艦長は一拍置いて言った。


「……厄介だ」

「俺たちの敵は、帝国だけじゃないかもしれない」


 その言葉が、続編の影になる。

 メティスが言った。


『解析します』

『回収部隊の同期命令に、“未分類領域”がありました』

「未分類?」

『ヴォルザードの言語規格に一致しません』

『……しかし、命令の形は“更新”に似ている』

「誰の命令だよ」


 沈黙。

 そしてメティスが言う。


『分かりません』

『ですが――本国中枢へ行けば、分かります』


 俺は頷く。


「行こう」


 救済派の彼女が、静かに言った。


「……私たちを、終わらせて」


 俺は答える。


「終わらせる」


 終わらせるために。

 そして――次が来ても折れないために。

 アイギスが、闇へ進む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ