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ハルトⅡ -眠る帝国と、避難船メティス-  作者: ユウギリ
【第4章】:許されない出航
22/35

第22話

【位置】航路:外縁宙域→中間宙域/アイギス前方展開/ヘルメス偵察

【状況】敵支配宙域へ侵入/民間の救難信号/“帝国の現実”が見え始める



 宇宙は広い。

 でも、支配されると狭い。

 航路に入った瞬間、空気が変わった気がした。

 照明が少ない。

 通信が少ない。

 “生活の音”がない。


『この宙域は、通信が間引かれています』


 メティスが言う。


「帝国の支配下か」

『可能性が高い』


 アイギスが前方に出る。

 盾が、暗い海を切る。

 艦長の声。


『不用意に撃つな。ここから先は、戦場ではなく“生活圏”かもしれん』

生活圏。


 その言葉が重い。

 そのとき。

 小さな信号が入った。

 プツ……プツ……と途切れる、弱い音。


『救難信号、検知』


 メティスが言う。


『発信源、近距離。……民間規格』

「民間?」


 俺は迷う。

 止まれば遅れる。

 遅れれば期限が削れる。

 でも――。

 見捨てたら、何のために来たんだ。

 艦長が先に言った。


『拾う』


 短い命令。

 盾は迷わない。

 ヘルメスが前へ出る。

 暗い宙域に、壊れかけの船影が浮いていた。

 小さい。

 輸送艇だ。

 外壁に、帝国の刻印。

 でも中は――空っぽじゃない。

 人がいる。


『生命反応、複数。ですが――脈拍が弱い』


 メティスの声が硬い。


「……助ける」


 俺は言う。


『了解。最短接近ルートを提示します』


 救難艇に近づいた瞬間、通信が入った。


『……助けて』


 声が、震えていた。


『食料がない』

『徴発で全部取られた』

『逃げたら、罰が来る』


 俺の背中が冷える。

 徴発。

 罰。

 帝国の現実。

 艦長が低い声で言う。


『……だから侵略するのか』


 誰に言ったのか分からない。

 自分に言ったのかもしれない。

 救出が終わったあと。

 俺はコクピットで、手を握りしめた。


「メティス」

『はい』

「ヴォルザードって……何なんだろうな」


 沈黙。

 そしてメティスが言う。


『情報が足りません』

『ですが、ここに“生活”がある以上、帝国は単純な悪ではありません』

「……分かってる」


 分かってる。

 でも、分かりたくない。

 戦う相手が、ただの怪物じゃないと。


『ハルト』


 メティスが呼ぶ。


「何」

『あなたは、選び続けてください』

「……ああ」


 救難信号は小さい。

 でも、その小ささが――この旅の意味を変えていく。



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