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その48

◇◇◇◇◇◇ その48


 健一と涼子はなかなか考えをまとめることができなかった。そこで、二人は休みを取って、甲府にある武田信玄の資料館を見学に行った。


 信玄についての詳しい歴史や様々な出来事の由来が細かく丁寧に説明されていた。資料館の出口には、売店が設置されていて、けっこうな種類の信玄ゆかりのおみやげが所狭しと並んでいる。


「へっへー、買っちゃおっかな。」

 涼子は獲物を見つけた猟犬のようにお土産に突進した。そんなうれしそうな涼子の様子を久しぶりに見た健一もぶらぶらと店内を見学する。


「ねえねえ、これなに。」

「これは甲州印伝だよ。けっこう有名なんだよ。」


 涼子が指さしたのは甲州印伝の財布である。鹿革に漆で模様を付けた甲州の特産品である。この印伝にはとんぼ柄が多い。とんぼは前進しかできないために勝虫として縁起が良いとされ、採用されたようである、


「ふーん、そうなんだ、げっ、けけっこう高いね。」

 値段の高さに涼子は驚いたようであるが、印伝に何か引かれるものがあるらしく説明用パネルを熱心に読んでいる。やがてあるパネルの前で涼子は釘付けになった。


「ねえねえ、健一さん、ちょっとこれ見て。」

 涼子が指さしたのは、とんぼ柄である。


「うん、このとんぼがどうした。」

「ねえ、このとんぼ柄、静奈が私のノートに落書きしていた柄にそっくりなの。私、その柄がけっこう気にいっていたから、ほら、シールにしてスマホにも貼っているし、純一が保育園に入るときにお印として使ってるんだよね。間違えるはずがないよ。」


 どれどれと健一が顔を寄せてパネルを見た。パネルには涼子のスマホシールと同じ柄が展示されており、説明が入っている。約500年前のものらしい。


「湖衣姫(湖静姫と呼ばれたとの説もある)が好んで使った絵柄とも言われてる、って、湖静姫ってもしかして、静奈のことじゃないかしら。」


「やっぱり純一は、武田信玄の時代に飛んだんだ。しかも、女神様が純一を守ってくれたらしい。おい、良かったな、無事だったんだ。」


「うんうん、そうだね、純一、良かった。」

 甲州印伝の説明パネルの前でおいおいと泣いている夫婦は自分たちの仮説の裏付けを得て、大きな自信を持つことができたのである。



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