その39
◇◇◇◇◇◇ その39
「信長め、とうとうやりおったわい。これで予が京へ出て行くことを天下が認めたのも同じことだ。」
そういうと信玄は高らかに笑った。
比叡山に徹底的に抵抗させれば信長は必ず比叡の山を攻めると踏んだ上での、信玄の遠大な作戦が今まさに成功しつつあった。そうなればこれまでも偉大な比叡山の後援者であった信玄の出現を、京では今か今かと待ちわびることになる。
「全ての天運は武田のためにある。天朝様をお守りするために京へ出撃する。」
信玄は武田全軍を前にして采配を大きく振るった。
甲斐より全軍を進発した信玄は自身も馬上の人となり、ゆっくりと信濃へと向い、信濃の諏訪にある諏訪大社に先勝祈願をするために立ち寄った。
「勝頼どの、これが予が飛べるようになったきっかけじゃ。」
信玄以外立ち入りを禁止されている諏訪大社の奥の院の例の箱を前にして勝頼に説明した。
勝頼が言われて覗きこむと細かな明かりが点滅し、「ぶーん。」とかすかにうなっているのがわかる。箱の蓋の内側は緩やかに湾曲し、その中心から細い棒が伸びている。
「これと同じような格好の物は元の世界の私の家にもありました。父の話しでは人が作った宇宙を回っている星から電波を受信し、テレビに絵を映すためのあんてなにそっくりです。」
信玄には勝頼の話しは半分も理解出来なかったが、この箱は自然の物ではなくて人工的に何者かが作ったことだけはわかった。
「もうしばらくこいつに役にたってもらわなくてはなるまい。」
戦勝祈願を済ませた信玄は信州伊那谷を南下し、駒場より三河へ進入するコースを選んだ。自身は諏訪大社を本陣とし、影武者を使いながら全軍の指揮を滞りなく進めている。
「影武者がたびたび本物と入れ代わっていることがわかれば家康もびっくりするであろうよ。」
信玄は諏訪大社を基地として前線に飛びながら指揮している。




