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その22

◇◇◇◇◇◇ その22


 晴信が今まで深志を攻略しなかったのは情報不足のためであった。しかし、今は勘助が的確な敵の情勢を把握してくれるので踏み切ったのであった。

「勘助、小笠原はどちらへ来るのだ。」

 問われた勘助は一瞬躊躇した。もし、自分が嘘の報告をすれば武田はここで壊滅する。


「勝弦が主力のように見せかけていますが、間違いなく塩嶺でございます。」

勘助は告げた。

「よし、武田も主力を塩嶺に結集し、小笠原を破る。勝弦はおとりだ。」

 一言も疑うことなく自分を信じてくれた晴信に対して勘助は恥ずかしい思い感じた。と同時に晴信のすばらしさを改めて実感したのである。


 小笠原との先陣争いは勘助の情報通りであった。晴信はわずかに早く峠を占拠し、兵を隠した。そして一番乗りと到着した兵をあっというまに討ち果たしたのである。まさに情報が戦を制した瞬間であった。


 そのころ北条は諏訪へ出て空になった甲斐を制圧するべく軍を準備していた。忍びを放ち、北条が攻め込むといううわさを流すと共に甲斐の情勢を探った。だが、晴信は甲斐にいるというのである。

「あの見事な塩嶺での戦は間違いなく晴信の采配でございます。」

忍びの一人は報告した。だが、晴信が甲斐にいるというのも信憑性が高いのである。

「さては影武者か。」

だが、どちらが本物かわからない以上攻撃は不可能である。


「はっはっは。うまくいったな。」

 晴信は居室で静と遅れて戻った勘助に笑顔を見せた。攻撃終了と同時に晴信は静と「飛んだ」のである。初めての実戦利用であった。失敗すれば武田の将来はない。

「月の位置で飛び始めの場所が変わるのを見つけたのは静の手柄じゃ。」


 最初は満月の夜にしか飛べないと思っていたが、月が諏訪湖の湖面に写る場所へ移動すればいつでも飛べるのではないかと静が晴信に進言したのである。そこで勘助に船を用意させ、月の映る場所で静を抱きしめたのである。その場所は諏訪大社の本宮と秋宮を結ぶ線上にある。


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