6.逃げるも恥とはならない。逃げるより恥になることはある
どんな格好でも恥ずかしくない!
キラキラとした光に、俺は包まれる。
光りに包まれた体のシルエットが一層輝き、服がドレスに変わる。
フリフリのスカート、長く伸びた桃色の髪が渦巻き、光のリボンがそれを結ぶ。
ツインテール、フリフリ、へそ出しルックの姿は、不本意ながら現状最強の戦装束である。
「ピピラ・ペポラ・プゥ!」
全身が光に包まれ、力が滾る。
「グオオ!」
「負けない!」
老龍の突撃を、正面から受け止める。
がしゃん!と衝突音。ダメージを受けたのは、老龍の方だった。
「グオオ!?」
「喰らえっ!」
金色のステッキを、折れた角が痛々しい脳天に振り下ろす。
「ガァッ!」
「まだまだ!」
殴打、殴打、殴打。
「グアアアアア!」
一発、二発目が命中。
老龍は後方に跳び、三発目をかわした。
「ウオオオ……!」
鱗に覆われた、長い喉が膨らむ。
キシッ、と歯の鳴る音がした。
火炎だ。
「ピピラ・パルマ!」
掌の形の障壁が、火炎を受け止め、散らす。
「パルマ・ピタン!」
光の掌はそのまま、老龍を叩き、消滅。
「グアアアアア!」
老龍がよろめく。
「今だ!ピピラ・プル・プレイザー!」
狙いを定め、叫ぶ。
キラキラ、シャラシャラという音と共に、太い光線が龍の胸に大穴を穿った。
「グァ………」
老龍の巨体が、糸の切れた人形のように倒れ伏す。
「勝った……」
危なかった。
もしこの力がなければ。あるいは少しでもためらっていれば。
床に倒れていたのは、間違いなく俺達だっただろう。
俺、達。
「あっ」
フィグのことを思い出し、振り向く。
「グアアアアア……!」
キシッ、と歯の鳴る音。老龍はまだ生きていた。
振り向いたその隙を狙い、最後の一撃、火炎で俺を焼き尽くそうという算段だろう。
防御、間に合うか?いや、回避だけでも──
「フロストアロー!!」
氷の矢が頰スレスレを飛び、龍に突き刺さる。
「グ……!」
最期の火炎を撃つことなく、龍の肉体が崩壊していく。
「助かりました、フィグ」
俺の目線の先、杖を構えていたのはフィグだった。
「クレオムくん、かっこよかったよ」
フィグがキラキラした目で俺を見ている。
フリフリで、キラキラで、パヤパヤの俺を。
「すみません、忘れてください!」
「似合ってるよ、クレオム君」
「そういう問題じゃなくてですね」
「おへそかわいいね、クレオム君」
「やめてください」
光に包まれ、いつもの姿に戻る
「戻っちゃった……」
「なんで残念そうなんですか」
「また変身してね」
「その機会がないことを祈っておきます」
老龍の肉体は完全に消滅し、魔核が残る。
若い竜なら魔力の染み込んだ牙なり皮が残ることもあるが、老いているとそうもいかないらしい。
「帰りましょっか」
「うん。」
「この件はご内密に」
「もちろん。こんな力、教会とかに目をつけられたら大変だからね」
「理解が早くて助かります」
「口裏合わせは任せてね」
「お願いします」
ギルドに戻り、老龍の魔核を提出し、2層に出現したことを報告。
下層に強力な魔物が出た可能性が高いため、近々調査が入るらしい。
俺達より格上の老龍をどう俺達が倒したか、という疑問については、フィグが対応してくれた。
曰く、女神のような姿の少女が現れ、老龍を撃破したと。
嘘は言っていない。その正体が誰であるかを報告していないだけで。
「ミノタウロスに襲われたあの時も、クレオム君が助けてくれたんだね」
帰り道、フィグが俺にささやく。
「はい。得体のしれない力ですけど」
「きっとそんなに、悪いものじゃないよ。2回も私を守ってくれたし」
「そうだといいんですけど。なんにせよ、これになるべく頼らずやってかないといずれバレますね」
「そうだね、考えないとだけど……今日はとりあえず、飲みに行こうか」
まだ昼間ではあるが、俺はその提案を飲むことにした。
先の問題は、飲んで一旦忘れよう。
次回更新日は未定となります。早ければ明日。




