悪童
「ひと目見たときからなんとなく気づいてましたよ。あなたが違う世界から来た人だってのは」
裏路地、ケニスは歩きながら俺のほうを見もせずに言う。
「ということは、君も」
「ええ。日本から──2684年の日本から。」
「すごい未来人!?」
「そういうあなたは何年です?」
「2024年だけど」
「600年前──?にしては、昔の人って感じがしませんね。600年も前と言うと織田信長が天下を馳せていた頃のような気がしますが、はて」
「何か時の流れが違うのかも」
「もっと根本が違うのかもしれませんね、例えば世界線とか。何か違うところで枝分かれした世界の人なのかもしれません」
「そうなのかなあ」
よくわからん。
「情報筋によるとここらしいんですが──」
暗い路地裏の、何の変哲もない民家。髑髏の仮面がいるようには見えないが。
「ほんとにここなのか?もし違ったら……」
「その時は、よろしくお願いしますね」
嫌なこった、と言い始める前にケニスが扉を蹴り破る。判断が早すぎる。
中にいたのは数十名の、髑髏の仮面の男たち。
「何者だ!」
「侵入者だ!」
「殺せ!!」
なるほど、向こうも判断が早い。
「殺っちゃってもいいですよ、軽めの蘇生術なら覚えているので」
だからやっちゃっていいかー、とは、さすがにならない。こちとら善良な一般市民ですよ?
「オラァ!」
素手の当て身で気絶させるにとどめる。ちょっと肘が深めに入っちゃったきがする。殺ってないよな?やってないよな?
「殺ってもいいし、最悪殺られちゃってもいいですよ。鏖殺の大義名分ができますから」
どっちも嫌だよ。ふざけやがって。
十五分ほどかかって制圧に成功。手間かけさせやがって。
全員気絶している。一人も殺していない。俺は誓って殺しはやっていません。
「で、こいつら結局なんなの」
仮面を剥がれ倒れる男女は年齢もバラバラで特に共通点らしきものも見当たらない。
「そんなことも知らずにここに来たんですか?僕が悪者だったらどうするつもりだったんですか」
「お前なぁ。」
たしかにその通りではある。どうしよ。
「こいつらは[喚ぶ者]って名乗っているカルト宗教の構成員ですよ」
なんでも聖誕祭でデカめのテロを起こそうとしているらしい。
「末端は時折尻尾を出すんでこうやって叩けるんですが、なかなか本体につながる当てがなくて。とりあえず尻尾全部潰せば組織は瓦解するかなーって。あと何か手がかりがあればいいんですが」
理屈としては合っているが、とんでもなく気長である。
「なんでこんなことを?」
「母さん、聖誕祭を本当に楽しみにしてるんです。こんなぽっと出のやつらにそれをぶち壊されたくない。だからコイツたちを先にぶち壊す。それだけです」
「なるほど」
孝行息子、というわけだ。やり方は過激だが。
「と、いうわけで今後もしばらくよろしくお願いしますね」
断りづらい雰囲気の中、ケニスは俺に手を差し出した。




