44.魔王戦後
俺たちが帰還したのであったその後。調査隊により魔王の魔核が魔王城の地下に穿たれた大穴の中から見つかり、魔王城も霧散した。
俺たちが魔王を討ち、世界に平和をもたらしたのである。
褒美としてそれなりの金と地位はもらえるはず。これで食いっぱぐれることはあるまい。
「これで思い残すことはないのでござるが──拙者はいつ故郷に戻れるのでござろうか」
と、ハンゾウは心配そうに言う。
戻りたいのか。そりゃそうか。
戻る方法。そういえば聞いたこともないし、結構な人数が召喚されてきているはずなのだが、どうするのだろう。
みんな帰らずにここで人生を満喫というわけにもいかないだろうし。
リスティマなら何か知ってたりとかないかな。
「さあ……教会の図書館に行けば何かあるかもしれませんが、今は出禁になってしまっていますからね……」
リスティマはとんでもないことをさらっと言う。
「あ、いえ。普段の行いとかではなく、禁書庫に入り浸って、写本とかしてただけなんですよ?」
普段の行いじゃねーか。
「何にせよ、魔王を倒した功労者です。無下にはされないでしょう。行きます?」
「当座の目標も今のところありませんからね。いきましょうか」
町に戻り、凱旋と表彰、戦勝式などを経て二日ほど休み、さらに支度に数日かけて、俺たちは図書館のある聖都に向かうことにした。
「拙者のために、かたじけないでござるな」
「ハンゾウさんがいなければ、魔王の討伐なんて栄誉、得られませんでしたからね。せめてもの恩返しです」
乗り合いの馬車が石畳の段差でごとごと揺れる。
俺たちの他にも、数人の乗客がいる。
若い女性と、その子供。雪のような白髪の、身なりのいい老婆。そして筋骨隆々の男が一人。
そよ風がふき、雲が流れていく。
のどかである。
ヒヒーン。
馬の鳴き声が聞こえる。
ガタン、ガタン。
馬車が止まる。
「お前らぁ!降りろぉ!」
野太い声が聞こえる。
馬車を降りると、武装した汚い身なりの男たちが十数人、徒党を組んで馬車を囲んでいた。
山賊である。
「面倒なのに絡まれたな……」
相手の強さはともかく、多人数なのは結構厄介だ。
御者や馬、他の乗客をかばいながら戦うというのは、並大抵のことではない。
ハンゾウがいてもだ。
「でもまぁ、やるしかないよね」
フィグが杖に手をかける。
「おっとぉ!変な気を起こすなよ!このガキと女が死ぬぜ!」
盗賊の一人が、子連れの女の手首を掴む。
「は?」
次の瞬間、その盗賊の手が、あらぬ方向にねじ曲がっていた。




