魔王戦
「お前ら、昨日はよくもやってくれたな!おかげでうちの四天王の2人が負傷して実家に帰った!」
「実家とかあるんだ」
魔王も負傷しているが、帰るわけにもいかなかったのであろう。
「部下たちの仇、取らせてもらう!はあっ!」
魔王が立ち上がり左腕を広げる。その手にどこからともなく、巨大な宝玉が嵌まった杖が飛来し──「御免!」「させるか!」
杖を奪わんとする動きを察知した魔王が、飛び込んだハンゾウの腹に拳を叩き込む。
「があっ……」
煙がポンッ、と弾け、ハンゾウのいた場所に丸太がごろんと落ちる。
「身代わりが間に合わなければ、危ないところでござった──」
俺たちの横に戻ってきたハンゾウの息は、少し荒い。
「やることが卑怯だな、人間」
「勝ったほうが正義にござるよ。そして、気の緩みは勝ちを遠ざけるでござる」
ドゴオオオオン!!
前触れもなく突如、落ちた丸太が爆発する。
「何っ!?」
魔王の注意がこちらから逸れる。
「行くでござるよ、皆!」
「ペポラ・スピカ・ププ・ピピカ・マキシマ・パプルレイザー!!」「火炎滅狩手裏剣!」「セイクリッド・レイザー!」「バーニングランス!!」
四人の技が一つとなり、魔王に向かう。
「甘いわぁ!」
魔王は杖で、合体技をあっさりとはたき落とした。
轟音と共に、城に大穴が穿たれる。
風が吹き込み、青空が見える。
「ずいぶんと、風通しを良くしてくれたではないか」
さすが魔王。強い。正攻法ではまずかなわないほどに。
「ならば、搦手で行くでござるか」
「ですね──ペポラ・エレフ・パルマ!!」
無数の小さな掌型の光弾が魔王に襲いかかり、その目をくらます。
「効かぬ!」
魔王は杖を回転させ、全ての光弾を弾く。
「セイクリッド・レイザー!」
リスティマの放つ光弾も。
「アイスエイジ・グラビトン!」
フィグが放つ、氷山も。
「効かぬ!効かぬ!このような痴れ者に、我らの野望が打ち砕かれることなど!認めぬ!」
怒り狂う魔王には、通らない。
「ペポラ・スピカ・ププ・ピピカ・マキシマ・パプルレイザー!!」
「効かぬと言っておろう!」
「だったら効くまでやるまでです!セイクリッド・レイザー!セイクリッド・レイザー!」
「くどい!羽虫ども!もうよい、貴様ら全員、生かしては置かぬ!我が奥義にて、一撃で葬ってくれよう!ぬうぅぅ……!!!」
魔王は意識を集中し、放つ威圧感が急激に高まる。
びりびりと大気が震え、魔王の背後の空間が、ゆらぁ……と歪む。
「ハンゾウ!今だっ!」
「承知いたした!」
ハンゾウの返事と同時に、足元の地面が崩れ落ちた。
「なっ──」
魔王の表情が、歪む。俺の口の端も、歪む。
「怒り狂ってて気づいてなかったみたいだな、ハンゾウが分身だったこと、そして階下の物音に!!」
「何をしたッ!」
「ははは!簡単なことだ!!ハンゾウに地下まで続く、地獄直通の落とし穴を掘ってもらっていたのさ!」
搦手で行くと決めた瞬間、ハンゾウは分身を残し、階下全ての床を破壊し尽くし、地上にたどり着くと大穴を空けてもらっていた。城が倒壊して負傷していた魔王のことだ。さすがにこの距離から落下して無事ということはあるまい。
「貴様ら、まさか我を道連れに──」
「んなわけないだろ。帰還石、使用!」
「「「帰還石、使用!」」」
手に握り込んでいた帰還石が光り輝き、俺たちを光の粒子がつつみ始める。
「ば、バカなああああああああ!!!」
落下する魔王を尻目に、俺たちは帰還したのであった。




