42.お怒り
魔王城、二階。先遣隊として送り出された俺たちは、ちょっと困惑していた。
「一階、一匹もモンスターがいませんでしたね」
リスティマが眉をひそめる。
俺たちが一番槍を任されたのは偶然ではない。
ハンゾウが立候補し、ほかに立候補者が誰もいなかったため俺たちが務めることになった。
転移石が渡されるとはいえ、未知の場所である。
危険にわざわざ首を突っ込みたい奴は、冒険者といえどもそうそういない。
が、俺たちはちょっと事情が違う。
万一があった時、魔法少女の姿で戦うのが一番安全なのである。
そしてそれを見られるわけには行かないのである。
というわけで、人がいないところで戦い、ほどほどのところで帰還する。それが俺たちの作戦であった。
が。いないのである。戦うべき敵が。
一階はおろか、二階にも、三階にも、四階にも。
戦うべき魔物は、いない。
昨日城を取り壊してしまったことが原因だろうか。多分そうなのだろう。
建物を修復しても、魔物の復活までは追いつかなかったのであろう。
あるいは復活させてもう一度城が倒壊するのを恐れたのかも。
階段を上がる。何もいない。階段を上がる。何も。
「もうすぐ最上階でござるな」
ほどほどのところできり上げて一旦帰るつもりが、ラスボス戦である。
「帰ります?」
「身勝手で申し訳ありませぬが、拙者戦いたいでござる」
「そう言うと思ってましたよ」
俺が返すと、リスティマとフィグも頷いた。
「では、参ろうぞ」
「その前に。ピューラ・ピピラ・ペポッター!」
桃色の光に包まれ、魔法少女の姿に。
慣れてきてしまって悔しい。
重厚な扉に手を触れると、ゴゴゴ……と重苦しい地響きを上げながら開く。
奥の部屋にいたのは、真っ白な三角巾で右腕を吊った人型の魔物だった。
荘厳な雰囲気の黒い衣を纏い、頭の両端に生やした立派な角は、右側が無残にも根本から折れてしまっている。右目につけた眼帯は……自前なのだろうか。それとも怪我?
魔王がこちらに目線を向け、その目に怒りが宿る。
その怒りは、身勝手な人類へのものだろうか、それとも──
「あ!!!!!お前ら!!!!!!城ぶっ壊した奴らじゃねーか!!!!!!!!何しに来やがった!!!!!!殺す!!!!」
めちゃくちゃ俺たちに対する怒りだった。
めちゃくちゃキレている。
「クレオムくん、城ぶっ壊したってなにやったの?昨日の地震ってまさかクレオムくんが」
「いきますよ、みんな!」
「行くでござる!!!」
逃げることはできない。やるしかないのだ。




