4.ダンジョンに潜るときは注意しなければならない。
注意一秒、毛蟹最高
「で、なんで翌日に仲間も募集せずダンジョンに来てるんですか」
翌朝。いつものように起こしにいくと珍しく起きていたフィグに「ダンジョン行こうよ」と誘われ、朝っぱらから、冒険者から「腰抜けの迷宮」と呼ばれているダンジョンに来た。
今いるファディマリアの街から一番近く、比較的安全なダンジョンではあるが、朝早いのもあり全く人がいない。
「とりあえず現状、どこまでいけるか知りたくて」
「こっちは戦闘力皆無のゴミですよ」
「でも、剣も新調したんでしょ」
「ええ、ミノタウロスの魔核で──よく気づきましたね。長さも造りもほぼ変わってないのに」
「まあね」
「前衛任せてもいい?」
「無理です。荷物持ちなので」
「まあまあ、そんな事言わずに。危なくなったら助けてあげるから」
フィグは何故だか楽しそうだ。
「一回だけですからね」
仕方なく剣を構え、フィグの前に出る。
我流ではあるが、素振り位は毎晩やっているのだ。さすがにダンジョンの表層に出てくる弱めのモンスターに後れを取ることはあるまい。
迷宮の中は薄暗く、足元も悪く、おまけに湿っていてかび臭い。 梅雨場ともなると、瘴気を吸って肺を痛めるものもいるという話だ。 多分カビの胞子とかだろうけど。
進んでいくと、前方に敵の姿があった。
スケルトン。ダンジョンで生き倒れた人間の骨に宿るモンスターだ。
倒すと武具と人骨を、それと認識票を落としていくため、倒したあとの予後がそれなりに厄介ではある。
しかしその骨はたいてい捜索願の出ている冒険者のものが多く、スケルトンを倒すのは文字通り骨を拾うことでもある。
道半ばで倒れた同胞を弔うという意味でも、倒しておくに越したことはないモンスターなのだ。
加えて魔核と遺骨をセットで提出することで、1日分の食費と宿代くらいは手にはいるため、出会えるとうっすらラッキーなモンスターではある。
武具も売れることはあるがたいてい錆びて使い物にならないため、置いていくことが多い。
「やるぞ……!」
前衛としての初戦闘。剣を構えて、スケルトンににじり寄る。
こちらに気づいたスケルトンも、カタカタと骨を鳴らしながら近づいてくる。
「はあっ!」
突き出した短剣の先が、スケルトンの肘を穿つ。
ビシッ、と骨ばった、というか骨の下腕に亀裂が走る。
「いける!」
勢いのまま体を捻り、胴回し蹴り。
頼りない骨格がぐらり、とバランスを崩し、がしゃん、と倒れた。
「これで!」
立ち上がろうとし、体を起こしたスケルトンの頸を落とす。
ころん、と転がった頭から、生気が失われ、動かなくなった。
スケルトンは骨に寄生する魔物であるため、倒されても寄生していた骨は残る。
「認識票と、遺骨を回収、と」
骨の身元の確認をしていると、フィグと目が合う。
「やるじゃん、わたしなしでも戦えてる」
「それほどでも」
謙遜はしてみたが、想定以上に上手く戦えた、と思う。
魔法少女になったおかげ……なはずはないか。
きっと普段の鍛錬のおかげだ。
「これならもう一層奥に行っても大丈夫そうだね」
ということで敵を倒しながらもう一層奥に進む。
下の階層にいけばいくほど、魔物は強くなる。
実際には、弱い魔物が強い魔物に追いやられて、上の層に来る。なので下の方の階でと出た強い魔物が発生すると、普段いるのより強い魔物が上層階に来て、冒険者がひどい目に遭うこともある。
本来なら2人だけで、それも即席パーティで下の階層に行くべきではない。
一つ階を落とすだけでも、その危険度が何倍にも増すからだ。
だが、油断していた。
ミノタウロスから生き残ったこと。
思ったより自分が戦えていたこと。
つまり浮かれていたわけだ。
そして浮かれていると、必ず足を救われる。
当然のことにもかかわらず、俺もフィグもそれにまだ気づいていなかった。
次回更新日は未定となります。早ければ1時間後。




