39.崩れた城の上で
「賊どもォ!もはや一刻の猶予も与えナイ!その命をモッテ、この惨劇の罪、濯いでくれようゾ!」
サメの魔族は怒り心頭だ。
他に魔王軍側に動ける奴がいるとしたら危ういが──そんな気配もない。
そもそもこいつと戦う理由もそんなにないような気もするが──魔王軍の恐ろしさは、徒党を組んだ魔物が町を襲うことであって、数の理がこちらにあるなら、圧倒的に有利なのはこちらで、被害も軽微である。
魔王がどれだけ脅威であろうと、四天王がどれだけ強大であろうと、それ一体だけで戦況が動くのであれば、相手はもうすでに動いている。
何ならクロウリーとやらが動いていたが、まああれは特別だ。
ただ強いだけなら、後で囲んで棒で叩く程度で倒せる。
なので今一番やるべきことはここからの離脱、ではあるのだが。
「このハンゾウが、お相手つかまつるでござるよ」
ハンゾウはなかなか、やる気である。
「やるっきゃないか。プリティ・ピューラ。助太刀するぜ」
この惨劇を巻き起こしたのが俺たちなら、後始末の義務も発生するよな。
「四天王ガ一人、フォルネ!お前ラを殺す者の名を、覚えてオケ!!!!」
魔物の巨大な腕が、さらに巨大な水の膜に覆われる。
「無詠唱で魔法を!?」
「魔法デハ無イ!技ダァ!!!」
水の巨腕が横薙ぎに空を切る──そこから放たれた水の玉は、稲光のような速さで俺たちを襲う。
「ペポラ・パルマ!」
水の弾丸はそれと全く同じ大きさの穴を障壁に穿ち、俺の体もろとも貫通する。
「がぁっ!?」
熱い、同時に寒い──体に風穴がいくつか空けられたような感覚──いや、本当に空いているのだろう。
じくじくと血が溢れ出す。桃色のドレスが、鮮血に染まっていく。口のなかに血が溢れ、吐き出す。
「ピューラ殿!」
「問題ない!ペポラ・プレイザ!」
放った光線を、フォルネは腕を覆う水で受け止める。
表面を軽く蒸発させるだけで、何一つ効いていない。
「万事休すってやつか──?」
「ならば、拙者が!超弩級極大手裏剣!!!」
どこからか現れた天空の星すら覆い隠さんばかりの巨大な手裏剣が、回転しながら落下する。
ガアン!!巨大な衝突音──しかし、巨大な手裏剣にヒビが入り、砕け散る。
拳を突き上げたフォルネだけが、立っていた。
「効かネェナァアアアアアアアア!!!!!」
背筋に冷たいものが走る。
考えろ、勝つ方法を。何か、攻略法を、一つでも──




