38.ロケットランチャーでもあればなあ
数日後。俺たちは古びた砦にいた。
眼前には魔王の城が、とんでもない瘴気を放っている。
魔王城激チカ徒歩十五分、走れば十分の超アクセス最高立地の砦、ゴマルス砦。
そう、この砦は魔王城攻略のために築かれた、由緒ある砦なのである。
魔王城ができる場所が毎回同じため、砦を築き、何百年、何千年にもわたって使用し続けているのだ。
「でかいなぁ」
「でかいですねえ」
目の前に見える魔王城は、半端じゃなくでかい。
東京ドーム何個分と言われてもピンと来ないし、この世界には東京ドームそのものがないが、明らかに10個分はある。高さも尋常じゃない。東京ドーム10個分はある。
「あれを攻略しろってのも無理じゃないですか?」
「時間はかかりますが、毎回数カ月程度はかかっているようですわね」と、リスティマが教えてくれる。
砦に詰めている冒険者の数はおよそ五百。いずれも選りすぐりの冒険者、という話だが表立った実績の少ない俺たちが潜り込めた時点でけっこう眉唾物だと思う。
なんでも異世界から来た人間も十数人はいるとか。
いたら仲良くなれたりするのだろうか。あんまり魅力的ではないな。
これだけ人がいたとて、例年通りなら攻略は何ヶ月がかりとなる。
気の長い話だ。
「いっそ建物ごと破壊できないでござるか」
「あの規模ですからね……できるならもう誰かがやってますよ」
「さようにござるか」
いや、待てよ。
建物を破壊するというアプローチそのものは悪くない。そして俺たちには、魔法少女と忍者という破壊兵器がある。試す価値があるかもしれない。
「やれるだけ、やってみましょう。ハンゾウさん、今日の夜お供願えます?」
「承知つかまつる」
その夜。皆が寝静まったことを確認した俺たちは、魔王城の目の前に立っていた。
ハンゾウは忍び装束。俺は当然魔法少女の姿である。
さすがに表立ってやるわけにはいかないしな。
「やはりうじゃうじゃといるでござるねえ」
近くで見ると、魔物の多さにうんざりする。
パックの中のジャコとまったく同じ密度だ。しかも全員強そう。ムキムキである。
やはり建物を攻撃し崩落させるのが吉と見た。
「どの辺に当てましょうかね」
「あそこの塔の部分の下の方に荷重が集中してるから、あそこを削れば倒壊させられる可能性が高いでござる」さすが忍者。城攻めのプロである。プロなのか?
「せーのでやりますか」
「合点承知」
杖を構え、狙いを定める。
「せーのっ!ペポラ・パルマ・マキシマ・パプル・プレシオン!!!」
「破砕爆裂巨大手裏剣!」
巨大な光り輝く両手の形をした光弾と、夜の闇を昼のごとく照らし輝く手裏剣が飛翔し、狙い通り尖塔の一つに命中する。
地響き、土煙、続いてガラガラと石が落ちるような音。
とてつもない勢いで、魔王城が崩れ、折れ、倒壊していく。
魔物たちの悲鳴なのか、雄叫びなのか声が聞こえる。が、城がすべて瓦礫の山になったころには、その声も聞こえなくなっていた。
ちょっと罪悪感があるな。
「帰るでござるか」
「やぶれかぶれで砦に殴り込みをかけようとする魔物さえいなければですね」
「多分いるでござるな。そこに、ほら」
ハンゾウが指さした先には、サメの頭を持つ、半魚人。筋骨隆々の体は、ヤスリのような鱗でびっしりと覆われている。
「貴様、貴様ら!よくも!許さん、許さんぞおおおお!」
「クソっ、俺たちはただ城を倒壊させただけなのに!」
「厳しいでござるな、やはり魔族!血も涙もないでござる!」
「今回は明らかにてめえらが悪党だろうがアアアアアアアア!!!」
サメの頭の魚人が吠える。
そうなんだろうか。そうかも。




