34.四天王って被ってね?
「君たち、すごいよ。ギガースは城一つくらいなら単騎で落とせる、Aランクの魔物だぜ。それをそんなあっさり倒されちゃ、僕も立つ瀬がないってもんだ」
声の主は、右手に開いた本を持ち、黒のスーツを着こなした、長身の男。
赤いストレートの髪を肩まで伸ばし、切れ長の目の端には紅を差し、ピアスまでつけている。ホストみたいだ。
青い肌をし、額から角が生えている──魔物か。
姿が人に似た魔物は魔力や知能が高く、非常に厄介である。具体的にはそう、そのへんの町の弱小ギルドでは対処できないほどに。
「ああ、申し遅れたね。僕は魔王ゴルテオ四天王が一人、クロウリー。君たちよりはるかに高位の存在さ。よろしくね」
四天王……なんか迷宮であった骸骨騎士と被ってるな。ややこしい。
俺たちは無言で杖を、剣を構える。魔物と話すことなど何もない。名を教えることがリスクになりうる場合もあるのだ。魔法少女名ならまあいいかもしれないが、俺だけ名乗るのも変だし……
「おや、自己紹介もしてくれないのか。じゃあ、名残惜しいけれどお別れと行こうか。」
クロウリーの本が光る。
「クロウリーが命ずる!召喚せよ、アイオーン!」
どこからともなく、パイプオルガンの荘厳な音が響き渡る。
天空に巨大な円形の魔法陣が展開され、光り輝く。
そこからぬうっ、と現れるのは、黄金に輝く機械の身体を持つ、巨体の異形。
天を衝くギガースよりも、はるかに巨大な姿。
4本の金属の脚が、石畳を抉る。
そこからつながる本体には、巨大な目を思わせるカメラのようなユニット。
巨大な三対の翼を背から生やし、その周囲には無数の剣が、浮いている。
「やれ」
剣が、剣が、剣が、雨のように俺たちに振り注ぐ。
「ペポラ・パルマー!!!!」
「セイクリッドバリアー!!!」
剣の雨は俺たちが展開したバリアを、削り、削り、削り──
「火炎滅狩手裏剣!!!」
ドォン、と爆発音とともに、アイオーンの巨体が揺らぐ。
剣の雨が、空中に躍るハンゾウに向き──突き刺さる。
「ハンゾウ!!」
針鼠のような有様になったハンゾウの姿が、ポンッと煙を立てて消える。
「変わり身の術にござる!」
「よかった!」
「油断めされるな、殿!」
「ああ!」
アイオーンの注意が一瞬、向こうに向かった。
その隙を、逃すことはない。
「ペポラ・プレイザ!」
狙うは中央のレンズ──だが、放った光線は霧散した。
「何ッ!!」
「そんな手品なんかじゃ、うちのアイオーンは、倒せないよ〜」
また剣の雨が振り注ぐ──
「バーーーーーニング!!!!!!」
フィグの放った火炎が、剣を焼き、溶かす。
「セイクリッドバリアー!」
リスティマのバリアが、溶けた剣の残骸を防ぎ、煙をあげる。
「よっしゃ、あとは本体だけだ!」
「ふうーん、なかなかやるじゃないの。」
クロウリーが本に手をかざす。
「じゃあ、第二形態といこうか」と。




