32.ニンジャナンデ
泣き止み、目を腫らした忍者は名をハンゾウと名乗った。なんでも任務中に意識を失い、気づくとダンジョンにいたらしい。
「今まで見たことのない屋敷で、心細かったでござるよ。」
どうやらガチの忍者らしい。転移者という奴だろうか。いるということすら聞いたことがないため相当珍しいのだろうが、いるということは実在しているというわけだ
「ここに来るまで、モンスターを倒しては上がり、倒しては上がり……このまま一生この塔を上り続けるのかと絶望的な気分であったでござる。」
「はは、ここは塔じゃなくて地下迷宮で――」
待て。上って?
「まさか最下層からここまで上がってきたんですか?」
「最下層がどこかはわからないでござるが、階段を二十ほど上がってきたでござるな」
最下層からである。ということは、この忍者、とんでもなく強いのでは?
害はなさそうだが、これを地上に解き放ってしまって大丈夫だろうか。
「殿と姫君がたは、出口を知っているのでござろう。案内してはいただけませぬか。忍びの身とはいえもう疲労困憊で、もう倒れそうでござって.......」
悪人には見えない彼を、見捨てるのも忍びないか。忍びだけど。
「こっちのほうです。行きましょうか」
「かたじけのうございます、殿.......」
「殿ってほど偉くないですよ。俺はクレオム、こっちがフィグとリスティマ」
「クレオム殿、では露払いは拙者にお任せくだされ。」
忍者が先行してくれる。心強いな。
「タスケテー」
唐突に表れたオメガヘッドも。
「御免!」
一刀のもとに切り伏せ。
「コンニチハー」
通路にいたオメガヘッドも。
「御免!」
一刀のもとに切り伏せる。
なんて頼もしい!
なんの苦戦もせずダンジョンから脱出。
町に戻ると、町が燃えていた。
「い、いったい何が.......?」
「やはり、来てしまったでござるか、鬼龍の里が.......」
忍者が何か言っている。
「知り合い?」
「宿敵にござる」
周囲を見渡していると、通りの端から巨大な骸骨がのそりと歩いてくる。
「人違いっぽいでござるな」
人違いなんかい。
「御免!」
骸骨は一刀のもとに切り伏せられた。
「町の人は無事なのか?」
町には、人の気配が恐ろしいほどない。争った跡もない。つまりは。
「どこかに避難したってことか?」
そうだといいが、その場合冒険者が束になってもかなわない奴がこの町に攻めてきているということになる。
俺たちも逃げるべきなのだが.......どこに逃げればいいんだろうな。
有事の際のシェルターの場所も、あるのかすら知らないぞ。




