31.それバレてからするもんじゃないって
第五階層。べらぼうに広く、魔物もでかい。
魔核がその分大きくなるので稼ぐ効率はよいが、帰れなくなると大変なのでそこそこで切り上げたいものである。
ちっちゃめの龍や大きめのトカゲを倒しながら進んでいるといると、何者かの気配を背後から感じた。
すぐに手を出してくる様子も、殺気もない。
こちらから一定の距離を取りつつもピタリとついて、離れる様子もない。
が、このまま見られっぱなしというのも癪に障る。
「クレオムくん、前に敵」
「了解です!」
ちっちゃめの龍を倒し、魔核を回収。
「そこだっ!」
振り向きざまに、魔核を気配の方にぶん投げる。
「いでっ!」
鈍い衝突音とともに、声が聞こえた。
普通に石と同じくらいの重さがある、握り拳大の魔核。
当たれば流血は避けられまい。
「今の何!!?」
フィグがびっくりしている。無理もない。
「何かに後をつけられて居たんです!居た!」
逃げられる前に、声のした方角に走る。
そこにいたのは、黒い装束──つまりあれだ、忍者の格好だ──に身をつつみ、目以外の全身を隠した不審者。
「なんだ、忍者か……」
「なるほど、忍者でしたか……ってクレオムさん。忍者って何ですか」
「忍者は忍者ですよ。メンポで素顔を隠し、スリケンを投げ、ヌンチャクとカラテで相手をなぎ倒す、それが忍者です」
「私、忍者の知識はないけど、なんか偏ってる気がする……」
忍者はこちらを睨みつけ、なにかの機会を伺っている。
攻撃か、はたまた何かの術の準備か……
「ニャー」
忍者が猫の鳴き前をする
「あの、それバレてからするもんじゃなくて。なんだ猫かとはならないんですよ」
なんなら忍者の知識のないフィグとリスティマには通じないというか、本当に急に猫の鳴き真似をしたヤバい奴になってしまう。
「わかるでござるか……」
忍者が絞り出すように言う。
「わかる、で、ござるか……これが……!」
忍者の足元に、ぽた、ぽたと水滴が垂れる。
「貴殿を主と仰いでも……よいでござろうか……!」
「なんで!!!!????」
急にどうした。
「拙者……心細かったでござる……心細かったでござるよ、殿おおおお!!!!!!!」
忍者が飛びついてきて、対応が遅れる。
そのまま抱きつかれ、押し倒される。
「殿おおおおおおお!!!」
泣いている。忍者が泣きながら抱きついてきている。どういう状況なんだ。
「クレオムくん、知り合いなの?その人」
「こんな知り合いは!いません!」
引き剥がそうとするも、妙に力が強い。後なんかいい匂いがする。
「見てないで!二人とも!引き剥がすの手伝ってください!」
はっとした二人はこちらにかけより、忍者の肩を持ち、引き剥がす。
忍者が泣き止むまで、さらに数分の時間を要した。




