30.まだ微かに
その後。
ダンジョン化の件は、屋敷の地下室がいつダンジョンになったのかがはっきりしないため責任の所在がうやむやになり、屋敷はちゃんと俺たちのものになった。
迷宮化していた地下室は、元の食料貯蔵庫に戻っていた。石造りのひんやりとした空間にはワイン棚もあり、微かに獣臭が漂っている。いつ消えるのだろうか。
兎にも角にも引っ越して、家賃を浮かそうということになり、フィグにも声をかけ、入居に二つ返事でOKしてくれた。
この世界には引っ越し屋というものがないため、ギルドに引っ越しの依頼を出し、冒険者が応じてくれれば手伝ってもらえる。幸いすぐ応募が集まり、引っ越しは数日で終わった。
広い屋敷には部屋がいくつもあり、俺とフィグとリスティマで部屋を一つずつ使っても、まだ使っていない部屋が十数個ある。
「倉庫にしましょう」
「倉庫が離れにすでにありますよ」
「すぐ使うものとか日用品をそこにしまって……」
「無理に使うことも無いんじゃないですか、まぁ……パーティメンバーを一人くらい増やして、住まわせてもいいかもしれないですね」
「増えるのでしょうか……」
「さぁ……」
破門になったリスティマと、魔物側なのではないかとうっすら疑われている俺とフィグ。
そこに入る物好きがそうそういるとも思えない。
「とりあえず募集でも出してみますか」
「そうですね」
と、ギルドに募集を出して四日ほど経ったが、問い合わせすらない。
しばらくはこのパーティで行くしかないということか。
「じゃあ久々に、稼ぎに行こうか、二人とも」
フィグからの提案で、また迷宮に潜ることになった。
調査が終わり「何もなし」という調査結果が出た、「腰抜けの迷宮」。
久々に行ってみるか、ということになった。
何もなし、というのは「原因がわからなかった」というだけで、現実問題として下の階層の魔物がちょこちょこ上の階層に出てきているため、危険極まりないそうだ。
「転移石もありますが、とにかく危険がないように、安全第一で行きましょうね」
三人で頷きあう。転移石は命には代えられないが、高いのだ。
五階層。特に苦戦することもなく来てしまった。
今のところこの迷宮は二十五階層まであり、隅々まで探索がなされているが──下層にいけば行くほど迷宮は広がっていくことが多いため、さすがにそこまで行くには熟練のパーティでも数週間かかることもあるそうだ。多分今回もそこまでは探られてないんだろうな。
つまり迷宮に起こった何かしらの異変も、四天王だかなんだかの件も、まったく解決しておらず、恐らく下の階層に何か答えがあるのだ。
気になるとかそういったことは全くもってないし、危ない橋も渡りたくないが、向こうがこっちを知っている限り、どこかでまた遭遇することはあるのだろう。嫌だなぁ。




