26.キメラは臭い
キメラたちをちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していると、やがて迷宮があると思しき地下室にたどり着いた。今もなお、のそのそとキメラが這い出してきている。
キメラと散々対峙して気がついたことなのだが、一番嫌なところとして、臭い。
まずもとになったライオンが臭い。そりゃ肉食動物。臭いに決まっている。ヤギも臭い。ヤギは草食動物だが臭い。ヤギが生まれたときからそう決まっているのだ。ヘビは臭くないが、だからなんだというのだ。
そして匂いは足し算ではなく、掛け算である。
結果として、得も言われぬ動物園と牧場と公衆便所と火薬を混ぜたような匂いが、屋敷に充満しているのだ。
倒されて塵と消えても、その匂いはしばらく残る。
なのでキメラを、一体倒しても、二体倒しても、一体分臭いし、二体ぶん臭いのだ。
「匂い消しの魔法なら任せてくださいね」
リスティマは鼻をつまみながら、玄関の外でそう言っていた。許さない。
なので一人、この臭そうな地下迷宮に立ち入らなければならないのだ。絶対に許さない。
「臭いな……なんかこう、コンクリートでも流し込んで解決できないのかな……ないのかな、コンクリートの魔法」
魔法少女が使う魔法では無さすぎるが。
「とりあえず、でかいのだけ打ち込んどくか」
床についている迷宮の扉──床についてるのも扉っていうのか?を開け、杖を構える。
「ペポラ・スピカ・ププ・ピピカ・マキシマ・パプルレイザー!!!!!」
極太のビームが地下迷宮を照らし、キメラたちの悲鳴の大合唱が聞こえた。
「もう一発!」
そう言いながら3発、4発。
迷宮が静かになったのを確認し、一旦扉を閉じた。
「さて、ちょっと休憩してと」
一息つこうとしたところ、キメラが扉を押し上げ、のっそりと地下迷宮から出てきた。
「マジで?」
「メー」
マジらしい。どうすんだよこれ。
出てきたキメラと出てこようとしていたキメラを倒し、光線をさらに数発撃ち込む。
疲れた。疲れたし疲れた。
「毒の魔法とかないかな」
効かなそうだし魔法少女の魔法では無さすぎるが。
とりあえず魔法少女の力で結界だけ張っておこう。しばらくキメラが出てこられないように。
そもそもこのキメラが湧いてる原因はなんだ?
その謎を解き明かすため入らねばならないか。この迷宮の中に。
ただ……うーん。一人だと不安。迷宮がどうなってるかわからない以上、魔力切れなどのリスクはつきまとう。
かといってフィグを巻き込むのはなんか嫌だしな。
巻き込んでいい奴……まあ一人はいるか。
数分後。
「嫌です!嫌なんですって!私地下アレルギーでー!」
「ごめんなさいね!リスティマさんだけが頼りなんでー!」
変身を解除した俺は、リスティマの首根っこを掴んで引きずり込み、迷宮に足を踏み入れたのだった。




