27.そもそも迷宮とは
「で、何なんですかこのだだっ広い地下迷宮は」
「私もここまでとは聞いてなくて……」
リスティマは申し訳なさそうにしながら、髪をいじる。
「どこかにつながる非常用の通路があって、それが迷宮になっちゃったとかなのか……何にせよ届けも出さないままなのは良くないはずですよね」
「お貴族さまだったので外聞とかを気にしたんでしょうかね……」
そもそも迷宮とは、地下にある空間が変質したものである。
海面より低く、人の居住するところより低く、なおかつ人の出入りが少ないところがいつの間にかなるもの、というのが通説らしい。
迷宮になったあとは人の出入りも、高さもあんまり関係ないが、とりあえず条件はそんなもんらしい。
迷宮になったあとの空間の広さは元の空間よりははるかに大きいが、それでも元の空間の大きさに影響されるらしい。
原因は何なのかよく分かっていないが、最奥の迷宮核というものを壊せば、迷宮はそのうち消滅するし、魔物もわかなくなる。
極論、どこかの地下にでかい穴でも掘って入り口を塞いでおけば迷宮化し、魔物が溢れ出す場合があるということだ。
そのためある程度の掘削力のある工具や武装の所持には許可やら免許が必要であるが……まあこの話はいいだろう。これからする機会もないだろうし、それが役に立つこともないのである。
つまり俺たちが迷宮に突っ込んだ理由は一つ。迷宮核をぶっ壊すためである。
「どうせ貴族様の屋敷の地下室。メイドとよろしくやるための部屋か、地下牢、いいとこ隠し通路でしょうしね。ちゃっちゃと壊して、引っ越しの準備と換気をしましょう」
元の空間が大したことがないだけあり、一層の大きさはさほどでもない。だからこそキメラが湧き出してくるのだろうが。
家一個の対価と思えば、安いもんである。
四層、五層、六層。
迷宮を奥へ、奥へと進んでいくと、ついに見つかった。
重たい扉を開けると、部屋の奥にあるのは金属光沢を持つ、人の頭ほどの大きさの黒い立方体。
迷宮核である。
「これが、そうか……」
といっても現物を見るのは初めてだ。
普段行くダンジョンはもっと深くて大きいから、そこまで行けることはないし、行けるとしても立ち入り禁止だ。
魔物から取れる魔核は魔力源となり、都市のインフラに使用されるため、迷宮が消滅すると非常に困るのである。
「さて、これがあるということはいる訳か」
天井からダァン!と土煙をあげ、何かが飛び降りる。
「ガアアアアアアッ!!!」
ヤギの頭、ライオンの頭、ライオンの頭、ヤギの頭の四つ首と、蛇の頭が先端につく、二本の尾。
ついでに背中にはコウモリの羽も付いている。
その巨体はキメラの三倍、いや、5倍か?
そう、皆さんご存知、キメラの上位種キメキメラである。
「援護、お願いしますね」
杖を構えリスティマに声をかける。
視界の端では己の桃色の髪が、ふわりと揺れる。
「もちろんです」
背後から聞こえる声が、ちょっとだけ頼もしい。




