25.事前に相談とかさぁ!
翌朝。唐突に、引っ越すことになった。
「どうです、私。すごいでしょう。褒めてもらっても、崇めてもらっても構いませんよ」
自慢げなリスティマの前には、でかい屋敷。
部屋探しをしろ、と放り出してから一日。
聖職者時代のツテを辿ってか、明らかにまともでない手段で家屋を手に入れてきてしまった。
「貰ったので、空いている部屋に住まわせてあげます。掃除だけお願いしますね」とのことで、家賃が無料になるならと飛びついてしまったが。
「本当に合法的な手段で手に入れた家なんですよね……?」
「当たり前じゃないですか。私をなんだと思っているんですか」
「破門になった人」
「それはそうですが……まぁ、交換条件?みたいなものはありますよ。手伝っていただけると非常に助かります」
「その交換条件ってのは」
「この家、地下に小さめの迷宮がありまして」
「おう」
「キメラがめっちゃ沸いてます。駆除費用とか、沸いたキメラが町に出てきちゃったりとかして醜聞が広まること考えると、ここ捨てたほうがマシらしいんで、貰ってきました」
「最悪だ!!」
幽霊ならまだマシな事故物件を押し付けられてしまった。
「ま、キメラなんて倒せばいいですし、部屋の中は良い感じだと思いますよ。内見といきましょうか」
「なんか、戦力として過剰な期待をされている気がする……」
頼られるのはうれしくはあるような、そうでもないような。
「鍵はこれで……よし、開いた」
ガチャリ、と鍵が開き、軋む音の一つもなく、スムーズに扉が開く。
華美ながら派手すぎない、上品な装飾がされた玄関にいたのは。
「ガオー」「メー」
キメラであった。
ライオンとヤギの頭を持ち、尻尾には蛇の頭。
異世界なのに何でこんな綺麗にキメラなんだ。
リスティマがバタンと扉を閉める。
「いましたね」
「いましたね、じゃなくて」
でもいましたね。
「どうします?」
「この家の所有者って?」
「私ですね」
「キメラが町に出たときの責任は?」
「全力でクレオムさんに押し付けますよ」
「やるしかないか」
「やるしかないですね」
やるしかないらしい。
「その辺に生垣とかある?」
「お花摘みですか?」
「変身するんですよ」
見られて困るのはお花摘みと一緒ではあるが。
「ピューラ・ピピラ・ペポッター!」
桃色の光に包まれ、魔法少女の姿に。
「開けますよ!」
扉が開く
「ガオ
「ピピラ・プレイザ・ザン!」
突き出した杖の先端に、光の剣が生え──キメラをそのまま貫通。物言わぬ屍へと変える。
「何匹いようが関係ねえー!!!!全員出てこいやぁー!!!!!」
「ガオー」「メー」「ニャー」「ワン」「メー」「モー」
キッチンから、浴室から、部屋から、図書室から、ありとあらゆるところから、キメラたちがのっそりと這い出してくる。次々と。次々と──
ああ、もう、どうにでもなれ。魔法の修行がてら全員塵にしてやる。
「うおおおおおお!!!」
俺は雄叫びをあげ、キメラの群れに突っ込んだ。




