24.そろそろちゃんと日常回をですね
這々の体で町に帰り着いた俺たちは、スタンピードの報告と、新たな女神──魔法少女、プリティ・エルマとやらのこと──をほとんどつつみ隠さず報告した。
オメガヘッドの魔核を売却して得られた金額はそれなりに多かった。
3人で分けても、3ヶ月くらいなら慎ましく暮らしていけるくらいの額。
まあ装備の整備とか、さすがにそろそろ買わないとまずい転移石(もちろん3人分しっかり購入する)とかを買うと、3週間くらいなら生活できるくらいにまで減るが。
何にせよ、今日と明日は休もうということになった。
死ぬような思いを──いや、ここんとこ毎回なような気もするが、した後に、また死地に赴けば、いずれ待つのは死あるのみ。それよりは休んで英気を養ったほうがいい。
「明日も起こしに来てね、クレオムくん」
フィグは平常運転だ。
「もちろんです」
「今日こそは私がベッドで寝ますからね」
リスティマも平常運転だ。
「いい加減出てってください。荷物運んだりするのは手伝いますから」
「こんな麗しき乙女が部屋にいるのを拒むのですか?正気とは思えませんね。まさかクレオムさん、殿方がお好きなのですか?」
「麗しかろうがなんだろうが、あの部屋は一人用なので、狭いんですよ」
「もっと接触して、空いた空間を増やして差し上げましょうか?」
と、リスティマが抱きついてこいと言わんばかりに腕を広げる。
「あんた聖職者でしょうが。男とベタベタしていいわけないでしょ」
と、悪魔の誘惑を振り切る。こういうのに乗るとろくなことにならない。
「残念〜、うちの宗派にそんなもんありません〜」
ムカつく。
「何にせよ、明日明後日でちゃんと部屋決めてください。さもなくば俺が出ていって、引っ越し費用を請求しますから」
「ま、まさか──この私の、美しい身体で払えと?」
「現金一括で」
「くっ……仕方ありませんね。クレオムさんにはとんでもない家を見つけて差し上げますから、覚悟してくださいね。」
「あれぇー!?なんで俺が引っ越す流れなんです!?」
どうあがいてもあの部屋から出ていくつもりがないらしい。本当に何でだ。
酒場で夕食を済ませ、家に帰る。
その前に、だ。
リスティマを先に行かせてから裏路地に入り、変身する。
「ピューラ・ピピラ・ペポッター……」
小声の掛け声でも、姿は魔法少女に変わる。
「プリンプ、ちょっと出てきてくれ」
俺の声に反応するように、どこからともなく白い兎のような使い魔が姿を現す。
「見てたよ、ピューラ」
「なら、聞きたいこともわかるよな」
「うん。あの魔法少女──エルマは、僕のあずかり知らぬ魔法少女だ」
「やっぱりか」
となると、正体不明。つまりは目的も、あの場所に現れた理由も、不明ということになる。
俺より圧倒的に強い力を持つ魔法少女。そして俺のことを、知っていた。
「いずれ立ちはだかる敵になるかもしれない。注意するんだよ」
「わかってる」
目的不明、つまり、俺たちと敵対する可能性も、ゼロではない。むしろ高いのではないか?
「プリンプ、エルマの戦い方、見てたよな」
「うん」
「俺にもできるかな」
「もちろん」
「ならちょっと、練習でもしてくるか」
まずはあの光の剣の習得だな。
あれは魔力を放つのではなく、纏わせる技のはず。
つまり魔力消費が多少なりとも少なくなる。
練習は必要そうだし、森の方にでも行こうか。
「ならこれを使うといいよ、ピューラ」
プリンプに手渡されたのは、扉の形をした鏡だった。
「お、何これ?」
「渡り鏡さ。これさえあれば、魔法の国の一画に行くことができて──」
なるほど、ワープアイテムみたいな感じなのか。ん?
「プリンプ、あのさ」
「うん、なんだい?」
「これ使えば、スタンピードから逃げ切れてたことない?」
「あっ」
プリンプが鏡の中に吸い込まれるようにきえる。
「あいつ、逃げたな!」
俺の手には渡り鏡。使い方を聞きそびれたな。
試しに鏡面をつついてみると、吸い込まれるような感じがする。
これに入ればいい感じかな?
「うわ、でもなんかけっこう気持ち悪いような、よくわかんないような──」
腕が、身体が吸い込まれる。
「ウワーッ!」
そのまま全身が吸い込まれ、鏡の向こうの空間に投げ出された。
「めっちゃ荒野やん」
たどり着いたのは荒れ果てた野原。ほぼ砂漠になっている。
「ま、いいか、色々試してみようか」
俺は新たな技をいくつか試し、帰る頃にはすっかり夜も暮れていた。
リスティマはベッドで寝ていた。
とてつもなく疲れているが、今日は床で寝なくてはなるまい。




