21.スタンピードじゃねーか!
どこかもわからない、ダンジョンの奥の方。
こうなっては手持ちの地図もあまり役には立たないため(そもそも下層に行くほど頻繁に道順が変わる)マッピングをしながら行くしかない。当然元荷物持ちの俺以外にマッピング担当などいないのである。
魔法少女兼地図担当。なんか珍妙な役回りだな。
「便利な魔法ですわね、それ」
リスティマが地図を指さす。
彼女は光の魔法が使えるため、明かり担当だ。
「あー、マッピングのことですか?まあ書くものさえあれば、勝手に道が記録されていくんで、手が空いて楽ではあります」
「ちょっと可哀想だけどね、その子」
フィグの目線の先には、真っ白な兎のような使い魔、プリンプ。この世の終わりのような顔をしている。
病因に連れて行かれる犬とかと、ちょうど同じ顔である。
「どうして」
原因はそう。本来なら紙に書かれているべきである地図が、プリンプの背中に描かれているからである。
「本当にごめんな、書くものが他になくて」
まさかこんなことになると思わず、紙の類を持ってくるのを忘れてしまっていたのだ。一生の不覚。
代わりに「白いから」という理由だけでプリンプの背中がキャンバスとして選ばれたのだ。白羽の矢が立つ、というやつだ。白だけに
「服とか、あるでしょ、人間だもの」
「俺のはほら、なっちゃったし、魔法少女に。あと女性陣に服をくれってのもさ、ちょっとな」
「うぇぇ……」
歩くたび、プリンプの背中に地図が刻まれる。
「ええん……むず痒いよぉ、こそばゆいよぉ……」
「地上に出たらちゃんと地図は消えるから、ちょっと我慢しててくれよな」
「嫌だよぉ、無理ってほどではないけど、嫌だよぉ……」
プリンプの尊い犠牲によるマッピングで、探索は今のところ順調だ。
下層だけあって魔物もだいぶ強いが、今のところ魔法少女装のパワーでなんとかなっている。
魔力が切れれば変身が解除され一気に危険が及ぶが、文字通りパワー、つまり杖で殴っていれば倒せるので消費は最小限、何ならマナポーションもある。この調子なら三日は余裕で持たせられる、はずだ。
「意外となんとかなるもんですね、ほら、階段が」
指さした先には上りの階段がそびえていた。
あと何階階段を登ればいいかはわからないが、少なくともこれまでの道よりかは安全で楽な道になるはずだ。
「帰ったら酒盛りをしようね、約束だよ、クレオムくん」
フィグが指切りげんまんのポーズをする。可愛い。
が、それは何というかこう……フラグでは。
不吉な予感を裏付けるかのように、背後から微かに地響きが聞こえた。
「なんだ?」
振り返るとそこには、無数のオメガヘッドが群れをなし、こちらに突進してくる光景があった。
「タスケテー」「ワタシガクイトメル」「タスケテー」「タバコノヒヲクレ」「タスケテー」「タスケテー」「タスケテー」「タスケテー」「オレガタスケル」「イヤココハオレガ」「イヤイヤ、ココハオレガ」「「「ドウゾドウゾ」」」
これが、あれか。スタンピードと言うやつか。
口々に、人の断末魔を真似している。なんか会話が成立しているような、していないような。




