20.スタンピードって?
オメガヘッドを倒した後も俺達は連携を研ぎ澄ませながら順調に歩みを進め、第二層を踏破。
第三層にたどり着き、そこでも魔核や宝物を手に入れ、それなりに利益を見込める状態になっていた。
魔核の買取価格にもよるだろうが、三人が数日贅沢して暮らせるくらいの額は確実だ。命あっての物種なので、体力のあるうちに帰還しておくほかあるまい。
「もうそろそろ荷物も嵩張るようになってきましたし、帰りましょうか」
「そうだね、スタンピードの注意報も出てたし」
「何でしたっけ、スタンピードって」
「下層の方にたまにある、モンスターの異常湧きだね。ここのは毎回死者が出ることで有名なんだよ」
「怖いですねー、まああるとしても下層ですし、俺たちには関係ないですね」
「そうだね、今日は酒盛りだよ、クレオムくん」
フィグも嬉しそうだ。綻んだ口元が可愛らしい。
「これだけあればしばらく余裕を持って過ごせそうです、神よ、感謝いたします……!」
「余裕ができたなら俺の部屋から出てってもらえませんかね」
「クレオムくん、女の子には優しくしないと」
優しさとかそういうのではないような気がするが。
「階段はあっちの方でしたっけ」
元来た道の方に一歩踏み出す。
カチリ、と音がした。
背筋に冷たいものが走る。
──油断した。
一度通った道だから。来た時には問題がなかったから。
ダンジョンではそれすらも時に先入観となり、冒険者たちに牙を剥く。
「フィグ、リスティマ──下がって……!」
叫んだ時には、もう遅かった。
ガコン、と床が抜ける。
俺たち三人の真下に広がるは、真っ暗な虚空。
落とし穴だ。
どこまで続いている?場合によっては──いや、場合によらなくても、落下の衝撃で死ぬ。
「ピューラ・ピピラ・ペポッター!」
変身し、魔法の力を行使するしかあるまい。
リスティマに正体が完全にバレるリスクはあるが、こんなところで死なれて寝覚めが悪くなる方がより大きいリスクだ。
桃色の光に包まれ、リボンとフリルを身にまとった俺は、黄金の杖を振るう。
「ペポラ・プワリパ!!」
フィグとリスティマに対し、重力をある程度制御できる魔法を唱える。
俺達ち三人の落下速度が、自由落下の速度から落ち葉がひらひらと落ちるくらいのスピードに緩まった。
しかし既に、結構な階層ぶん落下してしまっている。
地面に着地することはできるが、落ちた先は恐らく危険な最下層のどこかであろう。
無事に帰れる保証はない。
「無事ですか、二人とも」
「大丈夫。助けてくれたんだね、ありがとう」
「大丈夫ですわ。あ、その格好!やっぱりクレオムさんが、女神の偽物だつたんですね!教団に報告──は、まあいっか。どうせ破門の身ですし」
あっさり流された。解せぬ。




