16.対応ったって乗り込んでって殴るだけじゃん
翌朝。またもギルドに呼ばれてしまった。
初めて会うギルド長に骸骨騎士の件と女神、つまり魔法少女のことをかいつまんで話し、正体がバレないよう、俺は骸骨騎士からは逃げおおせたが、どうなったかはわからない、というふうに言っておいた。
近々、対応するため招集がかかったら是非協力してほしいとのことだった。
多分冒険者をたくさんあつめて乗り込んでって殴るのだろう。現状、どこにあいつらの拠点があるか分からないから、多分その調査待ちだろうな。
聴取が終わった頃にはもう昼だった。
今日はダンジョンに潜る気分でもないし、疲れたし、もう一眠りしようか。いや、まだリスティマが部屋で寝てるか……
昨日毛布を投げ与え、床で寝かせたはずのリスティマだったが、朝起きると普通に俺に寄りかかるようにして寝ていた。
無防備な寝顔とか、さらさらとした髪の手触りとか、体温とかにちょっとときめいてしまった自分が情けない。
ついでに言うならそのまま寝かせておいてやったのはもっと情けない。
追い出してやればよかった。
今から帰って追い出すのも大人げないし、とりあえず時間を潰そう。
小腹も空いてるし、生き延びたし、ちょっといいものでも食べようかな。
普段あんまり行かない酒場『悪魔の囁き亭』に行くと、昼時なのもあって賑わっていた。
「今日は肉でも食うか」
席につき、メニューを見ながら注文を組み立てていると、見知った顔が奥の方のテーブルにいるのに気がついた。
ボサボサの髪に、手入れのゆき届いていない鎧。
靴がボロボロで、あまり綺麗な身なりとは言えない、筋肉質な男。
『ノブシコブシ』のリーダーで、剣士担当の男、ゼナックだ。
保険金詐欺とか、なんか色々で取っ捕まったらしいけど、もう出てこれたんだな。
置いていかれた恨みや、過去に置かれた待遇、主に給与面に関する不満もないではない。
だが今、普通に生きていけてるし、フィグも一緒に冒険してくれている。
無理に関わる必要もあるまい。
メニューに目を戻し、注文を決める。
肉とパン、ついでにスープを頼んだ。
注文の肉が来た頃、向こうがこちらに気がついたらしい。
「おい、クレオム」
わざわざこちらのテーブルまで来るとは。
「お久しぶりです、ゼナックさん」
「お前、どの口で言ってんだ?俺はお前のせいで、昨日まで留置所暮らしだったんだぞ!」
「こっちもゼナックさんのせいでミノタウロスに襲われて死ぬとこでしたんで、おあいこですよ」
「てめえ!ナメてんのか!」
ゼナックが俺の胸ぐらを掴む。さすがにすごい力だ。
足が浮く。迫力はある。荷物持ち時代だったらびびって漏らしていたかもしれない。が、ミノタウロスとか老龍とかで迫力にちょっと慣れてしまった。あんまり怖くない。
「ゼナックさん、私闘は禁止ですよ。ほら、周りも見ていますし……」
周囲のテーブルについた客もたいてい冒険者。視線が痛い。武器に手をかけているものもいる。このまま続ければ、痛いのは視線だけでは済まなそうだ。
「チッ」
ゼナックは舌打ちし俺の胸ぐらを突き放すと、自分の席に戻っていった。
尻もちを突くかと思いきや、体幹がちょっと強くなったのか少しよろけただけで、転倒することはなかった。
終わった終わった。視線が俺たちから離れる。
肉が冷める前に終わってよかった。
鉄板に乗った熱々の肉を頬張る。塩気が利いてて美味い!




