14.戦いのあと
「プリティ・ピューラ。目を覚まして」
声がする。少年のような声が。
「うん……俺は……」
目を開けると、視界一面が白いもふもふしたものに覆われていた。
「うわっ!」
「あ、目が覚めたんだね」
「ああ、お前か……」
先ほど変身した時にいた、兎のようなふわふわ。
使い魔、というやつなのだろうか。
「お前とは失礼な。僕にはプリンプっていう可愛い名前があるのさ」
「プリンプっていうのか、お前」
「うん。改めてよろしくね、ピューラ。ところでさ、お願いがあるんだけど」
「おう、なんだ急に」
「倒れた君の周りに、バリアを張って魔物からの攻撃を防いでるんだけどね、それがもう限界で……」
見回すと、半球状の障壁が自分の周りを覆っている。
そしてその外側には無数の魔物、魔物、魔物。二足歩行のものや四足歩行のもの、トカゲからゴブリンまでなんでもござれだ。
「ウワーッ!!!!!」
「あとは頼んだよ、ピューラ!」
「ふざけんなよ!でもありがとう!ピューラ・ピピラ・ペポッター!!!!!」
桃色の光に包まれ変身。同時にバリアがガラスの割れるような音を立てながら砕け散り、光の粒子となって消える。
「ペポラ・パルマ・プレジオン!!!!」
叫ぶ。喉がちぎれるほど。
数分後。
「はぁ……はぁ……」
一人では持ち帰りきれないほどの魔核に囲まれて、俺は立っていた。
何度魔法を打ったか。腕が反動でちょっと痺れている。
「無事に乗り切れたね。じゃあ帰ろうか」
「帰ろうか、じゃないのよ。お前はなんなんだよ」
「プリンプって呼んでね」
「プリンプ、お前は何者なんだよ」
「見たらわかるでしょう。魔法の国の妖精さ」
「俺に力を授けた?」
「そのとおり。」
「あの骸骨騎士──名前なんだっけ──と関係している?」
「部分的には」
「知っていることについて俺に話す気はある?」
「はい。」
なんか魔神のやつみたいな質問になってしまったが──まあいい。
「今、どういう状況なんだ」
「こことは違う世界から、悪い奴らが転移してきた。僕らはそれを追って、彼らを討つためにここに来たんだ」
「なるほど。なんで俺が選ばれた?」
「心意気とかかなぁ。深い理由なんてないんだよ。誰かを守りたいって心から思えるお人好しでさえあれば、魔法少女なんて誰にでも務まるからね。男にだってもちろん」
「そんなもんか」
「そんなもんさ」
「このフリフリの格好嫌なんだけど、何とかならない?」
「ならないね」
「そんなもんか」
「そんなもんさ」
そんなもんらしい。
「で、どうするんだよ、その悪い奴らとか言うの。アイツは四天王とか言ってたような気がするしあのレベルがあと3人は居るんだろ?」
「大丈夫。僕の仲間もそのうち魔法少女を見つけて合流するはずだから」
本当だろうか。不安だ。
「じゃあ、ぼくは消えるね。またそのうちね」
すう、とプリンプの姿が掻き消える。
常にいろよ。色々聞きたいことが積み重なってるんだから。
「まあいい、帰るか」
肉体の疲労は困憊に達し、精神力も今にも切れそうだ。
早く帰って、寝たい。
その一心でダンジョンの入り口にまでたどり着き、這々の体で町に帰り着いた時には、昼過ぎだった。
「言ってもまだ昼過ぎなんだな──」
宿に戻ろう。宿の硬いベッドが、十年会っていない恋人のように恋しい。




