12.戦わなければ生き残れない。
戦いの火蓋は既に落とされているが、できることなら元の棚に戻して帰りたい。勝ち目が薄すぎるからだ。
リスティマの魔法も効かない。二度三度打ち込んでみたが、こちらの剣も鎧に弾かれる。
おそらく唯一の勝ち筋が魔法少女の姿になることだが、リスティマに正体がバレると間違いなくひどい目に遭う。詰みでは?
人道的な方法としては、フィグにリスティマの気を引いてもらってその隙に変身すればいいと思うが、敵に正体がバレるのも避けたいし──
なんでこう正体バレのリスクが常にあるんだ、この力は。
フィグに目配せすると、コクリと頷く。
とりあえず敵と、リスティマの視界から同時に外れられつつ、変身の呪文を聞かれなければなんとか──
「おくたばりあそばせ、骸骨頭!!!」
リスティマが杖をぶん回し、突撃していく。
「ホーリー・キャノンボール!」
「うおっ、あぶねっ!」
放たれた光の弾丸を、骸骨騎士は避ける。
「クレオムくん、今のうちに……!バーニング・ランス!」
轟音を上げ、燃え盛る炎の矢が、全員の視覚と聴覚を鈍らせる。
「助かる!」
骸骨騎士とリスティマの視界から外れる通路まで退却し、変身。
「ピューラ・ピピラ・ペポッター!」
桃色の光に包まれた俺は、魔法少女の姿になる。
「さあ、行くよ!プリティ・ピューラ!」
「おう!って、あれ?」
なんかいる。白い、羽の生えたウサギのような小動物が。
誰ーーー!!!!??
「どうしたの、プリティ・ピューラ!」
初めて変身した時に聞いた声。まあなんかこう……妖精みたいなもんか。あ、そういや。
「プリティ・ピューラって俺の名前……なの?」
「そうだよ!みんなを助けに行かなきゃ!」
「お、おう。行くか!」
黄金の杖を構え、躍り出る。
よし、フィグもリスティマも大きなダメージは受けていなさそうだ。
「ペポラ・プレイザ!」
杖が閃光を放ち、骸骨騎士の肩を撃ち抜く。
「ぐっ……!」
鎧姿の足が、少しよろめく。
「ペポラ・プレシオン!」
流線型の光弾が数十発、正確に骸骨騎士の胴に着弾する。
「二人とも、下がって!」
「め!女神様!?本当にいたんだ……!」
リスティマは興奮したように、俺に手を伸ばす。
冷静なフィグは頷き、リスティマを引きずって下がる。
「あー!ちょっと、引っ張らないでぇー!」
上りの階段側に行く二人を背に、俺は再び、骸骨騎士と対峙する。
「見事だ!少女よ。この私、ワルイノダー四天王が一人、ガイガス=グラヴィガスに名を聞かせてくれまいか?」
四天王?どうやらけっこう上位の相手らしい。
それがどうした。こっちは端も外聞もない魔法女装少年じゃい。
「プリティ・ピューラって言うらしいぜ。冥土の土産に持ってきな!」
「残念、まだ死ぬつもりは微塵も、なーい!見せてやろう、四天王の、四天王たる所以を!」
ガイガスが身体に力を込めると、ダンジョンの湿った空気が、ビリビリと張り詰める。
「はぁっ!」
鎧をまとったその姿が変貌する。剣は蛇腹のようにしなり、尾に。盾はきらびやかに羽ばたき翼に。
そして手足と爪、首が伸び──骸骨の騎士だったものは、骸の竜の姿となった。
「この姿を見せたのは、この世界では初めてだ。光栄に思うがいい!」
「その程度の虚仮威し!やってやるよ!」
相手が何であろうと関係ない。今ここで戦うのは。
背後で逃げていく二人のため。
フィグとリスティマを、特にフィグの方を守るために、こいつに勝つのだ。




