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前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)  作者: 多賀はるみ


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 目を覚ますといつもとは違う天井でここはどこかしら? と思ったのは一瞬。すぐにエイガ公爵家で一泊したことを思い出す。

 親公認でのお泊り。これで周りに私達の仲を引き裂けないと周知できるはず。


 昨日エイガ公爵家の方々の歓迎っぷりはすごかった。

 エドワルド様が私が疲れているから部屋の準備を急ぐようにお願いしにいくと、なぜか近くの茂みからメイドさん達がわらわら現れて私の肩にケープをかけて『大丈夫ですか? お疲れだったのですね。もうお部屋の準備は出来ていると思うので、すぐにお部屋へ案内いたします。さあ、こちらです』と、とても丁寧に連れて行かれた。

 途中、私を迎えに来たエドワルド様とすれ違ったのだけど、メイドさんたちに「そこを通してください!」と注意されて、エドワルド様は壁にピッタリ張り付いていた。

 部屋に案内されると、これまた自分好みのお部屋でびっくり。カーテンやカーペットの色、家具や小物も全てが素敵でむしろどうやって私の好みを調べたのか不思議だ。

 この家の方々が一生懸命準備してくれたのだと思うと嬉しい。


 だけど『さぁさぁ、ベッドに横になってください。必要なものはありますか? すぐに準備いたします』って、ベッドへ誘導されて焦った。

 確かに少しは疲れたけど、そんなベッドで休むほどでもないのに。そこまでは大丈夫だと、何度も説明してなんとか分かってもらえた。それでも、ご無理はなさらないでくださいって何度も何度も言われた。


 ディナーには、私の好きなものばかりが並べられた。きのこのたくさん入ったサラダに生ハムメロン、仔牛のソテー、コーンスープにきいちごのタルト。とにかく私の好きなものばかりで、いきなり食事を用意させられることになった料理人にはちょっと申し訳なかった。

 エイリク様もシシリー夫人もニコニコして、結婚式が待ち遠しいなぁって言ってくれたし、私達が結婚したら敷地内にある別棟にお二人は移る予定だけど、時々はご飯を一緒にしましょうねなんて話もした。

 時々、エドワルド様の小さい頃のお話しも聞けてとても楽しい時間だったなぁ。


 昨日の事を振り返っていると、メイドさんたちが来てくれて昨日とは違うけど、可愛らしい水色のドレスを着せてくれた。

 食堂へ向かうために部屋を出ると、扉の前にエドワルド様がいらっしゃった。


「おはようございます」


「エドワルド様、おはようございます!」


「その、昨日はよく眠れましたか?」


「はい! 皆さんのおかげでぐっすりでした」


「それは良かった」


 エドワルド様は食堂へ行くのに迎えに来てくれたみたい。一緒に食堂へ向かうと、エイリク様もシシリー夫人も既に席につかれていた。

 朝の挨拶を交わして私達も席につくと、食事が運ばれてきた。

 朝食もとても美味しそう。


 今日はこの後どうするのかと聞かれて、午後の授業に間に合うように学園へ行くと言えば、今日までここでお休みすればいいのではと提案された。


「ありがとうございます。でも、クラスの皆さんも心配しているだろうから元気な姿を見せたいと思います」


 そう言えば納得してくれた。

 私はまだ転移魔法が使えないから、エドワルド様が送ってくれる予定。


 午後の授業に間に合うように支度をして、制服を着る。ちなみに昨日来ていた制服はドロドロで汚れていたし破けていたから、処分してもらった。今日は制服代わりに地味めなワンピースかなんかがないかと聞いたら、何があるか分からないので用意してあります、と新しい制服を出されたときはちょっとだけ引いてしまった。制服まであるとは。いや、ありがたいし私の為に準備してくれてたのは嬉しいんだけどね。


 エドワルド様に学園に送ってもらう前に、邸のエントランスでエイガ公爵家の皆さんにお礼を伝える。

 エイリク様とシシリー夫人から「またすぐに遊びに来てね」と言ってもらえた。






 エドワルド様の転移魔法のおかげで一瞬で学園の門の前に到着。


「送ってくださってありがとうございます」


「いえ、これくらいなんでもありませんから。お気をつけて」


「はい」


 ここで別れるのが名残惜しくてお互いにさよならが言えないでいたら、次の学園のお休みにお茶に行きませんか? って、デートに誘ってもらえた。


「もちろんです! どこかで待ち合わせしますか?」


「いえ、お迎えにあがりますよ」と、不思議そうに言われた。


 そっか、前世の感覚か、デートの待ち合わせで「待った?」「ううん、いま来たとこ」みたいなイメージを想像してしまったけど、普通に考えたら貴族のご令嬢、しかも私は王女なんだから、そりゃあ迎えに来てくれるか。


「分かりました。お待ちしております」


 そうして次に会う約束を取り付け、私が学園の中へ入る。門のすぐ側には、ライザとリックが待っていてくれた。

 私が二人と合流したのを確認して姿が見えなくなるまで、エドワルド様はそこで見送ってくれていた。


 ちなみにライザにはご無事で良かったですと泣かれたし、リックには陛下に便宜を図っていただいたようでありがとうございましたって感謝された。





 教室に行き挨拶をすると、皆さん一斉に振り向いてこちらへ駆け寄ってきた。

 アリサ様とカリナ様には泣きながら抱きしめられた。

 皆さんに「本当にご無事で良かった」、「もう学園へ来ても大丈夫なんですか?」と言われて、だいぶ心配をかけてしまったようだ。


「皆さん、心配をおかけしました。エドワルド様と私の護衛騎士のお陰でこの通り元気です」


「さすがエドワルド様ですね!」


 そんな言葉が聞こえて、そうなのです! エドワルド様はすごいのです。間近で魔物を倒した姿は強くて格好良くて、とにかくすごかったとお伝えすれば、皆さんに若干引かれてしまった。


 今度からこんな事件が起きないようにと、各教室には警備の人がつくようになったし、何かしらの魔法具を持っていないか定期的にチェックされるようになったけれど、いつも通りの学園生活に戻っていった。

 そうそう、今まで女性はただ守られていればいいという風潮があったけれど、あの事件以降、女生徒に護身術の授業が追加されるようになったの。

 うん、いざという時のために護身術は大事よ! 私もそれで無事ですんだし。


 ちなみにケント・ブルー公爵子息はもちろん学園を退学になった。そして犯罪奴隷として危険な鉱山で労働している。

 私が、死罪よりも犯罪奴隷として労働する方が貴族として暮らしていた彼にはつらいと思うから、とお父様に伝えると『ミリーは本当に慈悲深い。人が死ぬのがそんなに嫌なんだね、分かった』と言って、そのように手配したらしい。

 正直死んだほうが楽かもしれないくらい、過酷な鉱山だ。簡単に死なせてやるもんですか、エドワルド様を侮辱して私を殺そうとしたこと、私達の婚約を台無しにしようとした罪は重いのよ!

 私の憎しみがこもっているというのに、周りからはなんて優しい、慈悲深いと、私の評価はバク上がりしている。なぜ?

 そしてブルー公爵家は、多額の慰謝料と賠償金を王家へ払うことになり、エイガ公爵家からはブルー公爵領には一切魔法石は卸さないと宣言されたせいで領民たちから恨まれたらしい。また、爵位を男爵まで降格されたために今まで他の貴族達にいばりちらかしていたのに大人しくしているとのこと。爵位を売るのも時間の問題だと言われているらしい。






 時は過ぎ、今日は私達の卒業式。

 あの事件以降、とても平和に過ごせたし、エドワルド様とは定期的にお茶会をしてデートにも行ったわ。

 エイガ公爵夫妻に会うと毎回のように、早く結婚式が見たいって言われた。

 私も早く結婚したくて、お父様にそれとなく結婚式は後でも良いから学生結婚とかどうでしょうって言ったら、家族みんなにそれはダメだと言われたので諦めた。ですよねー。


 学園生活の最後に皆さんとお話しをしていると、ある一人が今日で卒業だから正直言うとさ、みたいな事を暴露し始めた。あらまぁ、なんて聞いていると「ミリアリア様はなんでエドワルド様が好きなのか今でも不思議です」と誰かに言われた。

 私がエドワルド様を好きなことは分かってくれてはいるものの、やっぱり不思議だと皆さんが同意を示す。


「エドワルド様は公爵家の跡取りで頭も良くて剣も魔法もすごいですけど、正直に言うとお顔はその……それでもミリアリア様はエドワルド様を格好良いとおっしゃっていますよね」


 そんな失礼な事を言うのは、卒業前に格好良いと評判の伯爵家の三男に振られたご令嬢だった。散々、高価なプレゼントを貢いだのに、他に好きな人がいるんだと振られたって泣いていたっけ。


「うふふ。皆さん分かっておりませんね。人は見た目だけではありませんのよ。実際、あなたはそれをよく身に沁みたのではなくて?」


 そのご令嬢はうっと胸を押さえた。

 そして私はここでもあの言葉をいう。


「私は格好良いから好きなのではありません。好きだからエドワルド様のことが格好良くみえるのですよ」


 ドヤァっと言って周りを見る。あれ、皆さんぽかんとしてあまり言葉が刺さっていない?

 まぁ、実際は顔から好きになったんだけどそれは内緒。


「皆さんまだまだお子様ですね。考えても見てください。どんなに外見が良くても、中身がクズな人間でしたら最悪ではないですか? まぁ、中には外見さえ良ければなんでも許せるなんて方もいるかもしれませんが、年を経ると美しさは失われていきます。それでも許せますか? 私はお互いに心の底から大事にしたいと思える方と結婚するのが一番だと思いますよ」


 そこでようやく皆さん、確かに! と相槌をうってくれた。

 うんうん、そうでしょと私も満足していると「そういう事でしたか」と、後ろからエドワルド様の声が聞こえた。


 やばい、今の話し聞かれてたとさぁーと青ざめる皆さん。

 卒業式のパーティーで、私のパートナーとして今日は参加される予定だったから迎えに来てくれたみたい。


「実をいうと私もそこだけ不思議に思っていました。ミリアリア様の気持ちはもう疑ってはいませんが、いつも格好良いと言ってくださるのが不思議で……なるほど、好きだから格好良く見える。そう言われてみると私もミリアリア様を好きだと認めてから、ミリアリア様が一段と可愛く綺麗に光り輝いて見えましたね。これで納得ができました」


 そう言うと、私の手を取り手の甲にキスを落とす。

 きゃっ、とそこかしこでご令嬢たちが頬を赤らめる。


「ミリアリア様にいつまでも格好良く見ていただくために、これからも好きでいてもらう努力をしなければ」


 はー、今日も格好良い。努力してもらわなくても、毎日会うたびに自然体のエドワルド様に惚れ直す一方だからー! と心のなかで叫ぶ。


「では私もエドワルド様にいつまでも可愛いと思ってもらえる為に、努力しなければいけませんね」


 ふふっと私が幸せそうに笑うと、皆さん顔を真っ赤にしている。その様子を見ていた何人かの女生徒から、エドワルド様が素敵に見えた、とボソッと言う子が何人かいたのを私はちゃんと聞きましたよ! 今になって、エドワルド様の良さに気づいても遅いのよ。


 




 学校を卒業して更に二年が経ち、ようやく、ようやく、私達は結婚できた。結婚するまでの二年間の間、実は色々問題もあった。

 なぜかお母様の母国、ユジーノ王国の王子、つまり私の従兄弟が私と結婚したいとわざわざ国にやってきて一悶着あった。

 あまりにしつこく言い寄ってくるのと、大国の圧をかけてくるので、エドワルド様と結婚できないなら、死んでやるーと私が騒いだらお母様が大激怒して「ユジーノ王国の国王はいったいどのような教育をしているのかしら。お兄様とは二度とお会いしません」と、シスコンのユジーノ国王に抗議したら、従兄弟殿はいつの間にかいなくなっていた。

 後は、家良し、才能良し、性格良し、のエドワルド様の良さを今更知ったご令嬢の何人かが第二夫人で良いのでとエドワルド様に言い寄ってきたりしたけど、そこはきっぱりミリアリア様しか見えないのでって断ってくれたりと、まぁ、色々あったけど無事に結婚することができた。


 私が前に「結婚するなら外見ではなく、中身が大事」的な発言をしたことから今まで外見のせいで結婚できなかった方たちも、結婚できるようになったそう。

 エイガ公爵領の騎士たちも結婚できたのは、ミリアリア様のおかげです! って何人にもお礼を言われた。

 






 その後、私は三男二女の子宝に恵まれた。

 エド似の子が生まれますようにと何度も願掛けしたのに、全員私似! がっかりする私に対して、エドは毎回私に似た子どもだと分かると安心して喜んでいた。


「どんな容姿の子でもミリーが頑張って生んでくれた子なら可愛くて愛しいよ。でも、俺に似てしまったらつらい思いをしてしまうかもしれないから」


 だって。私も、エドとの子だから全員可愛いとは思うんだけど、せめて一人くらいエドに似てほしかったなーなんて思ったり思わなかったり。





 あの時、前世の記憶を思い出して本当に良かった。

 前世ではこんなに幸せな人生を歩めなかったから、夢のようだわと思いながら、エドや子、孫たちに見守られながら私はベッドで静かに眠りについた。





END


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