3rd プロローグ 稲妻の足跡
「ううむ、どうもこうも報告がないな……」
腕を組んでいるリヴィアの上司は周りを歩いて唸っている。事務椅子に座って壁を蹴っていた金髪褐色の少女がぼやいていた
「異世界犯罪解明に一歩も前進せずかぁ。身を潜めているのか、それともリヴィアお姉ちゃんとシスター・アレンが何もしてないとか」
「アレンはともかく、リヴィアの方は少しは人間界でパニックを起こしていると思ったのだがな」
「……凄い信頼! 悪い意味で!」
「まぁ、信濃とのダッグがうまくいっていると言えば、聞こえは良いかもな……茶畑の事件も怪盗の事件も一応解決しているみたいだし」
「信濃って子が凄い頑張ってるのかなぁ?」
「お前は一ミリたりとも、二人を信用していないのか……」
「いやいやぁ、別に……。リヴィアお姉ちゃんの失敗を色々見てきたからなぁ……」
少し溜息を出す上司。それから彼女に告げる。
「一応、リヴィアを任命したのには理由があるんだ」
「ええ!? 理由あったんですか!? 単なる左遷かと!」
「どれだけリヴィアを憎んでるんだ……」
「憎んでなんかないですよー! お姉ちゃんだけ恋してずるいなぁなんて思ってるだけです! で何が?」
「あの子は真っすぐなんだ。何事にも真っすぐで囚われない。異世界犯罪をやらかすようなものに悪魔の声を囁かれたとしても、絶対に耳を貸さない。そんな正義感を持っているからこそ……頼んだんだ」
少しだけ時間が経ってから、少し真面目な顔をする金髪褐色の少女。
「いや、あの人だったら、人助けをするなら敵の魔力も借りちゃうんじゃないですか? だって、あの人……前……」
少女には少し思い当たりがあった。
脳内に映るはリヴィアが泣き喚く姿だ。何処かの庭で紅い血塗れになった男性のそばで彼女は叫んでいた。
『どうして!? どうして助けられないの!? 血も液体なんだから言うこと聞いてよ! この人の中に戻ってよ! お願いだから!』
男性は確か、そのまま出血多量で亡くなったと少女は聞いている。
結局リヴィアの水魔法で血までは回復できなかったのだ。
「あの人はきっと……きっと……」
「ん?」
その少女の体に少し稲妻が走る。アイデアが思い浮かんだ時の比喩ではなく、実際に。彼女の感情は昂っていた。
「悪い奴等は過去のトラウマを利用するんです。過信しちゃいけませんよ!」
「と、トーラ?」
名前を呼ばれた少女は雷を全身に纏わせて。
「何か嫌な胸騒ぎがするんです! あたしも行かせてください!」
「……ダメだ。この案件は危険すぎる……行かせられ」
彼女は近くに置いてあったハンマーを装備して。
「これでも危険ですか?」
「そういう考えこそ、危なくて行かせられない」
「っつ……!」
「ってことで普通に責務に戻って……って、あっ、いない!?」
彼女は制止も聞かず、勝手に異次元ホールの中に飛んでいた。電撃のような速さは誰にも止められず。
「……嫌な予感がした……か……正解ではあるんだがな」
上司は机の上にあった手紙を見つめていた。
『異世界の犯罪捜査から早く手を引け。このまま続けていたら、お前達捜査官に関わる中の誰かを殺す』
血の付いた手紙を何度眺めるも犯人の痕跡は浮かぶことはなく。
部屋はただただ静寂と不安に包まれるばかり。




