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失恋癖旅情探偵と異世界から来た100人の探偵助手!  作者: 夜野舞斗


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2.朝ラーメンミステリー(2) 女性捜査官の推理

 俺も店員も訳が分からない。ドッペルゲンガーだなんて、怪異の話であろう。どう考えても現実と幻想を滅茶苦茶にしたとしか思えない。

 俺は近くの電話で警察と救急車を呼んでいる間に、彼女へ恐る恐る質問をさせてもらった。

 どうか変な答えが返ってこないようにと願いながら。


「ど、ドッペルゲンガーって一体どういうこと? あの店員さんが? 何を考えてるんですか?」

「だって、あの店主、おかしなことばかり言ってましたよね?」

「おかしなって?」

「だって、ラーメンのことを(どぶ)みたいって呼んだり、冷めたラーメンを食べさせようとしてきたり、おかしくないですか? ラーメンはあっつあつが主流でしょう」

「え……?」


 彼女の推理を聞いて、頭が変になっていく。頭の中で情報を整理している合間に店員が戻ってきて。

 彼女は胸を張って推理を披露した。


「取り敢えず、警察に来てもらうことにしたから。後は落ち着いて」

「いえ。落ち着いてますよ。なんたって、この事件の犯人はまず店主を殴り倒して、どっかに隠したんです。トイレで殴ったのは見られないようにするためですかね。のれんとかで見えないようにはなってますし」

「い、いや、そんなことは」

「他にもおかしいことを言ってますよね。店主さん。七時に来たと言ってましたが、七時に来てここまでの仕込みができますかね? それこそ、店主がドッペルゲンガーっていう証拠なんですよ。ラーメン屋の店主に成り代わって、何とかやり過ごそうとしていたんでしょう。誰もいなくなったところを見て、逃げようとしていたか。していたけど、運悪く見つかってしまった。そして、私に目を付けられてしまったのが運の尽きというところですね」


 彼女は早口で主張を言い切ったとは思うのだが。

 悩んでいた。


「んん……」

「あら、貴方も納得のしすぎで唸っちゃったみたいね」


 いや、違う。


「いや、何処からその推理を訂正すればいいか悩んでたんだよ」


 俺は彼女に指を突き付けてしまった。あんまりよくないことだけれども。これ以上、美少女と呼ばれる類の人間に変なことを言わせるのも忍びない。


「えっ、何よ!? 何が違うって言うの!?」

「あのねぇ。僕は……」

「何が……! 違うのよ。言ってよ!」


 焦り過ぎだ。店員の声が届いていないみたいだから、俺が否定してやるしかないみたい。


「……分かった。俺の考えだが、さっきから店主と言ってる人は本当に店主なのかってところから話そうか?」

「えっ?」

「確かに大将っぽい感じもあるが、この人アルバイトじゃないのか? だったら普通に考えて七時に来てもおかしくはないだろ?」

「この人が……?」


 彼はうんうんと頷いている。俺の説明は合っているようだ。


「ああ。そりゃあ、年の取ったバイトの人がいる。まぁ、年功序列って言葉があるように年季の入った人の方が大将っていう先入観もあるから、そう思っても仕方がないとは思うけど」

「な、何よ。何でフォローしてくれてるの?」

「フォローしちゃ悪いのか……? いいや。それに後二つの質問にも説明がつくよ。ええと、何でどぶみたいなのを食べさせるのかとかって言ってたか?」

「そうよ」


 どぶ、ね。

 それに関してはラーメン好きの中でも知る人と知らない人がいる事実。わざわざ調べないと出てこないだろう。俺は偶然にも知る機会が何回かあった。

 だからスマートフォンを見せて、渡していく。すると彼女は変なことを。


「これは……念写板?」


 何を訳の分からないことを言っているのか知らないのだけれども。スマートフォンでどぶのように濁った緑色のラーメンを見せていく。


「な、何よ、これ。何が……」

「これもマイナーかもしれないな。どぶ系っていうドロドロ濁った濃厚で臭いのきついラーメンが存在しているんだよ。人を結構選ぶらしいし、メインメニューとしてやるところは少ないかもしれないけど、煮干しを扱っている朝ラーメン屋なら期間限定でやることも多い。店員さん、この店はどぶ系ラーメンをやってるんですよね?」

「あ、ああ……それ目当てに食べにくる人もいるからね」

「そういうこと。さっきの君は、それをラーメンへの悪口だと早とちりしたみたいだけど。わざわざマイナーなラーメンを食べに来たのに、残念だって意味があったんだよ」

「そ、そうなの……!? じゃあ、冷めたラーメンって何?」


 簡単だ。


「冷たいラーメンだよ。そもそも冷やし中華ってものがあるけど……ここでは普通に冷たい汁の中にラーメンを入れるって文化だと思う。醤油の冷たいラーメンは朝ラーメンの中に多い。夏の朝なんて、からしやわさびの入ったさっぱりして、ちょっぴり辛いラーメンが目を覚ますのに最適なんだ。しかもカロリーは普通のラーメンより低いからついつい食べちゃうっていうね。やってますよね、ここ」


 うんうんと首を縦に振る店員。

 そしてその存在からするのに怪しい人が一人この中にいる。


「それを考えると、すこーしこの状況で怪しい人がいると思うんだけども……」


 俺はその人の元へと歩いていく。それを見ながら後ろへ。


「この人はもう来てたんですよね」

「ああ……いつも早くから来てくれるお客さんで、来た時にはラーメンを食べてたからね。先に大将が入れたと思うんだけども」

「ということは簡単、スーツの貴方が大将と喧嘩になって……トイレで石でも使って殴ったってところだろうな」


 今までラーメンを食べている男の手が止まって、こちらを睨みつけてくる。


「何の話だっ!?」


 後ろでハッとするのは今まで推理を語っていた女性捜査官。顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてる。


「も、もしかして……あちゃあ、ちゃんと話を聞いてたら分かったかもなのに。また早とちりしてました……すみません。店員さん……」

「ま、まぁまぁ」


 店員が落ち込む少女を慰めている間にと彼で対決だ。


「最初から変だと思ってたんだ……何でわざわざスーツを脱いで、熱い思いをしながら……熱いラーメンを食べてるんだろうなって」


 彼はスーツを隠すように持つと、こちらを顔で威圧する。


「な、なんだよ。なんなんだ……アンタは。こちとら普通に食べてるだけだ」

「返り血の付いたスーツをそこに脱いで? わざわざ真っ白なワイシャツにラーメンの汁が付くっていう危険を冒しながら食べるのも変だなとは思ったんだよ」

「そんなの人の勝手だろう! この血は! 先にトイレに入ったからだ! 来た時にはそうなってたが、面倒だから言わなかっただけだ。この後、大事な仕事があるからな!」


 滅茶苦茶な反論だが。

 今の俺の推理はまだ彼を逮捕するまでには至れない。

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