11.茶畑の呪術師(11) 今現在の真実を
「取り敢えず、皆さんを集めてきたよー!」
リヴィアやアレンに魔法を使わず、大事な人間を連れてきてもらった。
刈谷さんと蕪木さん、そしてここの捜査主任である。少々年老いた彼は「捜査の邪魔せんでくれんかのぉ」と言うが。
「まぁ、大事な証言を忘れていたので」
「ん?」
刑事は首を傾けて、そこに俺が応じる。
「真犯人か誰が分かったっていう大事な証言がね……!」
その反応に蕪木さんが最初に騒ぎ出した。
「わ、分かったって適当なことを言うなっ! そんな、分かる訳がないだろっ!? まだ捜査だって始まったばかりなんだから!」
捜査を妨害されないように。落ち着いて、真相を口にする。
「まぁ、幸運ってところもありますがね。それだけ犯人の犯行がずさんだったってこともありますかね……?」
「何を言うんだ!?」
騒ぎ、喚くのを止めるのはアレンだ。
「そこまで反応するってことは犯人ですか? 落ち着いて聞いていただければいいのに」
「あっ、いや、そういうことじゃ……」
刈谷さんに関してはそっぽを向いている。あまりこちらの推理を信用していないみたいだが。
問題ない。言葉で全て証明してやるさ。
「まず問題なのは、この事件について。お茶だらけの部屋で富貴さんが毒殺されていた話ですが……何故お茶だらけにしないといけなかったのか……」
リヴィアが考え事を口にする。
「それって、結局、普通に猟奇殺人ってことだったんじゃ?」
突破口を作ってくれた方が話しやすい。ナイスタイミング。
「いや、違う。犯人としては確かに二か月前に起きた当主の福三さん殺害事件と同じ状況を作り出して。犯人をおかしな奴に見せかけようとしたんだろうが……目的は全然違うんだ」
「ち、違うってどういうこと?」
「あのお茶塗れは、密室と本当の殺害方法を誤魔化すためのカモフラージュだったんだ!」
僕の勢いに驚いた刑事が疑問を提示した。
「本当の殺害方法って……お茶の中の何処からも毒は検出されなかったし……そこの蕪木さんとやらの証言から……そこのシスターの勧めじゃなければ、嫌いなトマトは食べなかったと聞いているが……」
まず、そこからの説明だ。
「本当に食べなかったんでしょうか。自律的に食べる方法はなかったんでしょうか?」
そこで再び蕪木さんの反論が最熱した。
「それ以外に毒の入ったトマトを食べる訳がねぇだろ! 拳銃で脅された訳でもナイフで脅された訳でもない……脅しなんてないんだからなっ!」
脅されていない、か。
それは本当なのか。
「本当に脅されてないか……仮面を見て思い付いたことなんですが、もし被害者が仮面か何かに押し付けられて。鼻や口を封じられれば、トマトを食べるしかないですよね? 息をできる場所を確保するために口を封じているトマトをかみつぶさなければならない!」
「んな仮面が何処にあったって言うんだよっ! あの部屋にあったのか!? 今、警察が来ているが何処にも見つかってないんだぞ!?」
警察に見つからない。それもそのはず。なんたって。
「そのためにお茶で満たしたんでしょう。この密室を」
「はっ!?」
「仮面の正体は氷ですっ! 氷の仮面を富貴さんに押し付けて殺害したんだっ! 氷だったら、砕いた後にお茶で溶かしてしまえば……! お湯をそのままぶちまけてしまえば、氷のトリックがバレるが。二か月前の事件と一緒にリンクさせれば、お湯を連想させない! 犯人はそう思って、事件現場をお茶塗れにしたんだよっ! ついでに被害者の乱れた髪にも掛けておけば、抑えこんだ時にぐっと掴んだ痕も気にならなくなるしな!」
そこで密室について語り出したのはアレンだった。
「では、密室のためにお茶を使ったのもそのため? そのカモフラージュのため?」
「ああ。あの密室についても密室自体に被害者を自殺に見せかけようとしたとか、不可能犯罪にしようとしたとかの意味はない。入った時にお茶がこぼれる。こぼれて部屋がお茶だらけになって。バラバラにした氷が溶けていくっていう。そのためだけの仕掛けだったんだ」
そこで疑問を入れたのが推理ショーに興味無さそうにしていた刈谷さんだ。
「しかし、あの密室はどうやって作ったんだ? そうじゃなければ……状況は変だが……自殺にはなるだろう」
自殺説。それで刑事がほほぉと説得されてしまったら、今からの推理がぶっ壊されてしまう。だから、その前に迎え撃つ。
「刈谷さん、密室については貴方が好きなもので分かりやすく説明できると思います」
「分かりやすいものだと……!?」
「ええ。さっき水をやりましたが。植物の何処に水をやりますか?」
「そりゃあ土に……ん?」
「ええ。それと同じことをしたんですよ。時間は掛かりますが。濡れた地面や何かの器にタオルか雑巾を入れて、バケツに繋げる。すると繊維は水をどんどん吸い上げて、バケツの中に水を運んでいくんです。そのバケツが軽いうちに紐か何かでドアの近くまで手繰り寄せて置けばいい!」
「そんなんでいいのか……!? 本当にそんなんで密室ができるのか?」
アレンがまた俺の伝えたいことを解説してくれていた。
「それでいいのでしょう。さっき言った通り、密室に深い意味はなかった。結局、無理矢理開けられちゃいましたし……。あるとしても。一瞬入れないように思えるっていう時間稼ぎなんでしょうね。入れない時間が少しでもあれば、その間に氷が溶けてくれますから……」
刈谷さんが沈黙したうちに俺が言うべきは一つ。
「ここまで説明すれば分かるよな……! 氷を隠し持つことができたのは、アイスを紙袋に入れて持ってきた蕪木さん。貴方しかいないんですよっ!」
彼の怒りが噴火。カッと顔が真っ赤になったかと思うと。
「な、なんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「刈谷さんが隠し持っていたって可能性は低いですね。アレンさんは食事も作る役割でしょうから、冷凍庫の中身を確かめる。その時に氷があれば、バレてしまうんでしょうから! それをバレないように現場に持ってこれるのはあの時、アイスを買ってきた貴方以外にいないんです!」
「だ、だとしてもだ! 冷凍庫の中に隠すって方法でアレンがやった可能性だってあるだろうっ!」
リヴィアは「まだ言う気!?」と蕪木さんに対し、戦う意思を見せるも。俺が腕を前に出して止めておく。
問題ない。理論で打ち勝てる相手だから。
「喧嘩の必要はない。アンタは失言もしてるんだからな。」
「ああ……?」
「思い出せるか? あの時だよ。アレンを犯人に仕立て上げようとしていた時、とんでもないおおボカをやらかしてたんだよっ!」




