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失恋癖旅情探偵と異世界から来た100人の探偵助手!  作者: 夜野舞斗
2人目 神頼りの問題児

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8.茶畑の呪術師(8) お茶の密室談義

「取り敢えず、皆さんで俺達を見張っていてください。密室の謎が解けていない以上、現場で考えないといけませんし」


 ただ俺が探偵という状況を許してもらえるだろうかとも考えている。蕪木さんが異議を放っていた。


「んなの、動かす訳にはいかないだろ! 犯人の仲間かもしれない奴を現場に入れるだなんてなぁ」


 そこにリヴィアが口を出した。


「だから見張っていて! って言ってるじゃないの! それとも何? その筋肉は飾りなの!?」


 かなり強引だ。思わずツッコミを入れたくなるも、彼女に押し切られていく。結構女性からの侮蔑に対しては弱いようで。「分かったよ……ただし、少しでも妙な真似をしたら……」と。

 好機ではある。

 探偵がここまで動くとは、犯人も想像していなかっただろう。再び現場を確認した時に見える証拠があるかもしれないと廊下の前に立って、密室の再検証を始めていく。


「ここをどんどんと開けようとするも何かが詰まっていて開かないようだった……ここから勢いよく開いたということは何かが詰まっていたということ……」


 ドアに接着剤なようなものの形跡はなし。あるとしたら、お茶塗れの室内だ。落ちているのはバケツ。

 すぐにリヴィアが納得したように喋り出した。


「そっか。この密室は簡単よ。お茶がたっぷり入ったバケツがあれば、ドアはそう簡単に開かない!」


 すぐにアレンが冷静な指摘をした。


「しかし、その場合どうやって閉めるんです?」

「えっ?」

「わたしが扉を開けた際に全く開かなかった。ということは茶の入ったバケツはしっかり扉にくっついていたということ。入る前に倒れてしまうのでは」

「そ、そこは簡単よ。扉の下にちょいと隙間があるじゃない?」

「ありますね」

「バケツに糸か何か……そうね。そこに落ちてる濡れ雑巾の切れ端をくっつけて引っ張ればいいのよ」

「でも……それだと重すぎて、引っ張れるかしら……貴方だったら、ぐって倒しちゃいそう……」

「うう……それを言うなぁ!」


 ただ確かに、だ。リヴィアの案は悪い訳ではないが、粗が残る。何かそのバケツにお茶を入れる手立てはあるか。真上を見ても、何かが落ちる仕掛け等はなさそうだ。


「に、してもどうしてもよく思い付きましたね」

「バカにしてんの!? ま、まぁ、さっきお風呂に入った時、洗面器を沈めてあげる時って凄い重くって。それで思い出したの」

「結構遊んでたんですね……それにそれはお風呂場の水面の圧力ですから……正確に水の重さとは関係ないような」

「仕事中に酒飲んでるアンタに言われたくないわよ! 細かい指摘をするんじゃない!」


 リヴィアのお風呂場姿を想像し、鼻頭が熱くなる。このままだとだらっと鼻血を垂らす不審な探偵の登場だ。

 ぐっと鼻をすすって、耐えてみせる。

 そんなことをしている合間に刈谷さんがポツリと。


「そんなことをしてるんなら、先に庭の水やりをさせてくれないか?」


 なるほど、と思った。

 密室の作り方はだいたい分かった。


「見張ってる間は我慢してくれ……」

「何でお前さんの指示を受けにゃいかんのだ」

「いや、指示じゃなくて……常識だろ! それに今、庭なんかに出ると庭に出て証拠隠滅をしたいとかって言われるに決まってる」

「そうか……」


 に、してもだ。密室の意味がよく分からない。


「なぁ、リヴィア、アレン、密室の意味って何だと思うか? この状況でどうして密室にする必要があると思うか? 正確に言うと、密室って何のために作ると思う?」


 リヴィアは告げる。


「現場に入れなくするためでしょ。氷の密室とか色々あったわよ? 現場を封じて捜査をさせないとか」


 完全にファンタジー世界の犯行で戸惑いしかない。

 しかし、アレンの考えは全く違っていた。


「不可能犯罪を演出するか、それか、誰かを犯人にするためですよね? リヴィア、適当を言うんじゃありません」

「適当じゃないし! 今回の場合、発見を遅らせるためにやったんじゃないの?」


 そのリヴィアの発言が推理に対しては格好の的だった。全力で異議を唱えさせてもらった。


「そもそも、蕪木さんが勢いよく扉を開けたら、バケツの中の水は倒れていたんじゃないのか?」

「えっ? 何だって? 僕が?」

「ええ。バケツに溜まる水の力が幾ら強かったとしても……開けられなかった訳じゃない……本当に密室の意味があったのか、すら少し怪しくなってくる……」


 今は密室にした方法よりも、どうして密室にしたのかが気になって仕様がない。

 アレンは別の疑問も浮かばせていた。


「確かに。わたしを犯人にさせたいみたいな雰囲気ですし。それならば、どうやったって、わたししか作れない密室を考えた方が良かったはずなんですよね。この部屋には鍵があるから、わたししか入れないみたいな」


 考えてみるも、分からないことばかり。

 何故だ……何故だと頭の中が謎で大きくなり、パンパンになる。痛みすら覚え始める始末だ。

 最悪、パンクする。

 爆発を恐れ、思考が止まった時、振り向かせてくれたのはリヴィアだった。


「そ、それよりもお茶ばっかり、の密室について考えましょうよ。どうして、犯人はお茶で密室を作ったのよ!?」

「あ、そっか……ありがとう」

「何言ってんの?」

「いや、何でもない。そうだよな。水じゃなく、お茶にした理由だ。二か月前の事件を繰り返してる犯人のメッセージ……にしては手が掛かり過ぎている……何かそうしなくちゃいけない理由があったような」


 前の事件の犯人と一緒。アリバイのある自分は今回の事件にも関係ないと主張するためかとも推理はできるが。ただ警察を誤魔化したいなんて理由だけではないと思う。それだったら、遺体にお茶を掛ければいいだけ。

 そもそも、だ。どうやってここまでのお茶を作ったのか。

 冷蔵庫の中には特に目立ったものもなかった。つまり、風呂の水を汲んで、部屋の何処かに隠していたのだろうか。それも何故か。

 お茶を触ってみるも、既にぬるい。そう言えば、部屋の中が暑いことを思い出した。


「そう言えば……アレン。暖房がもしかしてついてるのか?」


 アレンは部屋の上部についているエアコンを見て、ついでに机の上にあったリモコンも確かめて。


「え……ええ……そういえば、何ででしょう……富貴さんはそこまで寒がりって訳でもないのに」


 部屋の暑さにお茶。そしてリヴィアの放つ一言。


「また汗掻いてきちゃった……事件が終わった後でお風呂入ろっかな? 今度こそ入る……? ん? 信濃? どうしたの?」


 犯人が部屋を緑茶塗れにした理由は何となくだが、見えてきた。だからニヤリとしてしまったのだ。


「……犯人はあれを使ったんだ……この惨状もあれを隠したかったんだろうけど……何のために使ったんだ?」


 ただ疑問はあり。

 犯人の正体も毒を盛った方法も未だ分かってはいない。 

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