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失恋癖旅情探偵と異世界から来た100人の探偵助手!  作者: 夜野舞斗
2人目 神頼りの問題児

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5.茶畑の呪術師(5) 下に心があったとしても

「何を考えてるんだ!? 人んちで真っ裸になるとか正気か!?」


 俺が叫ぶも彼女はよくわかっていない様子で首を傾げるばかり。


「真っ裸になることが何か問題があるのです?」

「問題しかねぇと思うけど!?」

「そうですか……捜査官の協力者にわたしの情報を提供するのは間違ってましたか?」

「えっ?」

「どうしました?」


 どうやら勘違いをしていたらしいが。いや、違う。彼女はわざと勘違いをさせたように思えるのは気のせいだろうか。あたふたしている俺を見て、嘲笑おうとしている。顔からは和やかな笑みしか見えないのだけれども。


「真っ裸ってそういう意味かよ」

「他に意味がありますか?」

「ありまくるだろ……そこを分かんないふりをするのは無理があると思うぞ……?」

「まぁまぁ……折角ですからわたしが何故捜査官を志してるか聞いてくださいよ」


 今のところ、こちらで酒池肉林の限りを尽くすため捜査官になったことしか認識できていない。どう喋るかは興味があった。


「どうしてなんだ?」

「わたしはちゃんと聖職者として教会で働いていたのですよ。そこはとっても穏やかな教会で、特にわたしは自給自足の生活をするための畑を耕すなんて仕事を主にしておりました」


 想像はできた。山の上の世俗とは離れた教会で。彼女達がせっせと畑仕事をする姿が。


「ただそこで農作物を盗むものが現れたのです。一夜一夜、わたし達が丹精込めて作ったものが盗まれ。貧しいわたし達としてもどうしようもないものでして……」


 言葉の重みがふいに伝わってくる。彼女達の苦しさが心にまで伝わっているようで。体まで重くなってくる。


「わたしとしても使えるのは回復魔法だけなのですから、主に盗人の探知や攻撃はできない状況で。更に日に日に畑自体がやせ細っていく状態になっていきまして」

「酷いな。嫌がらせだったのか……?」

「まぁ、それが悪いか、良いかの善悪の区別はさておいて。こうしてわたし達が弱いままだと搾取され続ける。盗まれたら取り返すこともできずに終わっていく。そんな無情な世の中が嫌になりまして。神様だけには任せておけないと思いまして」

「つまるところ、弱い人がやられるっていうのが嫌で」

「ええ。そんなところです。神様もお忙しいでしょうから。代わりにわたしが自分のできることを最大限に生かそうと思ったのが、捜査官として働くことだったのです」


 意外と立派な心掛けだと思う。

 できることは最大限やるというところがまた、こちらの心に衝撃を与えてくれた。

 自分ができること。探偵として推理を進めていくこと。少しでも犯人を突き止めることが大切だ、と。


「ほぉ」

「君のことも教えてよ。何で探偵として頑張るの?」


 俺の取り柄が探偵だから、だけでは答えにならないだろう。


「師匠との約束かな。俺の命を救ってくれた師匠に恩返しがしたいというか」

「受け継ぐことが恩返しっていうのはいいかもね」


 その時、心にグサリとある言葉が刺さった。

 「どうせ目立ちたいだけなんでしょ」だとか。「モテたいとか、下心で動いているんでしょ? サイテー」とか。「報酬がなければ、やらないなんて人の心とかないんじゃないの?」とか。


「でも、その中に目立ちたいとか、モテたいとか、そういうものが一切ないって言えば嘘になるかな……」


 言い訳みたいな言葉に落ち着いたセリフで返してくれたのがアレンだった。


「別に他の目的があったっていいと思いますよ。どんな理由があろうと、人を助けたいとか、犯罪を許さないとか、そういう気持ちは素敵なものです」

「ああ、それは間違いない」

「なら、貴方は頼もしい探偵さんですよ。まっ、よく迷子になるリヴィアちゃんと一緒に来てくれたところを見た時から、貴方のことは信用していましたが」


 ここまで褒められると、何だかくすぐったい。褒められ慣れていない俺は頭を掻きつつ、「いやぁ、まぁ」と口や喉に溜まった声を出していく。


「シスター・アレンってまるで本物のシスターみたいだな」

「失礼ですね。本物ですよ」


 そう。そのシスターの懺悔にきっと、恋をしてしまう人もいるのではないか。今ならそんな気持ちが痛い程、よく分かった。

 俺が照れて、体を温かくなっている合間に手元にあったアイスは溶けて。俺は一気に甘い汁を飲み込んでいた。

 体が冷えて凍えて。震えた俺をよそにシスター・アレンは少し呟いている。


「にしても、結構みんな時間が掛かりますね。蕪木さんもあれから戻ってきていないし……」

「どうかしたか?」

「あっ、蕪木さん……まだ富貴さんが来ないので心配で。おやつのアイスも客人も放っておくなんて」

「アイツのことだ。きっとゲームかなんかにどっぷりハマって、出てこないだけだろ」

「そうだといいんですが……」


 ならばと待って一時間。リヴィアも風呂ですっかり温まったようで。体から湯気を出しながら、アイスを食べている。目を勢いよく閉じたところからするにアイスクリーム頭痛を起こしているようで。


「キーンとする……!」

「落ち着いて食べないから……ほら、回復魔法」

「そ、そんなんで使わなくたって……でも、ありがと」

「じゃあ、回復料五万円ね」

「えっ!?」

「冗談よ。おまけで四万九千円にしておくわ」

「頭痛だけでっ!?」


 そんなやりとりにハハッと。何だかこの場には優雅なお茶の時間が流れているようで。これもまた静岡マジックなのか。お茶の間の時間というのをしっかり味わった俺達。

 時折アレンが立ち上がって、廊下の方へ。どうやら富貴さんの部屋に何度か行っているみたいで。

 何往復かした後に彼女からの相談があった。


「さっきからノックをしてるんだけど、全然反応がないのですよね……それに何か開かない……?」


 そこにリヴィアが告げる。


「何か怖いわね。中で寝てるだけならいいんだけど。熱中症とかになってないかしら……」


 少々暑くなっているようで、先程からリヴィアは汗を掻いている。俺も、だ。外からの風もそよそよ位で勢いはない。


「そこまで言うなら、ちょっくら見てくるか……」


 蕪木さんが最初に立って、富貴さんの部屋の方へ。


「おーい……富貴……! おい! 富貴! 客人待たせて何やってるんだ……!?」


 何回もノックをするが返答なし。「中で寝てるのかしら」とぼやくリヴィアに対し、俺の心が震えていた。

 取返しのつかないことが起きているのではないか、という恐怖。それが今、俺の心臓を上へ上へ、前へ前へと押し出している。

 俺はすぐに蕪木さんの横へ。ドアを押して見るも、あまり手ごたえがない。ドア自体に鍵は掛かっていないが。どうにもこうにも前に進まない。

 入れないのか。


「……蕪木さん。後でこのドア直しましょう」

「えっ?」

「今はもしかしたら一刻も争う事態なのかもしれません……!」


 間違いだったら怒られてもいいから、と。

 俺は扉に体ごとぶつかって。俺のしたいことに気が付いた蕪木さんと一緒に二、三回繰り返したところで部屋の中に入ることはできたのだが。

 辺り一帯に立ち込める落ち着いた香り。そして足元は異常なまでに濡れていて。

 事務椅子のところには富貴さんが。


「富貴さん、何をしていらっしゃるんですか……?」


 声を掛けようとしたのだが。その肩に手を置いた瞬間、彼は椅子から転げ落ちていく。


「富貴さん……? 何を……!?」


 まるで何か恐ろしいものを見たかのように。目はかっぴらいた状態で。

 この異様な光景。先程までの日常とは全く違う。最低最悪の状況が始まってしまったのだ。


「富貴さん!? 富貴さん!? どうしましたか!? 何があったんですか!?」

 


 

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