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失恋癖旅情探偵と異世界から来た100人の探偵助手!  作者: 夜野舞斗
2人目 神頼りの問題児

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4.茶畑の呪術師(4) お屋敷の中で!

 リヴィアがこっちこっちと手招きするものだから、家の端にある風呂場まで行くことになってしまった。家主に挨拶するよりも先にこちらへ来てしまって良いものだろうか。と言っても家主の番さんの居場所が分からない。

 挨拶を後回しにして、一緒についていくこととなった。


「で、どうなの? やっぱ見たいの?」


 イタズラっぽく聞いてくる彼女。


「俺を何だと思ってんだよ。ってか、俺に対して今どんな感情な訳? 一応、初めて会ったばっかしではあるんだよな?」

「運命の人って言うのはやっぱり、そこでピンと来るものなの! 別に誰だっていい訳じゃないんだからね!」


 嬉しいけれども。本当に安心していいものか。

 というか、そもそもだ。


「二人も入れるものなのか……?」

「やっぱ入る気満々なんだね」

「そ、そう言う意味じゃなくて……!」


 ただ疑問に思っていただけなのだが。その答えはすぐに見えてきた。風呂場ではない。まるで旅館のような大きな岩に囲まれた浴場があったのだ。当然、一人や二人どころではない。何人もの人がゆっくり浸かれるものとなっている。

 しかも隣にあるどうにも蛇口には見えない岩の隙間からチロチロお湯っぽいものが流れ出ているから高級感が溢れ出ている。

 そこを見てようやく納得するリヴィア。


「さっきのアレンさんが言ってたのって、普通に良かったって意味だったのね……」

「だなぁ……」

「さてさて、一緒に入る?」


 たぶん、このままだと女性慣れしていない俺の鼻から血が出る。そして風呂には俺の血かけ流しだ。


「え、遠慮しておくよ」


 流石にまだ早いと俺は一応、風呂場から立ち去っておく。それよりかはやはり、当主に挨拶が必要だろう。

 戻る廊下の中で早速シスター・アレンと再会した。


「あら、一緒にお風呂に入らなかったんです?」

「俺やリヴィアのことを何だと思ってんだよ……恋人じゃないんだし……いや、恋人だとしても会ったばっかしだし!」

「そっか……じゃあ、まだ寝取れる隙はあるってことだね」

「そうそう……ん?」


 何か今とんでもないことを言わなかっただろうか。俺にとって無縁だったような言葉が出てきたような。


「えっ?」

「それよりかはアイス溶けちゃってたみたいで、再度冷凍庫に入れないといけないってことで。まっ、リヴィアちゃんがお風呂に入っている間に固まってくれるといいけれども」


 アイスの方より気になることはあった。ただ冗談だろうと考えて。風呂に入っている合間に当主に挨拶をしておきたいと伝えておく。


「ああ……富貴(ふうき)さんね。だいたいは自室でネットを見ながらやってることが多いですし、今もたぶん……」


 彼女の後に歩いて、廊下の途中にある彼の部屋へと案内された。和風なお屋敷かとは思っていたが、障子の部屋がある訳ではなかった。普通に洋風っぽい内開きの扉がいくつもあり、その中の一つをノックする彼女。


「いますか?」


 そのノックと同時に怒鳴り声が響いた。


「お前に渡す金などねぇんだよっ! ぜってぇ帰ってくんなよっ!」


 耳をつんざくような声に唖然とする俺達。シスター・アレンは耳を澄ませて、「電話中みたいね」と。


「そんな誰と……?」

「話からして弟さんかな。遺産関係でだいぶ富貴さんとトラブっていたみたいですからね……」

「なるほど……後にしておくか」


 怒ってる途中で、知らない人の挨拶はさぞ疎ましいことだろう。俺はまたの機会にしようとしていたが。


「大丈夫ですよ。わたしがいれば、すぐ開けますから。アレンです。入りますよ」

「お、おお……!」


 開けた先にいたのは、事務イスをくるりと回してこちらを向いた、にやけ顔の男だった。下心が見え見えな感じでアレンに応対している。


「ああ、アレンか。どうしたんだ?」

「ちょっとお話したいということがあり、街の方から探偵の方がお見えになりました」

「探偵だ……と……?」


 一瞬、そのにやけ顔が歪んだ。


「ん、何か不都合なことでもおありですか?」

「あっ、いやいや……ちょうど話しておくべきだと思ってだな。親父の事件に対して……警察の方がいいかと思ったが、探偵の方が都合がよいだろうな……」

「ん?」


 何やら都合が良いのかと話をしようとしたところ、何かの足音が聞こえてきた。最初に現れたのは、片手にバケツを持った刈谷さんだ。


「……事件の話はやめろと言っただろ……」


 そこに疑問を入れたのが当主の富貴さんだ。


「何で? 何か言われちゃ困ることでもあったか?」

「外のものに福三様の痴態を話す必要が無いと思っただけだ」

「ああ……お茶ばかりのって話……? もう外のニュースに流れてるけど……?」

「それでも……だ!」


 その後ろには蕪木さんもいて。


「……まぁ、とにかくアイス食いに来いよ。折角、高いアイス買ってきたんだからさ」

「後で行くから……待ってろって」

「後回しにしてるといいことねぇってよ」

「何の話だ?」

「占いの話だ。今朝の占いで言ってたんだよ」


 富貴さんは少し溜息をつくと、その考えを馬鹿にするかのように。


「みんな占い占い言うもんだな。お前みたいに占いを信じる奴も、神様を信じてるシスターのメイドに……そうそう、スピリチュアルと言えばアイツも」

「とにかく、だ。ちゃんとしてねぇと酷い目に遭うぞ。お前、今日の占いは最悪なんだからな」

「へぇへぇ」


 軽く反応してから、こちらの方へ目配せする。そして事務イスごと近付いて、俺の耳元へ。


「まぁ、いいや。探偵さんとやら、後で色々話してやるから。待ってろっと」


 シスター・アレンは「歓迎されて良かったですね」と声を出しているのだが。これに関しては歓迎されていると喜んでいいものか。

 考えている間に当主の富貴さんは「まぁ、一旦客人と供に冷蔵庫に入ってるものを適当につまんでくれ」と。他の二人と話したいことがあるようで。

 結局、今は有力な情報は得られず。建物の風呂場とは反対方向の端にある居間でシスター・アレンと共に彼を待つこととなる。


「もう少しなんですよね。最近、探偵なんかに相談してみたいなんて言い出したんですから」

「それがさっき言ってた手掛かり……か。事件に関係していることなのか、それとも……」

「もしかして当主を殺したのは自分ですとでも言ってくるのかもしれませんね」

「それ、告白されて俺達はどうしたらいいんだ? 通報?」


 結局、彼の話したい事件の手掛かりが気になって気になって。

 テーブルに置いてあったアイスが固まっていたから手に取ったものの、口に運んだアイスが冷たくて甘いこと位しか分からなかった。


「まぁ、待っている間にわたしを丸裸にしてみましょうかね」


 シスター・アレンの言葉で俺は頭の中のものと口の中のものが全て外へ吹き飛んでいく。そのせいで先程のアイスが甘かったか辛かったかすらも怪しくなってきた。

 

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